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砂塵に焼かれて星は征く――対策委員会編3章Part1~3・感想【ブルーアーカイブ】

最初から ずっと 流れ彷徨い
喧噪 円状に僕を取り囲んで
寂しいとか きっと 分かっていたんだ
お別れする

いつからか ずっと 見上げる空の
偶像 理想 眺めて手を伸ばす
いつの日か きっと 広がる曇天に
お別れする

slash your tears away
もう逃げることはしない

『slash』yama
「もう二度と……。
……あの過ちは、繰り返さない。」

 前略。完走後に感想を書くつもりでしたが、Part3(17~27話)で見事に情緒をぐちゃぐちゃにされました。以下、覚書程度のものですが、対策委員会編3章『夢が残した足跡』1~27話までの感想を書き殴ります。




十六夜ノノミ①――「ゴールドカード」と「大人のカード」

「それと、私は「お嬢さん」じゃありません。」
「ノノミです、ホシノ先輩。」

 個人的に真っ先に語りたいのは十六夜ノノミ。ホシノは元から片鱗があったので、3章で過去が掘り下げられることについては当然身構えていたんですよ。……だからこそ盲点だった。今回のシナリオでこの子に対する印象が180度が変わった。「天真爛漫なお嬢様」ではない。むしろ彼女自身がその肩書きに葛藤を覚え、そして克服していく過程が丁寧に描かれていた。

 その象徴となるのは彼女が持ち歩いている「ゴールドカード」。今回のシナリオでは、先生が持つ「大人のカード」に対比されているなと。

「そのカードを乱用すれば――
あなたは私たちと同じ結末を迎えることになりますよ、先生。」
(最終編2章1話)

 「大人のカード」は①乱用できる②支払い(代償)は本人の負担。これに対して「ゴールドカード」は①明確に限度額が設定されている。②支払い(代償)はネフティスの負担。いわばチャイルドロックがかけられている状態だ。無論、子どもが親の支援を受けること、財力が豊かであるならその額が多大であることは、悪いことではないが――

「そのカードはネフティスの物でしょ。
つまり、学校の借金を返したのはネフティスってことになる、君じゃなくて。」

 第4話でホシノが指摘している通り、このカードをアビドス高等学校の借金返済にあてたとしても、アビドスの生徒が返済したことにはならず、世間的には筋が通らない。たとえそれが純粋な善意による寄付であったとしても。ノノミにとっては、ホシノと交わしたこの時の会話が――カードをどんな目的でどう使うかを自分なりに考えることが、「ネフティスのお嬢さん」ではなく、ひとりの生徒として自分の進路を決めるきっかけになった。それはさながら、先生が大人としての責任を果たすためにカードを使い、生き様を示すのと同じように。

「わがままを言えば何とかなるとお思いですか?
中学生の頃から、成長していないのですね。」

 しかし、これはキッザニア感覚で「大人」を体験できる装置であって、どこまで行っても「大人のカード」とは別物だ。後にノノミは、支払い(代償)がネフティスの負担である点を執事から糾弾される。ネフティスに世話になっている身でありながら、その上さらに、自分だけは何の犠牲も払わず敵対関係であるアビドスを助けてほしいとお願いするのはわがままだ、と。

別の場面。対比的な発言ですね。

 執事さんの言ってること、まあ気持ちはわかるんですが……なんかオモコロチャンネルの道徳の教科書を読む回で、原宿さんが言ってたことを思い出しますね。誰のおかげで飯を食えてると思ってるんだ、どれだけ親に迷惑をかけてるのか自覚してるのか、なんて圧倒的な権力勾配を押し付けられたら、子どもは黙って頭を下げるしかないのよ。

 ただ少なくともノノミにとっては、自分の行動が「わがままなお嬢様」であることを自覚させられる言葉であり、自分がネフティスの呪縛に囚われていることを自覚させられる出来事だった。直後に執事はノノミを人質に取り、総会で売買契約書の無効を宣言するようにと対策委員会を脅迫する。自分という存在が、アビドスに危害をもたらすことになってしまった――

「最初から、アビドスにいてはいけない存在だったんです。」
「どこまで行っても、ネフティスの者ですから。」

 何の犠牲も払わずにいるのはわがまま。ネフティスの人間である自分がアビドス高等学校にいるのはそもそも間違いだった。そんな思いが芽生えたからだろうか、後にノノミはホシノを助けるために退学を宣言する(退部届を提出したホシノと重なる場面ですね)。……子どもに言わせんなよこんなこと。ネフティスの教育はどうなってんだ教育は。

