第20回「にじさんじのB級バラエティ(仮)」の問題点と今後に期待すること

 「にじさんじのB級バラエティ(仮)」のゆるっとした雰囲気が好きだ。毎回欠かさず見ている。だからこそ、今回の不誠実な放送内容には失望した。
 そして同時に、私が「にじバラ」に惹かれる理由を再認識することができた。ライバーおよび番組制作陣には反省を踏まえた上で、今後は安心して楽しめる番組を提供してほしい。それが私の切なる願いだ。

 以下、個人的な意見ではあるが、第20回「にじバラ」の問題点や、番組に今後期待することをまとめる。

(※本記事は特定のライバーを貶めるためのものではなく、番組の今後に期待する意図を込めたものです。とはいえ不快に思われる方もいると思うので、ご注意ください)


問題点① 紹介している商品を貶める発言

 問題点は2つ。

 1つ目は「紹介している商品を貶める発言があった」ことだ。

 麩菓子は駄菓子のイメージが強い。しかし、今後は駄菓子というジャンルを超えて、贈答品やギフトとしての可能性も広げていきたい。そのために手間暇かけて作っている——社長からそんな誠実な思いが語られた後、とあるライバーから「でも正直マカロン欲しいけどね」という発言が行われた。(18:42〜)。
 直前には「マジで頑張って作ってる感感じるわ」ときちんと称賛も送っているが、締めの一言がこれでは台無しだ。他の食品と比べて、落とす。製作者の誠実な思いを踏みにじるようなこの発言は、さすがに不快感を覚えた。

 これとは違い、感性の尖った食品やコンテンツに辛口コメントを付ける、という体裁なら(※場合によるが)笑って見ることができる。
 たとえば第10回。とある味のばかうけが紹介された場面だ(17:13〜)。これは「過去の商品でもダントツに売れなかった失敗作」として紹介されており、製造元からは失敗した理由が赤裸々に語られていた。台本には「美味しくなかったら素直に美味しくないって言ってよし」と書かれていたとのこと。
 無論、だからといってボロクソに貶していいわけではない。「伊藤さん(担当者)の味覚が人と違ったんかな?」というコメントにはすかさず「やめてそれ! 使いづらいから!」としっかりツッコミを入れていた。だから安心して見ることができた。

 麩菓子はそうではない。軽んじて扱っていい場面ではないし、フォローもなかった。こうした言動は少なくとも、にじんさんじの「顔」の一つである公式番組では控えるべきだろう。


問題点② VTRをガン無視して無関係な話題を広げる

 2つ目は「VTRをガン無視して無関係な話題を広げていた」ことだ。

 「今日めっちゃ真面目な回じゃん」という発言から番組の話に広がったり、水をこぼしてわちゃわちゃしたり(10:21〜)。これにも引っかかりを覚えたが……問題は麩の唐揚げを紹介している場面だ。
 専務自らが調理し、工程を丁寧に解説している。そのVTRを一切見ず、全く関係ないドラマに話を広げた(21:28〜)。さすがにカンペが入り、ゲスト陣もVTRに集中している姿勢を見せた。しかし、「半沢○樹のことしか頭にないんだけど」と発言し、なおも二人でその話題を続ける。
 実に約2分間。いやさすがに長いて。これも問題点①と同様、製作者の誠実な思いを踏みにじるものであると感じた。

 今までのにじバラでもVTR中に雑談する場面は多々あったが、ここまでひどいものはなかった。多少の雑談なら「リビングでお茶をすすり、おせんべいをかじりながらのんびり観てる感」があって心が和む。しかし、それが過剰になればノイズになってしまうだけだ。

 以上2点が、私の感じた問題点だ。

 これは当該ライバーや止めなかったMCにはもちろん問題がある。そして、このまま放送していいと判断した番組制作陣にも問題がある。素人意見だが、ミュート、ピー音、テロップなどを駆使すれば多少なりともごまかすことができたのではないだろうか。少なくとも、「↓見てる」「↑見てない」とテロップを入れる以外にできることは確実にあった。 特定の誰かだけを責めるつもりはないが、やはりどこかのタイミングで止めることはできたのではないか。そう思わずにはいられない。


