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浴衣と赤い石

夏の終わりの花火大会

暑い暑い夏でしたね。
そんな夏も気づけば過ぎ去り、虫の声が心地よい秋が訪れました。
今朝は窓からの風が気持ちよくて、つい二度寝しそうでした(笑)
今日はそんな夏の終わりにぴったりな胸キュンストーリーをお届けします。

赤いガーネットのお話です。

【こんなシーンでつけてほしい☆妄想ストーリー】

それは夏休みの終わり。

その日の朝、リビングを行ったり来たりする母の姿があった。
「えーっと、たしかあそこにあったはず・・」

私は冷蔵庫から取り出したジュースをコップに注ぎながら、その様子を見ていた。
「ママ、さっきから何やってるの?」
母は私の問いかけには答えず、「あ!」と何かを思い出したように部屋を出ていった。

すぐに戻ってくると
「やっと見つけた~。どこに仕舞ったか忘れてた。」
「それ、どうしたの?」
母はふふっと笑うと、ソファーに置いていた布を広げる。
それは、濃紺に赤い金魚の柄の浴衣だった。

「今日はお祭りに行くって言ってたでしょ?だから、良かったら浴衣を着て行かないかなーって」
「え?!それで探してくれてたの?」
「うん」
母は嬉しそうに頷いた。

夕方、母に浴衣を着せてもらい、髪をアップにしてもらった。
「よしよし。これで、どんな男の子もノックアウトね。」
母のドヤ顔に笑いながら、小さくありがとうとつぶやく。

「あ、そうそう。これもつけて行って。」
そう言って、母は私の左手に華奢なブレスレットをつけてくれた。

私は左手を目の前にあげて、ゆらゆらと揺れるそれを見つめた。
赤い小さな石が連なったチェーンブレス。

「かわいい。いいの?」
「うん。ガーネットっていう石のブレスレット。」
「へー、ガーネット。きれい。」

「それね、亡くなったおばあちゃんが持ってたネックレスをブレスレットに仕立て直してもらったの。」
「え?!そうなの?」

ふとリビングにある祖母の写真に目をやる。
「おばあちゃん、ガーネットが誕生石だったから。」
「そっか。」

「ガーネットって誠実という意味を持っていて、大切な人との絆を強くしてくれるって言われてるの。」
「そうなんだ。」
「守ってくれる石でもあるから、もし大切にしたい人が出来たら、ガーネットにお願いするといいよ。」
「!」
母の言葉に一瞬ドキリとする。

私はそそくさと下駄をはきながら
「じゃ、行ってくるね。」と玄関を出た。

待ち合わせの駅は、お祭りに来ている人でごった返していた。

改札の向こうに柱にもたれた彼の姿。
そっと左手のブレスレットに触れてみる。
(どうか、この人が私の大切な人となってくれますように。。)

下駄を鳴らしながら、彼へと近づく。

「待った?」
声をかけると彼が振り向いた。

一瞬、私を見て驚いた顔をする。
「あ、浴衣。・・・えっと。」
数秒の沈黙。
「似合ってるね。可愛い。」
耳まで赤くした彼がぼそっとつぶやいた。

私は心の中でガッツポーズ!
(ママ!ありがとう!)

「じゃ、行こっか。」
彼と並んで人込みの中を歩きだした。
そっと差し出された手を躊躇いながらとると、柔らかく握り返される。
その左手には赤いブレスが煌めきながら揺れていた。

end


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