「手段こそ違いましたが、
執事さんもアビドスの復興を願っていたんですよね。」

 救出された後は考え方を変える。彼女はアビドスの衰退に拍車をかけたネフティスに強い義憤を覚えていた。しかし総会での発言を聞き、形はどうであれ、アビドス復興のために尽力していたのだと悟る。

 「ネフティスの人間だからアビドスにいてはならない」のではない。ノノミはホシノとアビドス自治区の未来のために再び立ち上がる。そこには恩知らずなお嬢様なんてどこにもない。周囲の人間のため、そして仲間のために、最善の努力を尽くす少女がいる。ネフティスの呪縛を自ら解き放った。「ゴールドカード」が持つ意味を、自分を取り巻く環境に向き合い続けてきた彼女だからこそ、導くことができた選択だ。

「あっ、私のカード……!?」

 この後の展開でも「ゴールドカード」が重要アイテムとなる。「生徒会の谷」に行くためにはネフティスの権限が必要だった。このカードか、もしくはノノミ自身。ネフティスとの関係を割り切ったが、その意に反してカードは現在スオウに奪われ、悪用されている。身近な例でたとえるなら、クレカを盗まれて大量殺戮兵器を購入されたようなものだ。Part4でも掘り下げられるだろうか。満を持して先生が「大人のカード」を取り出すことになりそう。

 ノノミ、本当に芯が強い子だなって。彼女はアビドスを初めて訪れた当初から、「お嬢様」であること、ネフティス側の人間であることにさまざまな葛藤を抱き、学び、乗り越えながら、今に至るまでホシノを隣で支え続けきた。そう考えると今までの彼女の物語が全然違って見えてきますね。

 

十六夜ノノミ②――「夢だったことにしていれば、苦しまずに済んだのに」

(全部忘れて、ここを去っていれば……)
(ここまで苦しまずに済んだのに……)

 本当に辛かった。ノノミ、あなた"も"そう思ったの……?

(私も……みんなも、)
(……苦しむために、生まれてきたんだ。)
プレナパテス決戦 第3話

 ……こんなこと、決して、決して思いつきたくなかったんですが。アビドスに生まれたことが不幸の始まりなのか。アビドスに留まるから彼女たちは不幸になるのか。そんなことをふと思ってしまった。それほど辛かった。やり場のない怒りを覚えた。幸福を願わずにはいられなかった。涙をこぼさずにはいられなかった。

 ユメ先輩との思い出を全て夢だったことにすれば。ネフティスの人間である私がアビドスに来ていなければ。ホシノ先輩たちの元に留まらなければ。子どもたちにそう思わせてしまうほどに。止まらない砂漠化によって衰退が進み、悪徳が栄える街。膨れ上がった借金。客観的に見れば、こんな街に生徒を残しておくことは、教師としての倫理観が問われてもおかしくない。

 しかし、少なくとも先生の考え方に従えば、

「生徒たちが望まない進路を、強制することはできないよ。」
(カルバノグの兎編1章4話)

 彼女たちが幸福であるか否か、それは外野だけで勝手に判断していいことじゃない。進路先を勝手に決めていいもんじゃない。

「対策委員会で過ごした思い出が、私にとっての世界なんだよ。」

 「ここが私たちの居場所だから」――アニメ版1話後半、「きみたちはどうしてこの学校を守りたいんだ?」という先生からの問いかけに対するシロコの返答。OP曲『青春のアーカイブ』の歌詞でも毎話聴くことになる。

 ここが子どもたちにとってかけがえのない「世界」なのだ。なのに、アビドスにいることは不幸だなどと勝手に断じて、引き剥がすことができようか。

 いわんや、その「世界」を守るために尽力することが、先生として、大人としての責務。その事実を「ここが私たちの居場所だから」という言葉で改めて痛感することができた。……今さらそれを再確認するとは。忸怩たる思いがあります。願わくば、夢だったことにせずとも、笑顔で歩める未来を。

 そして、子どもが苦しまなくていい世界を望んだ人物といえば、

「苦しむために生まれてきた――なんて、思わないで。
そんな事は絶対にないのだから。」
プレナパテス決戦6話

 その面影が今回の物語でも蘇る。


プラナーー終着点のその先へ

左:対策委員会編3章13話
右:プレナパテス決戦3話
上:プレナパテス決戦3話
下:対策委員会編3章16話

 明らかに意図的な演出。地下生活者によるシャーレ爆破事件。先生が無傷で済んだのは、そして、シロコが先生のいる日常を過ごすことができたのは。地下生活者の"視線"を事前に察知できたプラナ、引いては、彼女を託してくれたプレナパテス先生のおかげだ。

