見出し画像

抗がん剤点滴ラストの日(ふりかえり卵巣がん日記 #80)

大きな障害もなく抗がん剤治療後半戦も進み、ついにラスト、6回目の点滴予定日になりました。今回はそのあたりの話をしますが、その前に。
前回書いた「後半の副作用」にひとつ書き忘れたので付け足しておきます。

5回目点滴の後、肝臓の数値が悪くなり、肝機能を改善するための薬(「ウルソ」って薬でした)が処方され、1ヶ月くらい毎日飲みました(幸い6回目投与後の検診では数値が落ち着きました)。

ラスト点滴前の診察で

さてさて6回目点滴予定当日の診察です。血液検査の結果、白血球の数値は1062でした。
3回目の点滴前に空振りが続いた時は白血球1209でもアウトだったので(1500以下は赤信号でした)「今週はできないか...」と思いきや、OKとのこと。あら、いいんですか?と担当ドクターに聞くと...

「今回は、数値の上がり具合を前回と比較すると、回復傾向にあると思えるので大丈夫という判断です」と。たしかに空振り続きの時は、数値がずーっと低いままでした。今回は1500には届かずとも、1週間前に比べたら白血球はググッと増えてる。

そして、今回が点滴最終回なのも理由の1つとのことで...
「点滴3回目の時に見送ったのは、その後まだ何回も治療が控えていましたから。そこで無理してしまい、その後続けられなくなるのは困りますのでね」とのこと。要するに考え方としては「もう、これラストだから、今やっちゃいましょう。後は回復するのを待てばいいだけなんで、そこはノンビリと」ってことですね。

さらに他の数値を見ると、血小板や赤血球もグッと増えてる。それも「OK」の目安のひとつになるそうです。前後と全体を見て判断するんですね。

ドクターは「うずらさんが『この数値でやるの心配』ということなら、来週まで待ってもいいんですよ」とも。いえいえ、私も早く済ませたいし、ドクターの意見(A先生にも相談して決めたとのこと)を信頼してやることにしました。

ちなみに、この時のドクター(毎回違う研修医のセンセー)は、点滴初回の入院時にサブドクターだったP先生でした。顔なじみ...ってほどじゃないけど面識はあるし、丁寧に説明してくれるP先生に安心感もあり、思い切って本音をぶつけてみました。

「あのー先生、ラストだし薬の量を前に戻して(増やして)やる、っていうのはどうでしょう?」と聞いたんです。この後は休めばいいだけだし「どうです、ここは一発ガツンと!」みたいな提案をしてみました。薬を減らしたことがちょっと物足りないような気もしていたんですね。「いっぱいやったほうが効くだろうに」というか。副作用が極端に重いわけでもなかったので、こんなこと言っちゃったわけですが。

するとP先生は笑いながら「ああ、お気持ちは分かります」と。でも...と続けて

「昔は抗がん剤って、毎日投与してたこともあるんです。そうやってバンバン入れてた結果、それで命を落とす方までいた。うずらさんの場合、薬の量を減らした後から、白血球も回復するようになってますよね。この量がうずらさんに合っているんだと思います。体を痛めて無理に投与するよりも、体に合った量を投与するほうが効果的というのが今の考え方なんです。」と。そして、この後また何らかの治療を続けることになっても、その時に体を壊してたらそれもできないとも。「元気じゃないと、抗がん剤もできないんですよ」とP先生。

「なるほど〜」と、この説明に納得しました(この後、また抗がん剤をやる事態には、できれば巡り会いたくはないけれど...)。P先生、説明も上手だし、ちゃんと患者に向き合ってくれる。いい先生だなぁと思っているとP先生のほうから
「うずらさんとは、入院の時にお会いしましたね」と。おっ、せんせー覚えててくれたのね。
「はい!そうです、お世話になりました。ここまであっという間でした」と言うと
「そう言ってもらえて、よかったです」と穏やかな口調で返してくださった。

ドクターにグッと親しみがわくのって、こういうちょっとしたやりとりでだったりします。研修医でもP先生、H先生のような信頼できるドクターもいれば、やや難あり(個人の感覚です)な方もいましたっけ。いろいろだったな...

「ファーストクラス」よ、お世話になりました

そして「私のファーストクラス」=点滴室へ行くと、担当の看護師さんも最初にここで会った看護師さん(「うずらさんって画家さんなんですよねー!すごいですね!」と言ってくれた)Sさんでした。Sさん、変わらぬ明るい調子でニコニコと
「うずらさん、今日で最後ですね。そういえば、最初の時も私が担当でした。これも運命ですね!」と。Sさん、運命って(笑)。言葉が毎回ちょいオーバーだけど、やっぱりなんか嬉しい。あー今日はP先生といいSさんといい、優しい人たちが担当で幸せ。「終わりよければすべてよし」って言葉は「そんな都合良くテキトーな...」と、私の辞書にはありませんでしたが、この日ばかりは「まぁいっか。今日は採用!」って思いました。

点滴の準備をしながらSさんは「これからインフルエンザとか感染症のシーズンだから。うずらさん、その前に終ってよかったですね!」とも。

そして最終回まで毎回、点滴の針がスムーズに入ったことも「ラッキーでしたね。うずらさんは血管が丈夫でよかった!」と言ってくださる。あぁ、ラッキーの重ね盛り...Sさん、ありがとう(涙)。Sさんは、きっとどんな患者さんにもこうやって「大丈夫!OKですよ、ラッキーです!」と、良い要素を見つけては伝えてるんだろうな(まさに天使…)。

こうやって、最後の点滴も無事に終わりました。これが12月初旬。ほんと、すべりこみでインフルエンザシーズン本格到来の前だわ、よかったよかった..いや、まさかこの3ヶ月後にはコロナで世の中が一変するなんて。当然のことながらこの時は思いもしないことでした。(つづく)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?