見出し画像

治療中のお楽しみイベントー後編(ふりかえり卵巣がん日記 #77)

前回に引き続き。治療中のお楽しみふたつ目は、水戸への日帰り旅でした。いえ、旅ってほどではないんですが...展覧会を見に行ったのです。

「ビル景」を見に

2019年7〜10月、水戸芸術館で大竹伸朗の大規模な展覧会「ビル景」が開催されました。私が大竹伸朗の作品をまとめて見たのは2006年の東京都現代美術館が最後かな...「ビル景」は熊本と水戸のみの開催、東京ではやってくれない。すごく熱心なファンというわけではなかったのですが「久しぶりの展覧会だし、タイミングが合えば行きたいな」と思っていました。

気に留めながら治療を続け、そうこうするうち展覧会の最終週になりました。この時が3クール目の不調からちょうど抜け出たタイミングだったので「うん、大丈夫そうだな」と出かけることにしました。

恋も2度目なら〜♪(分る方は同年代かしら)じゃないけど、点滴も2クール完了すれば、自分がどんな経過をたどるか、だいたい把握できるものです。私の場合、点滴から1週間くらい続く不調期を抜けた後はほぼ普段どおりの生活を送れていたので、極端な無理を強いることじゃなければ大丈夫だろうと。

「やったー!久しぶりのプチ遠出!」と、ワクワクしながらプランを立てました。そういえば、水戸って意識していくのは初めてかも(母が栃木県出身なので、たぶん祖父母のところに遊びに行くついでなどで立ち寄ってる気はしますが)。ライトな鉄子でもある私、特急じゃなくあえて鈍行で行ってみる?なんても思いましたが、ここは順当にバスで行くことにしました。東京駅発の「みと号」は美術館にほぼ直通だし、なにしろ安い!よしよし...予約したほうがいいかな?などと、交通手段を調べるだけでもウキウキでした。

遠足当日は快晴、バスの高い視点から見渡す隅田川や荒川沿いの眺め、スカッと開けた空にも心踊りながら水戸に到着。リサーチ済みの美術館近くのイタリアンレストランでランチを食べてからゆっくり展覧会を見ました。

展覧会は想像をはるかに越えて素晴らしかったです。そして意外なほど空いていました。水戸なんて東京からすぐだし、平日の昼間と言えど普通に混雑してるだろうと思いきや、ほぼ貸切状態でした。広々したスペースで巨大キャンバスと好きなだけ向き合える贅沢さよ...。何室もある展示会場をあっち行ったりこっち行ったり、好きなペースで思う存分堪能できました。途中、美術館内のカフェで休憩したけど、昼過ぎから夕方まで、ずっと絵を見て過ごしました。

帰りもバスで、帰宅したのはたしか夜8時か9時くらい、その夜は興奮して(絵の余韻で)なかなか眠れませんでした。で、翌日はさすがにちょっと疲れが出ました。展覧会会場ではテンション上がって立ちっぱなしでも元気だったけど...。もっとも、体調が悪くなったわけでもなく、気持ちはむしろサッパリと元気で「見に行って本当によかった!」と思いました。

翌々日も体調に問題なかったので「これなら...」と、3日後にほぼ同じコースを繰り返す感じで水戸を再訪しました。それくらい展覧会が良かったのです。「あの絵の数々を同じ環境、形で見れる機会は今回だけ」と思うと、居ても立ってもいられない。感動は一期一会ですよね。私は「ファン体質」で、好きになるとトコトン!なのです。気に入った映画を見に短期間に何回も映画館へ通うタイプと言いましょうか。

ファン気質がモリモリと湧き上がってくるのを感じて「あー、私らしいなぁ(笑)」と、そして病気に阻まれずにそれを実行できたのが嬉しく「こうやって過ごしていけば大丈夫!」とちょっぴり自分を心強く思ったのでした。

味覚も戻ってきたし…

ついでにもうひとつ、イベントってほどじゃないけどおまけで。
カウンターでひとり、お寿司を食べたのも楽しい記憶です。(ひとりで「あなごください」なんて初めてのことだから、これも立派なイベントかな?...と言っても、回転寿司に毛の生えた程度のチェーン店で、ですけど)

これは水戸に行く前のこと。「味覚が戻ってきた!」になった日、点滴から6日目でした。いつも使っているカフェで過ごした帰り道「そうだ、このタイミングでお寿司食べちゃおうかな」とフト思い立ち、ぱぱっと検索して目星をつけたお店に行きました。

味覚が戻った!から数日経つと白血球がグーッと減る流れになりますね。「白血球減少時はナマモノは控えめに」が原則ではありますが(抵抗力弱ってる時は感染症になりやすいから)ドクターの口調も「いちおう気をつけてください(そんなに厳密な話じゃないですけど)」って感じだし(あくまで私の受け取り方ですが)ネットを見ても私のようなケースではさほど気にしなくてもよさそうと思い(あ、これ自己判断です。参考にはしないでくださいね)厳重に避けたりしませんでした。でも「 あえてそのタイミングで生魚をモリモリ食べずとも」くらいには気にしてたので、「あと何日かでナマモノはダメか...今がお寿司チャンス!」とタイミングの良さに感謝しつつ暖簾をくぐりました。

普通にサラリーマンがランチに来るような敷居の低いお店でしたが、握りたてのお寿司はとーっても美味しかったです。普段は食事も倹約を心がける私ですが、病気だと自分に甘くなりますね、大盤振る舞い(ってほどお高くなかったけど)しちゃいました。

その夜は「あーお寿司幸せだったな、おいしかったな」と寝る前に反芻し、「次はまた別のお寿司屋に行きたいな〜近所にいいお店あるかな?」と軽い気持ちで検索し始めたら止まらない、気付いたら2時間近くスマホでひたすらお寿司情報を見続けていました。あらら...食への渇望はこうやって続いておりました。(つづく)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?