「先生が傷付く姿は、もう二度と……。

 「もう二度と」は元いた時間軸での出来事ですかね。プラナ、ずっとそんな心配をしながら一緒にいてくれたのか……いつもありがとうね。

 細かく辻褄を合わせようとすると無理が生じそうなので、まったく同じ経緯での事件が"あちら側"で起きたわけではなさそうですが――少なくとも、ここから捻じれて歪み始めていた可能性は充分あったんだろうなと。想像しただけで背筋が凍る。

 …………これを機に久しぶりにプレナパテスの語りを読み返してみたら、またボロボロに泣いてしまった。ありがとう、もうひとりの先生。あなたは"最終編"を完遂してもなお、また私たちの背中を押してくれた。捻じれて歪んだ先の終着点のその先を、あまねく奇跡の始発点から見える景色を、あなたが紡いでくれた未来を、掴みに行くよ。

 よっしゃ❗ ほな、あとはホシノを連れ戻せば万事解決やな❗😁 がははは――


小鳥遊ホシノ

 強 す ぎ る だ ろ。まさに一人だけの軍隊ワンマン・アーミー防弾盾と散弾銃だけで無人ヘリ数機を叩き落としたかと思えば、その後の快進撃も天井知らず。私募ファンドとカイザーを単独で圧倒。先生が指揮する対策委員会の追跡を振り切る。朝霧スオウとサシで対決。それでもなお彼女の顔に疲弊の色が浮かぶことはなかった。

聞いてねえぞ黒服ァ!!

~~2024/6/25追記~~

対策委員会編2章14話

 冤罪でした。言ってたわ。ごめん黒服……

~~追記、以上~~

 何が恐ろしいって……ヒナも、アズサも、サオリも、ミカも、カンナも、誰もが傷つきながら戦っていたのに、ホシノはかすり傷ひとつすら負ってない。先輩としてとてつもなく頼りになる存在。でも、だからこそ、全てを背負って飛び立っていく。淡々と実行できてしまう。困っている生徒を助けるだとか、ピンチに陥ったホシノ先輩を助けるだとか。そんな都合のいいヒーローになることを許してくれない。もしこのまま放っておけば――

第15話以降、「対策委員会」から「アビドス生徒会」に。
「これは生徒会を自称している小鳥遊ホシノによる、独断の犯行じゃないといけないんだ」とホシノは語る。

 ホシノは対策委員会を離れて、どこまでも遠くに行ってしまう――ホシノ! 行くな! バカ野郎お前! 「うへ〜、おじさんはみんなとまったりしたいんだけどなぁ?」って言ってたろ……!! だけどなぁ? じゃねえ!! そんな消極的な接続詞は認めねぇ!!!! まったりしろ!!!! ここで!!!! みんなと!!!!!

 何が彼女をそこまで駆り立てるのか。ホシノは「列車砲はアビドスにあっちゃいけないんだ」「だから、私が壊す。可愛い後輩たちの、未来を守るために」と語る。その言葉にはやはり、梔子くちなしユメの影響を見出すことができる。

「お祝いの時は、
記念に写真を撮るものだから!」

 入学式でシロコとノノミの写真を撮影したのも、

「不器用なおじさんみたいで、ちょっと可愛いね。」

 「おじさん」という一人称も、

「じゃあ、もしホシノちゃんに後輩ができたら……。」
「何があっても、必ず守ってあげるんだよ?」

 対策委員会みんなを守り続けているのも。

 ユメ先輩が残した足跡を垣間見ることができる。シナリオ読んでる時はパズルのピースが少しずつ埋まっていくような感覚がありましたね。列車砲が鉄軌道上を走り回るようになれば、アビドス全土が危険に晒されてしまう。何としでも食い止めなければならない、確かにそれは事実かもしれない。

 ……しかし違和感を覚える。「これは生徒会長・梔子ユメの意志を継いだ、副生徒会長・小鳥遊ホシノの最後の命令」「ユメ先輩が列車砲の存在を知ったら必ず計画を止めに行く」とホシノは語っていたが……ユメ先輩は「戦って問題を解決しても、それは次の争いの火種になるだけ」「何でも武力で解決するようになったら、いつか自分を見失っちゃうと思うの」とも語っている。

