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DRPG部活動報告「ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団」

「魔女シリーズ」の概略

日本一ソフトウェアが言われた「ハクスラあれ」。
すると魔女と百騎兵があった。

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原田たけひとのポップなイラストに、不気味なプレイアブルキャラと敵キャラクターを乗せた魔女と百騎兵は、しかして現代版diabloにはなれなかった。
そこにあったのは攻撃力も体力も間違えている敵キャラクターの群れと、あまりに長すぎる状態異常と、浅いビルドシステムだった。
diabloクローンとすら到底言えるはずもない、そんなゲームは日本一ソフトウェアの営業利益をそれとなく上方させる結果となった。

参考:日本一ソフト、『魔女と百騎兵』好調で14年3月期の営業利益を2割上方修正 10月以降の業績は慎重な見通し

なぜ魔女と百騎兵の業績は上振れしたのだろうか?
その理由は明白で、シナリオが優れていたからである。

可愛らしいキャラクターと対象的な、暴力と淫猥に満ちたインモラルなストーリーはディスガイアからの伝統ではあるものの、そのフランチャイズよりもずっとシリアスに展開されていく。
序盤から謎に包まれる事柄が多いものの、「魔女メタリカ様の命令を遂行する」という目的がずっと提示されているため、ついていけなくなるようなことにはなりづらい。
そして迎える中盤のエンディング……それを回避するためのストーリーテリングはゲームに上手く落とし込まれている。
終盤は戸惑いの方が大きくなる場面もあったが、それは余談である。

かくして魔女と百騎兵は成功したゲームが成功すると、続編が出るのが世の常である。


日本一ソフトウェアはまた言われた「ハクスラはハクスラでもwizardryの方にして作られよ」。
するとルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団があった。

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vitaと言えばDRPGであり、DRPGと言えばwizardryである。
2016年6月にvita専用でリリースされたこのタイトルは、尽きかけていたvitaの灯火を―――わずかにではあるが―――燻らせたと言えよう。
発売週には全国で品薄となり(これのためにvitaを購入したというのに予約を失念していたため、DL版を購入せざるを得なかった)、このジャンルとしては異例の累計出荷本数15万を達成したのだから。

参考:全世界累計出荷本数が15万本突破のお知らせ

魔女と百騎兵同様にスクリプトが優れていることはさることながら、ルフランはゲーム自体にも特筆すべき点が幾つもある。

探索面
ダンジョンを自分の手で切り開く壁壊しは、単純ながら「探索の面白さ」というDRPGのプリミティブな体験を刺激する画期的なシステムである。
適正レベル程度では相手にもならないような強敵シンボルは世界樹フランチャイズのFOEさながらであり、探索自体にも戦略的思考が挟まる余地を提供している。
戦闘面
最大8人までのキャラクターを1つの結魂書という単位でパーティーを編成するシステムは、大量に手に入る装備品を持て余すことにならず、戦闘の面白さを推進する。
職業ごとに出来ることの幅も広いのも戦術を組み立てることが重要なルフランと相性が良く、中盤以降もダレることが無いと感じた。
クリティカルが強いバランスとなっているのも戦闘の緊張感を高めるのに役立っており、常に油断の出来ない攻略を求められる。

重厚なプレイ体験を備えたルフランは、前述したように大成功した。ゲームが大成功すると、続編に期待を寄せるのが人々の常である。


まず先に魔女と百騎兵2が発売されたが―――筆者は未プレイである。理由は様々だが、多くの人々はディレクターの泉達也氏が参加していないという理由で、購入を避けたようだった。
そのため内容に関して自分から言えることは無いのだが、成功したとは言い難い売上だったようだ。

しかし落胆するには早く、ルフランの後継続編が発表された。
それがガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団であり、人々は当然ながら熱狂した。スタッフの大半が続投しており、その中には泉達也氏の名もあったからだ。

2019年7月に発売日が決まり、期待がピークに達する中、延期の報が入った。
延期。ゲームにおける延期とは、多くの場合制作が円滑に進行していないことを指す。故に我々には不安が走った。
2020年春発売も難しくなり、switch版の開発も停止。ゲーム自体も最早発売されないのでは……?と、最早諦めの境地に至る者もいた。
2020年の末にガレリアの発売が決定したニュースがひっそりと出た頃には、みな熱が冷めてしまっていた。

