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Day26,「Hideout」Inktober2020

 昔から、屋根裏小屋、秘密基地、隠れ家、みたいなものが好きだった。多分男の子はみんな好きだ。女の子にとっての化粧品箱や、宝箱の様なものが、僕たちにとってのそういうものなんだと思う。大人になってもそういう憧れが消えず、むしろ女性の口紅が幾本も増える様に、家には無限に物が増えた。僕にとっての宝は靴や服、革細工の道具や妙な雑貨で、しかも仕事を始めて小金が入ったから、いちいち言い訳をしながら、取り留めなく増やした。我が家は、ゴミ屋敷とは言わないまでも、雑多と混沌が極まっている。

 物を溜め込む習慣は、多分色んなところから始まったのだろうけれど、一番大きく関係しているのはトムソーヤーの冒険だったんじゃないかなぁ、と思う。悪ガキのトムは、母から命じられたペンキ塗りをいかにサボろうかと考えた末、いかにも楽しそうにペンキを塗ることを思いつく。それを見た友人達は、そんなに楽しいなら俺も俺も、と、トムに自分の大切な宝物を差し出してまで、ペンキ塗りをやりたがるのだ。
マーク・トウェインが描きたかったのは、もっと教訓寄りの事だったのかもしれないが、僕にはむしろ、子供たちが差し出す宝物の一つ一つが魅力だった。食べかけのリンゴやビー玉、確かコマや鼠のおもちゃ、みたいな取るに足らない物だったが、機転とズル賢さで面倒を逃れるトムと、そしてせしめた結果は、不思議に蠱惑的な素晴らしさがあり、今でも宝物について考える時、頭を離れない。

 世間はどうやら、ミニマリスト一筋の風潮だ。物への固執が婚期を逃すとか、貧乏になるとか、飛躍したことまで言う人もいる。今更どう足掻いてもミニマリストにはなれないが、引っ越しも控えているのだから、確かに物は減らさなきゃならない。嫌すぎる。どうせ結局は、多めに金を払ってでも、ある程度のものは持って行くだろう。隠れ家を捨てられないだろう。いつまで経っても、家の中では僕は、男の子のままだ。

HIDE

他〈物・人などを〉(…に)隠す≪in,behind,under≫,(…から)おおい隠す,かくまう(away,out)≪from≫
hide a key under the flowerpot
植木鉢の下にかぎを隠す
hide one's friend from the police
友人を警察からかくまう
1a自〈人などが〉(…に)隠れる,潜む≪in,behind,under≫,(…から)逃避する(away,out)≪from≫;((略式))〈物が〉見えにくいところにある
hide away [out]
潜伏する
hide from the reality
現実から逃避する
1b自〈人が〉保身のために隠れる,(法などを)隠れみのにする,盾にする≪behind≫
hide behind the law [the rules]
法律[規則]を隠れみのにする
2他〈事実などを〉(人に)包み隠す,〈感情などを〉(人に)見せない,表に現さない≪from≫;自隠しごとをする
hide the fact from the public
事実を世間に知らせない
hide one's feelings from others
他人に自分の感情を見せない

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