 今のホシノはまさに自分を見失っている状態ではないか。形はどうであれホシノは結果として武力で訴えている。残念ながらそれはユメ先輩の言葉を踏みにじる行動でもある。ダブスタじみた、ジレンマ的な、あるいは皮肉めいた行動に陥っている。

「ホシノ先輩は、列車砲の破壊をユメ会長の意志だと思っているみたいです。」
「えっ、ユメ会長はそんなこと言ってないはずよね?」

 はたしてホシノの行動は本当に「ユメ先輩の意志」なのか? 確かめる術はない。ユメ先輩は還らぬ人になった。そして聞き手側である先生や対策委員会は、ホシノがぽつぽつと語る言葉でしか、ユメ先輩を知ることができないのだから。それでも彼女は進み続ける。対策委員会みんなを守るために。

 信頼できない語り手。アビドスのドン・キホーテ。……まさかホシノに対してそんな印象を抱くことになるとは。侮っていた。その小さな肩に乗る孤独と妄執を。歳月を。

「……たしかに、先生が一緒にいれば状況は違ったかもね。」
「でも、先生は来られない。病院にいるから。」

 そもそも「先生がいないから」という前提があって、ホシノの孤軍奮闘は始まった。しかし総会の後、先生とちらっと顔を合わせた時、彼女が踏み留まることはなかった。列車砲はカイザーの手に渡ってしまったけど、先生と一緒なら解決できるはずだ、だから戻ろう、とはならなかった。

「でも、この苦しみは私の物だから。」

 これは"私の苦しみ"だ。後輩に肩代わりさせてはならない。これは生徒会の問題だ。対策委員会みんなには関係ない。ケジメをつける。過去を清算する。そしてこれまでの経験から、誰にも頼らず自分ひとりで何とかしなきゃいけないと思った――そうした思いもまたあるのだろうか。

 うまく言葉にできないが……少なくとも、先生と協力して事件を解決すれば一件落着、という単純な話ではない。彼女は自分の心に巣食う"何か"と戦い続けている。「あの日」からずっと。

ノノミ:
……シロコちゃんがどこにいるのか、まだ分かっていませんよね?
先輩一人で、一体どうやって探すんですか?

ホシノ:
……。

ノノミ:
彼女の時とは違うんですよ?
シロコちゃんは遭難したわけじゃないんです。

ホシノ:
――同じだよ。

ノノミ:
今は――違いますよ。

最終編2章2話

 ノノミならビシッと言ってくれるだろうか。この時みたいに。話を戻すと、

「……ユメ先輩を殺したのは私なんだ。」

 ホシノはこう語る。ユメ先輩失踪から発見までの経緯はあまり明瞭に語られておらず、まだ謎が残されていそうだが――少なくとも、ホシノ自身は自分がユメ先輩を見殺しにしたと思っている。罪悪感を抱き続けている。頭では自分のせいじゃないとわかっていても。厳しい口調でユメ先輩を叱責してしまった。その直後から行方がわからなくなった。

「これは「色彩」が起こしているのであって、シロコちゃんのせいじゃない。
先生のせいでもなければ、他の誰のせいでもない。」
最終編3章2話

 最終編では過去の行いを悔やむ先生を叱責する場面がありましたが。ホシノ自身がずっと自責の念に駆られているからこその発言だったと思うと、もう、もうね……ホシノ、あなたもまたアベルを殺し、ノドをさすらうカインか。私はこの苦しみを一人で引き受けなければならない。戦わなければならない。そんな自罰的な思いも抱きながら孤独に戦っているいるのだろうか。

ノノミの「(過去に)囚われている」発言について、先生は思うところがありそう。

 私ならやり遂げられるという自信、後輩たちを守る覚悟、執念、贖罪。――小鳥遊ホシノ。その胸中にどれほどの葛藤が渦巻いているのか。想像することしかできない。

 本当にごめん。肝心な時に倒れちゃってて。まずはちゃんと腹割って話そう。ホシノを連れ帰るためにも、そして対策委員会のみんなを不安がらせないためにも。先生として冷静に対処しなければ。