よりにもよって黄泉を咲く華やメアリスケルターFの発売日と近くに出たガレリアを、筆者はなんかやらなかった。なんかと言えばなんかである。メアリスケルターFは買った。
確かこの頃PS4の調子が悪いので電源を抜いていたし、vitaをわざわざ引っ張り出すのも面倒だったような記憶はあるが確かではない。

そんなわけで2021年の7月、何気なく買ったガレリアをようやく解き明かす時が来たということである。

ガレリアの地下迷宮と魔女ノ旅団

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プレイ環境:PS4(途中からPS5でプレイ)
総プレイ時間:110時間(トロフィーコンプリート)
短評:つかれた。それだけです。


ここからの感想は節目節目に書かれたプレイメモを後からまとめ直したものを記します。

20時間ほどの感想;再生産されるゲームプレイはオールドスクールと言えるか

プレイフィールについて齟齬無く言えば、ルフランから変化した点は特に無い。それどころか、ほぼ同一である。
幾つかブラッシュアップされた点として優れたポイントといえば、戦闘中のリインフォースの使いみちが増えた程度であり、探索面も戦闘面も概ねルフランそのままだ。
最初のダンジョンのすぐ近くの壁を破壊すると、中盤以降に出てくる敵に襲われる構造も踏襲されている。

正直に言うと筆者はあまりこの手の……過去の作品の再生産はあまり好まない。映画で言えばスターウォーズエピソード7、音楽で言えばドラゴンフォース(正直に言うと新譜は好きだ)。
貪欲に新しいものを取り込んでいく姿勢を評価するきらいがあるため、序盤ははっきり言って退屈な点が多かった。

とはいえDRPGというジャンルは同じような課題を抱えている。EXPも、アトラスも、スティングも、或いはコンパイルハートも。
このジャンルはどうしてもフォーマットが定められてしまっており、紋切り型のゲームが生産されてしまうことを責められはしないだろう。

とりわけwizardry型のゲームを現代風にリファインするようなゲームは、再生産の一言で切り捨てられてもいいのだろうか?
オールドスクール的な体験をプレイヤーにもたらすことを保障されるべきではないのだろうか?

答えは未だ出ず、しかしガレリアを遊んだ最初の20時間ほどはそうしたことを考えざるを得なかった。
とはいえルフランが発売されたのは2016年、steam版を買い直したので2018年にも一度遊んでいる。
3年ほどのブランクを経て出会えたガレリアは退屈の中に郷愁を感じるものはあり、それは心地よさと言い換えることが出来なくも無い。

50時間ほどの感想;ローグライクの本質(或いは縦にダンジョンを広げる無意義さ)

最初のダンジョン「ナルテックス」と「アプス」をほぼ踏破し、「チャンセル」の深奥に潜むボスも撃破できた。
ここまでで特筆すべきことが一つ。ダンジョン探索の面白さがルフランよりも多い。

ルフランは中盤以降、あまり壁壊しが面白くなくなる。壊せない壁が多くなり、たまに出てくる壊せる壁を破壊しても見返りは薄い。
ガレリアはこの点を―――ダンジョン探索の意義を強めることで解決したように思う。

ガレリアの主な目的はダンジョンに眠る魔法の込められた芸術品「奇品」を収集することである。
これはストーリー上で強調されており、序盤ではこれを手にすればストーリーが進行していくこととなる。
また、奇品は手に入りさえすればトロフィーが獲得できるため、捜索することのインセンティブは比較的高いと感じる。
残念ながら後半では奇品を手にしてもノーリアクションになることが多く、肩透かしになることもあるのだが、それでもトロフィー取得の嬉しさはある。

これらは壁壊しなどのスキルを上手に利用することで見つけることが出来るため、隈なく探索する理由付けになっている。
ルフラン以上に探索が面白かったのは恐らくこのためだ。奇品は各フロアに点在しているため、戻って探索をしてみたりなども苦なくやれた。

