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みのりんの澄んだ歌声と、真夏の河口湖の思い出

2021年4月2日
声優でアーティストの茅原実里さんが、今年いっぱいでの歌手活動を休止すると発表しました。

茅原実里さん、「みのりん」は大好きなアーティストのひとり。
最近は活動を全く追えていませんでしたが、一時期ライブに足繁く通ったり、コピーバンドを組んで活動したりしていました。

突然の発表に驚きましたが、このコロナ禍の中、彼女の中で思うところがあったのだろうと思います。
みのりんの決断は尊重しなければいけませんが、今は少し寂しい気持ちです。
ただ、「活動休止」という事なので、いつかは活動を再開するものと信じていますし、何より歌うことを辞めてほしくはありません。

声優 茅原実里

声優としてのみのりんを知ったのは、「涼宮ハルヒの憂鬱」の長門有希。
恐らく多くの方がそうだったと思います。
「情報統合思念体」として、無機質ながらもたまに見せる人間らしく、可愛らしい姿が印象的でした。

強烈に印象に残るキャラなので、ひょっとしたら本人もクールな感じの人なのだろう、と思い込んでいましたが、真逆の人でびっくり。
声も正確も明るくて、周りをパッと華やかにする存在。
「ミスサンシャイン」の異名そのままの、魅力的な女性だったのです。

好きなキャラは「みなみけ」の南千秋。
三姉妹の末っ子で、いつも周りを冷ややかな目で見ている難しい子ですが、実は甘えん坊なところがかわいかった。千秋も声のトーンは低く、淡々と喋る女の子。
あんな明るい女性が真逆の女の子を演じる。演技力もさることながら、「キャラクターになりきる力」がものすごい方だと思いました。

そして、「響け!ユーフォニアム」の中世古香織。
ショートカットがキュートで、優しくも凛々しい北宇治高校吹奏楽部の3年生。パートは1stトランペット。
私も高校時代は吹奏楽部だったので、あんな先輩がいたら、合奏中ずっと見とれてしまうだろうなぁ…と思いながらアニメを観ていました。
落ち着いた雰囲気の香織を、優しい声で演じていたのが印象的です。

Contact ~仲間との繋がり

みのりんは2004年に歌手としてデビューしますが、個人的に最も印象に残る作品が、2007年に発表された「Contact」。
スピード感のあるデジタルサウンドとリズムに、ギターを乗せることでロックテイストを出し、そこに寄り添うようなストリングスが音に厚みを出す。唯一無二のトラックに、彼女の透明な歌声が響く。
長門有希のキャラクターソング「雪、無音、窓辺にて。」で定着したイメージを踏襲させつつ、様々なジャンルの楽曲にも挑戦した、彼女の再デビュー作と言える作品。

このアルバムは、私の中ではかなり衝撃的でした。

その当時、ドラマーとしていくつかのバンドに参加していて、どちらかというと生のサウンドにこだわったアーティストやバンドの曲をよく聞いたり演奏したりしていましたが、打ち込み中心でビートも一定の曲が多いこのアルバムには何故か惹かれました。
予定調和とも取れる楽曲の中に、美しさがあったのです。

1曲目の「Contact」からシームレスに繋がる「詩人の旅」。コーラスワークが美しいミドルテンポの曲が、一発でストリングスが高らかに響くスピードロックに変わる衝撃。
4ビートのややハネたリズムに、心躍るメロディとサウンド「ふたりのリフレクション」。
彼女のアイコンと言うべき美しい旋律「純白サンクチュアリィ」。
ストリングスが重厚感を増す中、高らかに歌い上げるバラード「Dears~ゆるやかな奇跡~」。
自然と体が動く気持ちいいリズムとベースライン、ストリングスの美しい旋律に重なり合うコーラス。そのすべてが高い次元で融合する「Cynthia」。
彼女の高い歌唱力をいかんなく発揮し、歌い上げるマイナーバラード「sleeping terror」。
ギターサウンドを前面に出したロックチューン「too late? not late...」。
軽快なリズムに乗せて夏の終わりの郷愁を想う「夏を忘れたら」。
ストリングスと美しいハーモニーを前面に押し出したミドルテンポのバラード「mezzo forte」。
クールでダークなイメージをマイナーで表現した、このアルバムの主題のひとつであるスピードロック「君がくれたあの日」。
そして、デジタルサウンドを排し、心地いいリズムに優しく、温かく響く歌声「truth gift」。

どの曲も完成度が高く、歌唱力の高いみのりんの再デビュー作品として印象に残る素晴らしい作品。
特に「Cynthia」はお洒落なサウンドと気持ちいいグルーヴで一番のお気に入りです。