 ……………………うん。

 そう、どんなことが起きても、冷静に対処を…………

 ……………………


 …………ごめん、やっぱ無理そう。だってさ――






「待ってたわ、小鳥遊ホシノ。」
「えっと……たしかゲヘナの風紀委員長ちゃん、だよね?」
「……私の名前は、空崎ヒナよ。」

この激アツ展開には❗❗
問答無用で興奮しちまうだろ❗❗
うおおおおおおおっっ❗❗❗❗


もうひとりの最強

何かと"最強"に縁がありますねヒナ委員長

 まさかの最強VS最強。読み終えた直後にパブサしてみたら例の漫画の画像ばっかりで笑っちゃった。これが『ブルア廻戦 アビドス事変』ですか。実際、最強である先生、キヴォトス最高の神秘であるホシノにいかに対抗するかという敵視点の動向も色濃く描かれているので、あながち間違いではないのかも。

 ……この場面については、雰囲気をぶち壊すような感想になってしまいますね。どうしても中学生マインドを抑えきれない。「ここに聖園ミカと天童アリスを呼んで大乱闘スマッシュシスターズを開催するってのはどうすかァ❗❓」「最強議論スレが加速しちまうなあ❗ さあTier表を作り直す準備だ❗」とか。

 小鳥遊ホシノと空崎ヒナ。実際どっちが勝つんだろ。ホシノがヒナの掃射を防弾盾で防ぎながら突進。懐に潜り込んで得意な白兵戦に持ち込む。迎撃の隙を与えず連撃。それだけで瞬殺できそうだけど。でもヒナもその動きは想定してるだろうし。まあでも勝敗を決することだけが重要な場面じゃないよな。考えるのは野暮か。

 対策委員会編第3章、「エピソード0」「最強どうしの頂上決戦」を同時にやっちゃうのズルすぎる。しかも完璧な演出で。「最終編を読んだ後だと今後のシナリオは見劣りするんじゃないか……?」とか心配してた私、いくら何でも失礼すぎるな。歴代最高クラスの瞬間最大風速でした。


砂狼シロコ

(ふるふる)

 か、かかわいい~~❗❗ えっ出会った頃はこんなにちっちゃかったんだ!? 表情も言動もたどたどしくて余計にかわいい! おやおやシロコちゃん、お腹空いてるのかぁい? じゃあお菓子をあげようねえ😊 おじさんの家に来てくれたらもっと食べさせてあげるよぉ? ぐっへっへっ……

 ……シロコの元気な姿を見れるのは嬉しいよ。本当に。

「すみません。
この子、まだ色々よく分かってなくって……。」

 シロコのアウトローっぷりはこの頃からだった模様。第2章でホシノが置き手紙で「悪い道に逸れちゃったりしないように、支えてあげてほしい」と心配していたのもうなずける。そういえば、第3章でも7話でチェイスした時は「また速くなったね」と言葉をかけていましたね。ずっと隣で成長を見守ってきたんだなって……

 元ネタのエジプト神話でいえば、シロコ(アヌビス)はホシノ(ホルス)が腹違いの兄弟、ノノミ(ネフティス?)が実母だっけ。本当に家族みたいですね。ノノミがアビドス高等学校に籍を置くことにした最後の決め手は、シロコがいたからとの談。守りたいものができた。仲間ができた。「私たちの居場所」ができた。そんな大切な思いがお互いに芽生えたのだろうか。

身体が大きくなっても。変わらない思い。

 来てくれますかね。彼女。プラナも活躍してくれたことだし。でも高望みはしません。せめて元気な姿をほんの少しでも見ることができれば。それだけで嬉しいです。


奥空アヤネ

「……分からず屋のホシノ先輩には、力尽くで理解してもらいます!」
「私、奥空アヤネは――
――生徒会長に立候補します!」

 最ッッッ高にカッコよかった。遠慮して誰かに席を譲るのではなく。消去法で受動的に推薦されるでもなく。自ら立候補する。果敢に突き進む。声高に叫ぶ。変革をもたらす。それが「奥空アヤネ」。

 オルテガの『大衆の反逆』には、「支配とは、握り拳の問題であるよりも、むしろお尻の問題なのである」という言葉がありまして。一度は拳を振り上げたけれど、今の彼女がいればきっと、じっくりと腰を据えて、対話によってまたホシノを迎えることができる。そんな予感を抱かせてくれます。だらしない私を叱ってくれるアヤネASMRがほしいです。


黒見セリカ

 ずっとそのままでいてほしい。あっいや皮肉とかではなくて。何というか……過去も家柄も因縁も関係ない、今の対策委員会を、ホシノが帰るべき日常を最も象徴しているのがセリカであるような気がして。

終着点とは異なる景色を見せてくれた

 この場面で余計に痛感しました。第2章でも真っ先にホシノに「おかえり」を言ったのはセリカだ。バイトお疲れさま。いつもありがとう。また「おかえり」って言おうね。


朝霧スオウ

左目はネフティス、右目はアビドス……考えすぎかもしれませんが。

 ネフティス側の人間を装っていた時は左目だけ。しかし過去が少し明らかになった現在は、眼帯が解けてその右目が映し出される……おめぇ、さては元アビドス関係者だな?

