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ワークボックス・パラダイス(未完成小説)

1

会社の隣のビルの中に時間貸しのワーキングスペースができたと聞いて、昼休みに覗いてみた。
オフィスビルの広いロビーの壁沿いにあるそのスペースは、10年ほど前までは公衆電話が数台並んでいた場所だ。
公衆電話一台分のスペースが扉付きの箱に覆われている。
黒っぽい半透明の扉にはQRコードの読み込み装置らしきものがついている。
ワーキングボックスと呼んだりするらしいそれは、さすがに電話ボックスに比べると少し奥行きがあるようだが、いずれにせよかなり狭そうだ。
尤も扉の中の様子を伺うことはできない。
安全性に問題はないのか。
1時間500円。Wi-Fi、電源完備が安いのか、高いのか。

しばらく眺めながら、そんなことを考えたが、それっきり特に気にすることもなく、数ヶ月が経った。
ある日同僚がそのワーキングボックスを話題にしてきた。
彼は、使っている地下鉄の出口が彼のビルの中に繋がっているせいで毎朝そこを通るし、ビルの中にあるカフェも利用するので、かなりの頻度であの「ボックス」の前を通るそうだ。

「使っている人いるの?」と聞くと、
「時々入って行く人を見かける」と答えた後、
「でも出てくる人を見たことがないんだ」と付け加えた。

そんなバカな話はないだろう。偶然に決まっている。そんなふうに一笑にふしてその場は終わった。

2

同僚とそんな話をしてから暫くした頃、そのワーキングボックスの前を通りかかる機会があった。
外出で地下鉄を使うためだ。

若い男女がワーキングボックスの扉の前で何やら騒いでいた。
どうやら一緒に入ろうとして失敗した様子。
オフィス街に似合わないカジュアルな格好の男女は、狭いところに一緒に入って何をしようとしていたのか。

(※続きを、思いついたら書き足すかもしれません。いつか小説になるかもしれないし、ならないかもしれません)

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