※彼女の「アイコン」とも言うべき名曲「純白サンクチュアリィ」オフィシャルMV。

これは是が非でもライブを見に行かねばなるまい!と、1stライブのチケットをゲット。
友人と二人で観に行くことができました。
2008年3月、会場は品川プリンスホテル ステラボール。

ステージ上でのみのりんは、アルバム「Contact」のイメージそのままに、ライブでも高い歌唱力で魅了してくれました。
オリジナル曲はもちろん、「Fragment ~Shooting star of the origin~」も披露。
yozuca*が歌うバージョンはよく知っていましたが、みのりんが歌っていることを知らず、驚いたと同時に、嬉しかった。
そして最後に披露してくれた「Contact13th」。あたたかい旋律のポップチューンが心に響きました。

アルバムにライブと、すっかりみのりんに魅了されてしまった私。
その後、みのりんの人気も急上昇。次のアルバムのツアーでは、関東公演のチケットが取れずに友人と新潟へ遠征までしました。
普段あまり旅行をしない私が、ライブを見るために地方都市へ遠征に行くなんて、初めての経験でした。

そんな中、当時活動していたアニソンコピーバンド界隈の仲間が集まり、みのりんのコピーバンドを結成する話が持ち上がりました。
バンド名は「m.s.s~minori sound sunctuary」。私もドラマーとして加入します。

デジタルサウンドの中にストリングスが響くみのりんのサウンド。
このバンドはそのサウンドを完全に再現しようと、歌唱、演奏のレベルが高いメンバーが集結。
打ち込みあり、なんとバイオリニストまでもメンバーにいる大所帯。
今まで別のバンドで一緒に活動していたメンバーもいれば、初めてセッションする仲間もいる。人数がたくさんいれば、それだけ楽しいものです。

しかし、演奏はデジタルサウンドを打ち込んだトラックと、クリックとの闘い。
素晴らしいトラックを作ってもらいましたし、クリックを聞きながらの演奏は別のバンドでの経験が豊富にあったので苦労はしませんでしたが、ひとつズレると演奏が台無しになってしまう。そして体調によってクリックが早く聞こえたり遅く聞こえたり…。
バンドの醍醐味はライブですが、それよりも私はスタジオでのセッションも毎回楽しんでいました。
シングルヘッドの10インチタムを持ち込んだり、サンバホイッスルを買って演奏に取り入れてみたり。

そして、ライブも数多く経験できました。
中には、みのりんのライブで実際に演奏している本物のメンバーの目の前で披露することも。みのりんコピーバンドが集まるフェスで、他のバンドのメンバーがその方にギターを教わっていた縁で見に来てくれていたそうです。

彼女の人気が高まるにつれ、コピーバンドも増えていったようですが、我々のバンドは割と早くから活動していたので、その中でも注目されているようでした。
界隈で名が売れるのはうれしいものですが、それよりも同じアーティストを好きなメンバーが何人も集まって、好きな曲を演奏できることは貴重だったし、本当に楽しい時間でした。

夏の恒例行事「SUMMER CAMP」

みのりんの人気が徐々に高まってきた2009年、あるイベントが開催されます。
「Minori Chihara Live 2009 "SUMMER CAMP"」
会場は河口湖にあるステラシアター。可動式屋根のある、野外ホールでのライブです。

せっかくの夏の一大イベント、これは参加しなくてはなりません。
友達と一緒にチケットをゲットし、私が車を出して、いざ河口湖へ。
ライブが終わるのは夜になるので、その日は宿をとって泊まることにしました。
ライブのために遠征することすら珍しかったのに、今度は「旅行」をすることになるとは。
なかなかない経験にワクワクしていました。

会場の河口湖ステラシアターも素敵なロケーション。
すり鉢状でステージが一番低いところにあり、その後ろには大自然が広がります。
標高もやや高く、都内よりも全然涼しい。
ただ、山の天気は変わりやすく、ライブが始まるまで雨に降られてしまいました。
しかも、取った席が屋根のないところ。雨合羽を着てライブが始まるまで耐えることに。

やがて雨は止み、やや日が高いうちに開演。トワイライトを経て夜の暗闇へ。
みのりんの歌声と澄んだ空気、時より顔をなでる涼しい風。
ステラシアター全員で同じフラッグを振る「Lush March!」。
そしてライブのクライマックスには大きな花火。
ライブの熱狂と自然豊かなロケーションにすっかり酔いしれてしまいました。