ストーリー的にも前作以上にミステリアスで、不穏で、インモラルで。しかしコメディタッチでポップな登場人物に救われる。
今作の「魔女様」は厳しくもあり優しくもあるお婆さんであり、主人公に寄り添う少女はルカよりも大人びているものの、相変わらずおバカである。
そこに謎の、もうひとりの魔女とも言える少女も加わってきて中々騒々しく、しかし居心地がいい。

こういったこともあって当初よりは少しだけ面白く遊べている。が、少しだけ流れが変化した。ルフランとの差異が少しずつ大きくなってきたのだ。
ストーリーに大きな転換が訪れ、一旦全ての状況がリセットされてしまう。世界観も、ダンジョンも、パーティーメンバーも。

始めは「職業を新しくしてまた最初からダンジョン探索させるのかな?」と思ったがそうでもない。
提示されたのが、ランダムで生成される120階層のダンジョンだからである。

風来のシレンは名作ローグライクである。
でなければ現代まで語り継がれる道理はなく、必然であると言えよう。

風来のシレンは、ランダムに生成されるダンジョンを登っていくゲームである。
であればダンジョンにランダムに生成されることが面白さの本質であると言えるだろうか。
読者諸賢は言うだろう「そんなわきゃねえだろ」。それは極めて正しい。

風来のシレンは選択のゲームである。
この階層の探索をどこまでやるか?次の階層にとっとと行ってしまうか?戦闘は避けるか?商人から何かを買うべきか?
それらの選択は全てテーブルマウンテンを踏破するための準備であり、だからこそ我々は常に油断の出来ないダンジョン探索を迫られるのである。
ランダムに生成されるダンジョンはプレイの再現性を低め、それ故プレイヤーは選択肢を広げなければならない。テーブルマウンテンに同じゲーム展開は、恐らく二度と訪れないためである。

これらの選択はガレリアにおいてはとても薄い。全滅したところで拾得物を失うわけでもなければ、プレイ体験が大きく変化するわけでもない。
ちょっとレベルを上げて装備品が間に合わせでも揃えば次の階層でも通用するため、反復的なプレイを余儀なくされてしまうだけになった。

そもそも壁壊しやジャンプといったガレリアの探索のシステムは、横に広いダンジョンだからこそダイナミックに楽しめるものである。
縦に長いダンジョンを遊ぶ上でそれらのシステムはあまり活きてこず、ここまでのガレリアの面白さは大分オミットされていると言わざるを得ない。
少しわかりづらい表現になってしまったが、要するに「ダルい」ダンジョンなのである。

ようやくダンジョンをクリアしたところで、以前リセットされたものが一度戻ってくる。が、新たなダンジョンに行けるわけではなかった。
行けるようになるのは既に踏破したダンジョンだけで、それらをまた巡ってこいと言われる。

もうゲームに関して見切りをつけても良い頃合いだとは思うものの、それが出来ない理由がある。シナリオだ。
急展開直下していくストーリーは、リセット前と後とで少しずつ関わりを強めていく。リセット前の伏線が解消されていくカタルシスも相まり、ますます続きが気になっていく。

ゲームはつまらないが、シナリオは面白い。
ゲームをやらないと、シナリオが読めない。
ゲームをやる言い訳として、シナリオがある。

そんな気持ちで遊ぶしか無く、かったるい。これからまた同じようなことが無いことを祈るばかりである。というか新しいダンジョン探索させてくれ……。

80時間ほどの感想;ラスボス撃破、しかし……

ここからは疲れたのでほぼプレイメモを大体そのまま乗せます。

もう一度120階層のランダムダンジョンを潜れと言われた時は流石にディスクを破壊しかけたが、なんとか攻略を終えた。マジで面白くなかった。具合が悪くなる。
シナリオは相変わらず面白い。面白いのだが、ネタバレになるしこんな具合じゃ齟齬も生まれそうなので何も書けない。今のところはルフランよりも先が気になる。

そして久々の固定ダンジョン。ラスダンの風格はあるが、壁壊しは一切なし。なぜ……。
しかし敵がそこそこ手強く、ここまでの育成が試されている心地がある。何度か負けたものの、噛み合えば瞬殺できるバランスは中々爽快。
固定ダンジョンで9体のボスを倒し、シナリオ的にも世界の謎や伏線が多く解かれてきて熱い展開となり、かなり盛り上がる。そして最深部へ至る。
ワープゾーンを活かした新たなダンジョンだ。久々にマップとにらめっこしながら色々巡らざるを得なくて中々楽しい。