「最強にならなくてはいけない。
……この呪われた地とは、別れを告げて。」

 最強どうしの対決の裏、傷を負いながら最強に挑む一匹狼。あまりにも良すぎる構図。学校に所属しない流れ者、カイザーの傭兵、ネフティスの使い走り、ハイランダーの異邦人、私募ファンドの二重スパイ――はたして自分は何者なのか。長い流浪の旅の末、彼女はついに答えを得る。「あんたと戦うためだ」「アビドスの恐怖と狂気を否定するために、私はここにいる」と。

 何者でもない自分のアイデンティティを、何らかの行為によって担保しようとし、他者を否定し、暴走する。その行為は――

「私の大切な人たちがこんな目に遭っているのに、錠前サオリだけ安穏と過ごしてるなんておかしくない?」
「私が奪われた分だけ、同じように奪われなきゃ不公平でしょ。」
エデン条約編4章7話

 何となく他の生徒に重なる。最初は「仕事人」「双子ちゃんの保護者」「顔がクッッッソ良い」「駅で迷子になった私(幼女)を保護してほしい」「抱かれたい」みたいな第一印象だったけど……むしろ正反対だ。スオウはアビドスを「呪われた地」と形容し、誰よりも屈折した感情をこの地に抱いている。それはどこから来て、どこに向かうのか。しっかりと見届けたい。あわよくば妹になりたい。幸せな家庭を築きたい。


地下生活者

「次は灰猫先生……あなたのターンです。」

 お前ふっざけんなよ。何がターン制だよ。お前がやってんのは先行1ターン目で長時間ソリティアして、6妨害構えた後でふんぞり返って「ターン終了です。どうぞ」つってんのと同じだろうが。

攻略法
1つ目「既に起きた出来事は変えられない」
2つ目「肉体には物理的な限界がある」
3つ目「心は予測も制御もできない」
4つ目「小さな傷が致命傷となる」

 しかも環境デッキ(先生)に対するメタ戦術を積みまくったあげく、安全圏(混沌の領域)にこもるメタビート系対話拒否デッキじゃねえか。楽しいかよそんなデッキ使って勝ってよお❗❓ ……いや否定はしないけどさ。自由なプレイスタイルが担保されてしかるべきだもんな。でも。でもさ。お前とTCGやるの息苦しいよ……

「六つ目の古則、「非有の真実は真実であるか」
その答えを、導きたまえ――!」

 古則の六つ目が出てきましたね。実在と非実在、もとい「フィクション」は『百花繚乱編』第1章でもテーマになっていた。浅学にして今のところ思い当たることはありませんが……今後深く掘り下げられていきそう。頭の片隅に入れておきます。


味方になってくれた後は大活躍でしたね。
私はヒカリ派です。

 以上、雑文で恐縮ですがPart1~3の感想でした。いやもうなんか……言葉では言い表せない凄まじさがありますね。物語の物量と密度はもちろんですが、今回のシナリオでアビドス生徒全員に対する印象が変わりました。「ネフティスのお嬢さん」として葛藤を抱いていたノノミ。どこまでも突き進んでいくホシノ。ちっちゃい身体から立派に成長を遂げたシロコ。新生徒会長として奮闘するアヤネ。「おかえり」というたった一言に救いを感じさせてくれるセリカ。どれも驚きを覚えると同時に、納得できるものがありました。

 私が対策委員会編を読んだのは約1年半前。時と共に変わっていく彼女たちの姿を実感できる。良くも悪くも。成長を感じさせると同時に、時の流れが残酷であることも。そうであればこそ、この「日常」が愛おしいと思えた。なんかちょっぴり寂しい気もしますけどね。

 そして、物語はついに爆心地グラウンド・ゼロへ。アビドスを流れ行く者たちはどこに辿り着くのか。正直かなり戦々恐々としていますが、それ以上に――

「またいつか、似たような問題が起きた時も、
ユメ会長の背中を追って一人で解決しようとすると思うんです。」
「これは、私たちで何とかするしかありません。」

 ホシノの選択に対する、対策委員会や先生のアンサーに期待が高まります。それではまたPart4で。

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