ライブが終わると居酒屋で打ち上げ。私はさすがに酒は飲めませんでしたが、帰りに酒を買い込んで宿で2次会。
予約した宿はアパートのような木造建築の民宿。風呂もないところでした。
チェックインすると最初に公衆浴場を案内され、翌日入りに行くことに。
ほかの部屋もSUMMER CAMP目当てのみのりんファン。
なかなか味わうことのできない経験でした。

その後、SUMMER CAMPは恒例行事となり、私にとっても毎年夏になると河口湖ステラシアターでライブを見ることが恒例となりました。

翌2010年はバンドメンバーが多数集まって大所帯に。
せっかくだから観光もしようと、現地で集合して灼熱の暑さの中、山梨名物のほうとうを食べに行ったり。汗が噴き出たのは言うまでもありませんが。
近くにあるワイナリーも訪れました。
山梨県は数多くのワイン醸造所があることをこの時初めて知りました。
運転手である私は当然試飲はできず悔しい思いをしましたが、出してもらったぶどうジュースが、今まで飲んだジュースをはるかに凌ぐ美味しさでびっくり!それだけで満足でした。
もちろん、その場でワインを数本購入し、ライブ終了後に宿で楽しんだのは言うまでもありません。

ライブには二日間参加。翌日は名物の吉田うどんを食べに行ったりして、すっかり河口湖の夏休みを満喫したのでした。

翌2011年には、ライブの模様をMVに収める試みが行われました。
「purest note ~あたたかい音」
東日本大震災という未曽有の出来事があり、少しでも歌で癒されてほしい、という願いの籠った曲です。

会場ではバンドの仲間と一緒にメッセージボードを書いたり、集まってピンナップを撮影してもらったり。
数多くのピンナップが集まったと思いますが、完成したMVを見ていると、なんと我々が映っているではありませんか!!

その年に買ったカンカン帽は今でも部屋に飾ってあります。普段帽子をかぶらないので、河口湖滞在中ずっと気に入って被っていました。「似合うね」って言われたのがうれしかった。

私が参加したのは、その翌年の2012年まで。
その後は仕事の都合で参加できませんでしたが、みのりんサイドの都合もあり、SUMMER CAMPというイベント名も変わってしまいました。
つまり、長く続く真夏の河口湖ライブの中でも、SUMMER CAMPのみに参加したことになります。

その間、毎年8月上旬には必ず河口湖を訪れ、夏のひと時を過ごしてきました。
当時はシフト勤務でしたが、その時期だけうまく仕事の休みが合ったのも奇跡でした。
たまには友達と夏の思い出をつくりなさい、と神様が与えてくださったのでしょうか。

楽しみはライブだけではなく、みんなで食事したり、観光したり。
出発は私の地元からだったので、普段都内でしか会わない友達が地元に来てくれるのも、何だか不思議な感覚。
最後の年には車で河口湖を一周して、観光地を訪れたりもしました。
宿のスタッフの方もいい人達ばかりで、地元が盛り上がるのをよろこんでいたようでした。
会場までマイカーで送ってくれたり、バスを出してくれたり。
それでも、空気がおいしい山のふもとの町を、数人でてくてく歩くだけでも情緒があって楽しかった。
帰りは私の車で山梨から神奈川、東京、埼玉と友達を下ろしながら走破したこともありました。疲れたけど、いい思い出です。夜食としてハンバーグを奢ってもらったっけ。

私にとってのみのりんは、澄んだ歌声と真夏の河口湖の思い出なのです。


昨年、コロナ禍でライブイベントが次々中止になる中、毎年恒例の河口湖ライブも無観客配信として行われました。
2012年以降まったく河口湖ステラシアターに行けていなかったので、懐かしい思い出と共に画面を見守りました。

みのりんも、いつもは不可能な客席で歌ったり、ステージ裏のスペースで自然に囲まれながらアコースティックコーナーをやってくれたり。
それに加え、オープニングムービーでの見慣れた街並み。当時とあまり変わっていないようで、懐かしさがこみ上げてきました。
配信ライブでしたが臨場感は満載で、当時の思い出が蘇りました。

そして今年も河口湖でのライブが決定したそうです。
毎年恒例となったライブも、今年で区切りとなります。
初めて河口湖に訪れてから10年以上経ち、周りの環境は大きく変わりました。
ぜひ現地で見たかったのですが、私も今は遠出ができない状況のため、節目のライブには行くことができません。

しかし、今年もライブ配信をしてくれると思うので、今から夏の日を楽しみにしています。
きっと素晴らしい「夏色華日」を、みのりんは見せてくれるはずです。

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