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Day24,「Dig up」Inktober2020

 古本が好きだ。
角の擦れた手触りが好きだ。新本より安く買えるから好きだ。ぱらぱら捲ると甘い匂いがするから好きだ。赤っ茶けた紙の色が好きだ。知らないことが書いてあるから好きだ。時々、知ってたつもりの事を裏付けてくれるから好きだ。時々、前の持ち主の書き込みが見付かるから好きだ。
古本が好きだ。

街角の古本屋の店先に、100円本の棚やトロ箱があると、必ず覗いてしまう。たかが100円で、知らないことがぎっしり書かれている一冊が手に入るのだ。多少の時間を削っても、見に行く価値がある。本は、自分勝手で思うままだ。本当は作者が思うまま、なのかもしれないのだが、僕は今手にしている一冊こそが、思うままに喋っている様に見える。研究書や小説、ノンフィクションルポもよく読むが、一番買うのはエッセイや旅行記だ。読み手に対する気遣いや衒いがなく、誰かに読ませようと思って書いているわけでもなさそうな、そんな本こそが一番楽しく読める。だから、僕は自分のnoteを、始めた時そんな、古本屋の100円棚みたいなものにしたかった。

 読書の習慣は、親譲りだと思う。家がそこそこ裕福だった父は、いつも駅前の本屋で祖父の名前を出して、ツケで本を買ったそうだ。流石に今はそんな事経験した事はないが、実家には読むべき本がたくさんあった。有りがちだが、少年少女文学全集で大概の本を読んだ。子供の頃傾倒したのは宮沢賢治で、記念館を見に岩手まで行く変態さがあった。漢詩を誦んじる父に憧れて李白や杜甫を読んだこともあったし、頭が良くなりたくて哲学書や文学書にも手を出した。結局馬鹿のままだった。それでも、本を読むことへの抵抗感を無くせたのは、大きな得だったと感じている。

 100円で並ぶ古本は、好きな人以外誰も見ない。ただ前を通り過ぎるだけだ。それでも、その中に数冊かの色づいて見える本があれば。その本だけを目当てに、手に取る人がいるかもしれない。馬鹿のままの僕は、馬鹿のまま書こう。誰かにとっては、心を埋めるものになるかもしれない。

DIG


1 〈地面を〉掘る
2 (探し物を求めて)ひっくり返す
3 〈手などを〉(…に)突っ込む
4 〈人を〉(ひじ・指で)つつく
◆地面を掘り返す行為を中心として,動きと目的に着目して「ひっくり返して探す」,動きに注目して「突っ込む」「つつく」に意味が広がる.

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