ようやくラスボスへと至る。が、圧倒的な力量差を見せつけられすごすごと退散。何度か挑んだものの勝ち目が見いだせず、インターネットに頼る。
ラスボス用の結魂書や装備がほぼ必須らしい。ファック。探索し直したり素材の収集に励む。

それからラスボスへ。また何度か負けたが、戦略を少し整えたら余裕だった。エロスアタッカー多めの構成なのでグループ敵には強い。
しかし奇品を全て集めないと真のエンディングに辿り着けないらしい。取りこぼしあったっけ?と思ったらかなり初歩的な見落としをしてしまっていた。

二回目の撃破でようやく終わった―!と思ったがまだ隠しダンジョンがあった。中々手強い。3階層だけではあるものの、かなり横に広いダンジョンを扉すら破壊するFOEに追いかけられつつ踏破。
しかし所々なんだか整合性が合わない会話がダンジョン内であったりして、これもしかして開発がグダついてた部分の名残かな……など思ったり。
シナリオ的にはエンディングである人物が犠牲になってしまったので、そいつを救いに行こうという話。気持ち的には強いが、そこに至るまでの話が無いので唐突感は否めない。
でも百合ゲーの片鱗を見せつけられて盛り上がるね。

盛り上がったところで最終ダンジョンが「3651層のダンジョン」とか言われた。誤植だと思って攻略サイトを見たらクリアするのに20~30時間はゆうにかかるとあった。

助けてくれ。

クリア後の感想;全てを捧げる。彼女を救うために(嘘、シナリオを見るため)。

クリア即トロコン。3651層回ってエンカは100回にも満たなかったと思う。全て銀の匙99個のお陰だった。
装備はどんどんインフレするし魂移し何度も出来たからパーティー的には強くなったんだろうけど、それを実感出来る場所はなかった。
ただ敵のいないフロアをアタリつけて捜索するだけの20時間余り。
ポケモンユナイトのリリース前に終わらせておきたかったので平日深夜に無理しながらやった。結果的にはやんなくてもいいと思う。つまんないし。

エンディングも演出はかなり良かったけどめっちゃ肩透かしだった。ここまでのシナリオでかなり期待が高まってたがゆえにガッカリ。
妙に展開が急すぎるので恐らくここもカットされちゃったのかな……?

もう何も言うことはないです。疲れた。それだけです。

総評

Pros
ルフランから継承された探索と戦闘のエッセンスは健在、それどころかブラッシュアップされている。
職業の優劣はほぼ無く、どんな戦略だろうと通用するようなバランスに思える。
戦闘のテンポは良し。どんな強敵だろうとダラダラとした戦闘にはならず、常に気が抜けない。
キャラクターの魅力は良し。流石にメタリカ様とまでは行かずとも、オババ様もユリィカもナチルもペリコも、皆心に残る素晴らしい造形だった。
シナリオも最後を除けば素晴らしい。インモラルでミステリアスだが陰鬱ではなく、緩急のついたSFファンタジー大作に思える。
Cons
ルフランとほぼ同一のゲーム性であるため、ルフランが合わなかったor飽きたという人は手を出さないほうが良い。
UIがかなりイケてない。メニュー操作の時間だけで20時間は持っていかれている気がするくらいにはあちこち参照しながら遊ぶ羽目になる。
固定ダンジョンが少なく、物足りない。ボスと呼べるものもそう多くなく、折角鍛えたメンバーを活かす機会がそこまで無かった。
「結局アレなんだった?」となるストーリー上の幾つかの要素が残ったままであった。恐らく開発中の名残だろうが、思わせぶりのままに終わってしまい消化不良。
ランダムダンジョンの全てが憎い。第一印象から最悪だったし、今も最悪だと思う。これに比べれば上記全ての事柄なんて塵や埃の類である。

出来るだけネタバレに配慮したので皆さんも購入しなさい。以上です。じゃあぼくはポケモンユナイトに行きます。

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