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Day22,「Chef de cuisine」Inktober2020

 大学時代、選択講義で仏語か中国語を取る必要があった。中国語はなんとなく分かる気でいたし、そもそもそそられなかったから、フランス語を選んだ。英語も頓珍漢のくせに、よくあんな難しい言語、選んだものだ。
仏語はまず、発音が難しい。同じラテン系言語でも、イタリア語の発音は分かりやすく、意味がわからないまでも、音は聞き取れ再現出来る。フランス語は、それすら難しかった。初見でどう音を出しているか分からないのだ。いつだったか兄が、卵が欲しけりゃ市場でエッグと叫べばいい、と言っていたのを思い出す。英語圏なら、発狂していると思われるかもしれないが、それでいいだろう。フランス語で卵は、Oeuf、と書く。オェフ、みたいな音なのだが、このエの部分が曲者なのだ。なんだエって。ゲップの最後の音か。これでは卵も手に入れられない。悲しいことだ。

ただ、意外にもフランス語は、我々の意識しないところで日本語にたくさん流入している。アラカルト、ビストロ、クロワッサン、マヨネーズ、ポタージュ、シェフ。メトロやクレヨン、デジャブなんかも実は仏語だが、圧倒的に食事に関する言葉に多く感じるのは、彼の国が未だに島国日本の中で、高級な食事、のイメージだからだろうか。

 フランス料理でないまでも、料理出来るのはすごいことだ。料理でなくても、洗濯や掃除、風呂をきれいに保ったり、流しの排水口にちゃんとこまめに新しいネットを張り替える事ですら、すごいことだと思う。これは、やる能力がないからすごいと思うのではなく、やれる能力はあっても続ける事が出来ないから思う、すごさである。人は怠惰で自堕落だから、すぐ手を抜く。自分が大切と思っているものでさえ、いつのまにかほったらかしになってはいないか(私はしばしばある)。
結局、仏語は一生懸命取り組んだが、成績はそこそこ、今や自己紹介程度しか出来ない。発音ももちろんめちゃくちゃだ。滅多に使わないのだから支障はないが、日々使う技術ですら手についていないのだから、高嶺の花の学びだった。改めて日々を見直し、細くなった二の腕や、焼きそばしか作ってあげられない中華鍋を、改めて恥ずかしいものだと感じたい。

CHEF

[名]Cコック長,料理長,シェフ;(一般に)コック
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