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映画感想:実写版アラジン&実写版ライオンキング(ネタバレ有り)

 両作ともレンタルで鑑賞。なぜ二本立てかというと、そこまで書く内容がないからである。

 まずアラジン、可もなく不可もなくという感じで面白かったですね。

 ウィル・スミスはやっぱりどう転がってもいい人を演じないとハマらないよなあと再認識したり。青くても、ちゃんとウィル・スミスでしたね。
 原作、もといアニメ版はそこまで思い入れもなかったのですが、個人的には名シーン『フレンド・ライク・ミー』のミュージカル場面を実写化したら、それはどうしても狂気映像になるのではないか、という懸念があったのですが、今作では小気味いいリズムとギリギリの塩梅を狙った造りによって、きちんとアニメ版の実写化を目指していた印象でした。

 まだ未見ですが、この境界線を越えて失敗したのが実写版キャッツなのかしら? 

 引っ掛かった場面は、アニメ版と違ってジャスミンの性格が違ってたり、新キャラがいたりしたこと。まあでもこれはそこまで気にはならなかった。

 でも、どうしても惜しいと思ったのは、ジャファー役のマーワン・ケンザリ、あんまりハマってなくないか?
 アラブ系の俳優でなくてはならなかったんだろうけど、どうしてもアニメ版の卑しさ全開のジャファーに見えないのだ。顔が普通過ぎる。

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この小汚くも、どこか官能的なニヒヒ顔が、

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 これでは、ちょっと真面目過ぎてパンチが効いていない。もうちょっと顔芸のできる人を呼んだ方が良かったのでは?

 マーワン・ケンザリは嫌いじゃないけど(トミー・ウィルコラのセブン・シスターズじゃ良い奴だった)、どうしてもジャファーには見えなかったなあ。


 続いて、超実写版ライオンキング。こちらは原作のアニメ版に対して僕は凄く思い入れが強く、おそらく一番繰り返し見たディズニーアニメだと思う。
 子供の頃にビデオに録画したものを擦り切れるくらい見ていたので、今でもセリフやリズム感などの一挙一動が思い出せるほどである。特に、吹替のティモンとプンバァには、これこそが僕にとってのライオンキングだ、と思うくらいには印象が強い。

 ちなみに、今回は字幕版で観た。僕にとってのティモンとプンバァは、三ツ矢雄二さんと小林アトムさんの掛け合いあってこそなので、有名人吹替と分かった時点で吹替版は観る気は失せたからである。

 それで感想はというと、これはアリだけど外連味がないのではないか?というものだった。

 アニメ版ライオンキングの何が凄いかって、ディズニーアニメの最大の外連とも言うべき独特なケモノキャラの表情の豊かさである。
 人間の表情豊かさ、それ以上の豊かさを無表情な記号に過ぎない動物の顔面に落とし込むことが、ディズニーアニメの持ち味なのではないだろうか?
 悪役スカ―など、その独特の色っぽくもある表情の豊かさ故に、数多くの人間の性癖を捻じ曲げたほどである。(いわゆるケモナー)

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 ちなみに、前述のジャファーは、スカ―と同じアニメーターによってデザインされている。
 アンドレアス・デジャという人で、ディズニーではレジェンド扱いのアニメーターである。美女と野獣のガストンもこの人のデザインらしい。妙に艶のある色っぽい悪役男キャラをデザインさせたら、右に出るものはいないのではないのだろうか。

 話は戻るが、この超実写版では、あまりに実写化に徹するあまりに、持ち味ともいうべき動物の表情の豊かさが失われてしまっている気がするのだ。
 同じジョン・ファブロー監督作のジャングル・ブックが公開されたのは記憶に新しいが、あちらはあくまでも主人公が人間のモーグリだった為、まだ体裁を保てていた。

 が、しかし、ライオンキングとなれば話は別だ。ディズニーアニメーターの真骨頂ともいうべき人間的表情の動物たちが活躍するアニメ版では、数ある名場面がある。
 幼きシンバの悪ガキ少年感、ムファサの圧倒的父性感や、ティモンとプンバァの豊かなコミカルさ、スカ―の色っぽい悪役感やハイエナトリオの下劣な顔芸、シンバとナラが再会した時の立派な男と女に成長したと確認しあうような異性を意識した独特の表情。

 それらが全て、実写版に落とし込めていない!

 やはりどうしても、実写版には越えられない壁があったのだろう。いかに豪華な顔ぶれで声を当てようと、目線や口元で表情を出そうと、アニメ版には敵わなかったのだ。

 どれだけ名演をしようが、どうにもならないものはある。

 今作を見て思ったのは、アンディ・サーキスを呼べばまだ可能性があったのではないか?ということである。

 PJ版キングコングやリメイク版猿の惑星三部作で知られ、モーションキャプチャーの第一人者として活躍しているアンディ・サーキスだが、実はネットフリックスでジョン・ファブローとは別にジャングルブックを題材にした『モーグリ:ジャングルの伝説』という映画を監督しているのである。

 エンタメに振り切ったジョン・ファブロー版とは違い、こちらは少々リアルでダーティな造りになっている。
 お話はそこまで印象に残らず、ダークなジャングル・ブックというくらいのものなのだが、そこはモーションキャプチャーのプロが製作しただけあって、今作の動物たちは、とにかく表情が豊か!

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 見よ!この表情の人間っぽさ!
 ライオンキングも、このように多少は元の動物の骨格を無視してでも表情の豊かさ、人間っぽさを出せば良かったのではないだろうか?
 ちなみにこの『モーグリ:ジャングルの伝説』でも、吹替声優陣は中々豪華である。アンディ・サーキスはもちろん、クリスチャン・ベールやケイト・ブランシェット、ベネディクト・カンバーバッチなどがメインキャストを担当しているのだ。
 ちなみに、クマがアンディ・サーキスで、クロヒョウがクリスチャン・ベール、虎がベネディクト・カンバーバッチなのだが、それぞれちゃんと顔面がそれっぽいのが、さすがというべきである。

 もし、アンディ・サーキス監修の下のモーションキャプチャーで製作していたならば、今作は外連に溢れた一作になったのではないだろうか?
 猿三部作で賞レースから見向きもされなかったアンディ・サーキス率いるモーションキャプチャー陣に、ひとつ花を持たせてやれたのかもしれない。潤沢な予算もあれば、もしかしたら映画史に残るほどのモーションキャプチャー演技の名作になりえた可能性もあっただろう。

 結論としては、アンディ・サーキス!ヴェノム2を頼むぞ!よろしくお願いします!

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