「にじバラ」の魅力——作り手達の情熱、B級ならではの肩肘張らずに楽しめる雰囲気

 話は少し変わるが、同じくにじさんじ所属ライバーである鈴木勝は、放送後にこのようなツイートをしていた。動画のコメント欄では彼と同じように、地元民が心温まる応援コメントを残している。

 今までの「にじバラ」でも地方の食品をクローズアップする回があった。たとえば第16回のアイスクリーム回だ。ほやアイス、フカヒレアイス、焼きそばアイス、わさびアイス、納豆アイス……など、風変わりなアイスクリームを販売しているお店が紹介されている。
 なぜこのようなアイスクリームを販売しているのか? それはお米のアイスを作っているうちに、各自治体から「ウチの食材でも作れないか?」という話が届いたことがきっかけなのだという。さらに、ほやアイスは「震災の風評被害でほやが捨てられる状態になっていた。少しでも消費拡大に繋げることができれば」という思いがあったのだという。
 地方振興を真剣に考え、情熱を注いで商品開発に取り組むその真摯な姿勢が、私は今でも印象に残っている。

 振り返ってみれば、「にじバラ」はそうした「作り手達の情熱」が感じられる回がいくつもあった。一見するとバカバカしく思える商品でも、今まで自分が知らなかった食品でも、そこには確かに作り手達の情熱があり、時にはそれを応援する地元民の姿もあった。

 そして、こうした内容をニュースやドキュメンタリーとしてではなく、「B級バラエティ」として肩肘張らずに見れる雰囲気が心地よかった。酒を呑みながら視聴し、大いに笑い、自分が知らなかった世界を発見し、時にほろっとさせられるギャップ。それこそが、私が「にじバラ」に感じている魅力なのだ。

 それが「作り手達の情熱を軽んじるB級バラエティ」として最悪の形で裏目に出たのが今回だ。多少のイジリはB級のノリで楽しめるが、作り手達の情熱が伝わる場面では、それ相応の誠実な姿勢を見せてほしいと私は思う。


今後に期待すること

取材先の関係各所に迷惑をかけるような無遠慮な言動は控えること(真っ当な商品を過度に貶めるような発言、無関係な話題でVTRを無視するなど)

 文字にすれば至極真っ当なことだが……私自身も「人の振り見て我が振り直せ」の機会となった。

 現在最前線で活躍しているライバーが、過去には炎上していた、配慮に欠ける言動で不況を買ったことがある、というのは珍しくない話だ(あえて詳しくは言及しないが第20回のゲストはまさしくそう)。過去の失敗から学び、より面白い配信を目指す。そんな姿勢を「にじバラ」にも求めたい。プロレス芸やイジリ芸は、相手への配慮があってこそ成り立つものだ。

 「にじバラ」によれば、にじさんじチョコの企画担当者の方は御伽原江良推し(第4回)。にじさんじxばかうけコラボも、担当者の方はSMC組が特に好きで、デフォルメシールの原案を出したのだという(第10回)。企業側からのそうした好意を裏切ってほしくない。他ならぬ私も、にじさんじという箱が大好きなのだから。


最後に(B級とは何か?)

 最後に、B級繋がりでひとつ。B級映画の配給会社として有名なアサイラムのインタビュー記事から引用する。

ベールズ:少し付け加えると、アサイラムの映画はビール片手にくつろいで楽しむ映画だということ。疲れて仕事から帰り、ただただゆっくりしたい時にビールを飲みながら、大いに楽しんで、深く考えずに済む映画なんだ。
引用元:「日本以外の国では嫌われてるんだ!」あの『シャークネード』を生んだアサイラム社のトップに突撃インタビュー!! - BANGER!!!

 そう、「B級」はビール片手にくつろいで楽しめてこそだ。今回のようにモヤモヤしてしまうような内容では、ビールがまずくなってしまうばかりだ。

 B級ならではの面白さがあること、B級とはいえ許されないラインがあること。それをライバーおよび番組制作陣は、私みたいな素人なんかより深く理解できるだろう。私はこれからも、酒を呑みながら「にじバラ」を見れる日を楽しみにしたいと思う。みなさま〜(酒池肉林)