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スポーツにおける商業主義は”悪”ではない!

以下の日経新聞の記事を読んでちょっと言いたくなりました。 

根本的にMLBは儲け過ぎで日本のプロ野球(NPB)は健全という論調には賛成できません。確かにチケットがファンが買えなくなるほど高騰するのは断固阻止すべきだと思いますが、他のビジネス手法、特に放映権販売などについてはNPBはMLBの手法を見習い、大いに販売額を増やすべきです。

NPBが各球団がばらばらに販売していることもあり放映権の総販売額が年間130億円。それに対してMLBは全国ネットのテレビ局、衛星局、ネット配信企業向けだけでも2,500億円を超えています。実態はこれに各球団ごとに販売している地方局への販売額も加わるのです。にも拘らずMLBの放映が高すぎてテレビで視聴できないという声は聞こえてきません。マーケットがうまく機能しているのです。

また、それにも増して強調したいのは、日本の場合儲けたお金は野球少年、少女の育成、大会運営や指導者養成のための基金を立ち上げ、野球の発展のために還元すべきです。例えば、サッカーのイングランドプレミアリーグはそういう基金に毎年多額の寄付をしています。

さもないと既に急降下している日本の野球競技人口は物凄い勢いで減り続け、第二の大谷翔平選手が出現する可能性はおろか、野球そのものが衰退してマイナースポーツになりかねないのです。野球部が廃止されている中学や高校がどんどん増えていることに対する危機感はないのでしょうか? 野球の裾野、土台を支えることもプロ野球の責務だという意識があまりないのが本当に残念です。普及、育成には多額のお金がかかるのは避けられず、その出し手がいなければスポーツ全体が衰退してしまいます。

儲けること=商業主義=悪というのは日本のスポーツ界に蔓延る悪しき思い込みです。それよりも儲けたものをどう役立てるかの方が余程大事なのではないでしょうか? 節度ある商業主義で多いに儲け、それを男女問わず子供に野球を始めてもらう、そして10代の選手を育てるために使うという当たり前のことを野球界はすぐにでも実行してほしいものです。

日本のスポーツ全体を支えるためには、 

”儲けて子供に還元する”
 
という循環を目指すべきです。


野球の「売り方」、日米の違い
大リーグとプロ野球の経済格差 国民性が一因?

日経新聞2022年10月18日(掲載写真を含む)

スポーツの力

桜美林大の小林至教授から「今年の大リーグのワールドシリーズのチケットの平均価格がリセール市場で2000ドル(約29万円)を超えました」と教えてもらった。米国のリセール市場は日本よりはるかに大きい。スタンドにはそれだけの金額を払ったファンが相当数いたということだ。ちなみに2016年のカブスとインディアンス(現ガーディアンズ)の対戦では平均6000ドルを超えたという。

元ロッテ投手で福岡ソフトバンクホークスの取締役も務めた小林教授が監修した「野球の経済学」(新星出版社)は、球団経営にかかるコストなど野球のお金にまつわる話題を分かりやすく説明していて勉強になる。個人的に興味をひかれたのが日本野球機構(NPB)と米大リーグ機構(MLB)の比較だった。

1995年の市場規模は日本のプロ野球900億円、大リーグは1400億円だったのが、18年は日本の1800億円に対して、大リーグ1兆1000億円。12球団対30球団とはいえ、圧倒的な差となった。円安でその差は大幅に広がっているはずだ。

なにが違うのか。大リーグでは放映権をはじめとするさまざまな権利をMLBが可能な限り一括管理して収入を最大化するのに対し、日本は親会社の意向もあって各球団の権利がバラバラのため、一致団結して収入を増やせないなどの指摘がある。確かにそれは正しいのだが、小林教授の話を詳しく聞くと、根底にあるのは国民性や文化の違いだと感じてしまう。

小林教授によると、MLBのコミッショナーは「経営者であるオーナーたちの利益を最大化するために尽力する存在」。MLB以上の人気を誇るフットボールのNFLやバスケットボールのNBAも目的はオーナーたちの利益を最大化すること。そのための経済合理性の追求が同時にファンの熱狂も生み出している。

日本では受け入れられない感覚だろう。22年の日本シリーズのチケットは高くても1席2万円せず、5000円以下もある。今回はリセールサイトで15万円になったケースもあったというが、ビジネスとしての転売は違法で、米国のような状況になれば社会問題になる。一方、米国では通常、リーグやチームとリセール業者は提携している。

自分を含めて大半の人は日本の方が健全だと考えるだろう。だが、現実には米国のプロスポーツにはお金が集まり、優秀な才能は日本から流出していく。

日本ではスポーツに限らずエンターテインメントビジネスを発展させるのは容易ではないと感じる。

(編集委員 北川和徳)

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