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2023 年インパクト投資国際会議「GSG Globa l Impact Summit」「GIIN Impact Forum」参加報告

2023年10月2日・3日の2日間、スペイン・マラガで「GSG Global Impact Summit」が開催されました。続く10月4日と5日にはデンマーク・コペンハーゲンで「GIIN Impact Forum」が行われています。その両方に参加したSIIFインパクト・オフィサー田村直子から、イベントの様子をご報告いたします。

日本やアジアにおけるインパクト投資の活性化・関心の高まりを実感

 今年の「GSG Global Impact Summit(以下、GSG)」と「GIIN Impact Forum(以下、GIIN)」は、連続する時期に、いずれもヨーロッパで開催されました。私自身はどちらも初参加でしたので、例年との比較はできませんが、それぞれイベントのカラーが異なる一方で、インパクト投資に対する注目度の高まりを実感させてくれた点は共通していました。

 GSGの参加者は、最終的に1,000人超に及んだそうです。日本からはGSG国内諮問委員会のメンバーを中心に参加し、委員長の渋澤健氏(シブサワ・アンド・カンパニー株式会社代表取締役)が「アジア・太平洋地域セッション」で日本のインパクト投資の状況を報告なさいました。

 GSGは各国のNAB(National Advisory Board)のメンバーを中心とした集まりのため、すでにある程度のコミュニティが存在し、アットホームなイベントのように感じました。そのため、私にとっては初めてのグローバル・カンファレンスだったため、緊張して臨んだのですが、とても温かく迎えていただけました。日本のインパクト投資の状況について興味関心のある方も多く、「日本のインパクト投資はどうなっているの?」ではなく、「日本の最近の動向はどうなっているの?」と、日本の状況に関する一定の基礎知識がある状態で問いかけられることが多く、日本への注目度の高さを感じました。
 
 また、「アジア・太平洋地域セッション」が行われたことに加え、GSGのスタッフにもアジア出身の方がいらっしゃるなど、アジアにおけるインパクト投資の活発化を実感すると同時に、アジア内での連携に期待する声も多く聞かれました。今後は私たちも、国内のみにとどまらず、アジア全体として中長期的にどのようなインパクトを生み出せるか、という視点を意識したほうがいいかもしれません。

 インパクト投資そのものの活発化に加え、「投資家は投資以外にどうやってインパクト創出に貢献するべきか」という「インベスター・コントリビューション」といったトピックが度々あげられていたことも印象的でした。SIIFにおいても、インパクト投資だけでなく、インパクト・エコノミーの推進に向けた取り組みとして、インパクト・エコノミー・ラボやSCC事業を例に挙げると、各国の参加者がとても興味・共感を抱いてくださいました。そのため、世界においても「投資だけでは十分ではない」という問題意識が拡がっているように感じ、私が担当しているSystems Change Collective事業の可能性・重要性を再認識する機会にもなりました。

話題の中心は気候変動に。日本の社会課題を発信する必要性も感じる

GSGに継いで同じ週にコペンハーゲンで開催されたGIINに参加した方も多く、その分、よりコミュニケーションが活発になったように思います。同じヨーロッパ圏内とはいえ、イベリア半島南端のマラガと北欧のコペンハーゲンとでは気温差が10度もあり「大変な旅だったね」と語り合ったこともいい思い出になりました。

 GIINはGSGよりさらに大規模で、会場も大きく、参加者は1600〜1700人に達したと聞いています。日本からも約20社が参加し、私と同様、初参加の方も多かったそうです。
 GIINでは、より具体的な市場や投資、ビジネスの内容などに関心が集まっている印象でした。複数の会場内で行われていた多様なセッションにおいては、気候変動や生物多様性、ブルーエコノミーに関するテーマが大変多く、これは昨年に比べて顕著に変化した部分だと聞いています。たまたまかもしれませんが、ネットワーキング会場で実際に声を掛けてくださった海外のVCやスタートアップの方もクリーンテック等の関係者がほとんどを占めていました。
 
 今回、GSG及びGIINの2つのイベントに参加する中で、たびたび「SIIFはなぜ、日本国内だけを投資対象とするのか」と聞かれました。その質問の背景は2つあると思います。
 
 1つは「日本でインパクト投資の考え方や手法を確立し、アジアや海外と共有し、拡げていく」というビジョンを十分に伝えられていないこと。この点は、今後のSIIFの取組に関する発信時等において、より力を入れられたらと社内でも考えております。

 もう1つは「そもそも日本を対象としたインパクト投資が必要なのか」と、課題先進国である日本の実情があまり知られていないこと。各国からの参加者と話していて意外だったのは、日本人が思っているほどには「日本は課題先進国だ」という認識が共有されていないという点です。日本は先進国ではあるため、途上国と比較すれば豊かな国と思われていることは当然ではありますが、日本における子どもの貧困問題や高齢化による一次産業の衰退・過疎化の問題等々について説明すると衝撃を受けられたことが印象に残っています。もちろん、世界にはもっと深刻な社会課題がたくさんあるからでしょうが、国際社会における日本のプレゼンスが下がっており、興味関心を抱かれづらい状況にあることも、原因の1つかもしれません。
 
 2つのイベントを通じて、日本・アジア、そして世界におけるインパクト投資の高まりを実感したのと同時に、日本からの発信強化の必要性も感じました。「課題先進国」だからこそ、自国の課題を発信し、同じような課題を抱える他の国や地域、インパクトに関わる多様な組織と、インパクトの推進にかかる知見や技術を共有する、という貢献が出来るのではないでしょうか。それによって、双方に有益な形で、それぞれの課題解決の方策を研究したり、海外から日本への投資を促す等、世界におけるインパクトエコノミーの推進をより活発化し得る可能性及び必要性を、今回のイベントを通じて改めて強く感じました。

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