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白血球が増えないのって、もしかして(ふりかえり卵巣がん日記 #71)

がん相談支援センターのCさんの言葉を思い出してはクヨクヨしないように、あれこれ気に病みすぎないように...と心がけていた空振りタイム。それでもさすがに3回目の空振りは辛かった。今日はそんなお話です。

お酒はダメだったのかな?

白血球が苦戦するなか、じつはひとつ引っかかってることがありました。
1回目投与後のカレーのように、後になってから「あれダメだったの?」と混乱したアイテム、お酒のことです。
2回目投与後にビールを飲んだんですよね...と言っても家で小さい缶(250ml)を1本だけですが。
私はお酒が好きで、治療前は毎日の晩酌が習慣でした。食事とともにビール(350ml)2缶が定番。アルコールに強い体質なので、ビールの後にワインや日本酒などを追加して多めに飲んだところで酔うこともなく、二日酔いとも縁がありませんでした。ビールなんて水と同じ、という感覚だったのです。だからお昼ご飯時からプシュッといっちゃうこともしばしば(飲んでもフツーに仕事できるので)。それくらいお酒と仲良しの生活を送っていました。

こんな調子なので、無事に2回目投与が終わり、やれやれとほっとしたところで「今日も暑かったねー、おつかれさま!」とお風呂上りに一人乾杯したのです。「また明日くらいから味わからなくなっちゃうかもしれないしね...今日のうちにおいしいものを味わっておこう」とも思った。「療養計画書」にも「食事についての注意はありません」と書かれていたし「お酒って飲んでいいの?」という疑問すら頭をよぎりませんでした。(もっとも普段より小さめサイズを買っているあたり、少し意識してる気配はありますが)

おいしくビールを飲んで、それで体調が悪くなるなんてこともなく、前回の投与時と同じペースを踏襲して生活を続けるなか、数日たってからふと「そういえば、あのときビール飲んじゃったけどよかったのかな?」の思いがチラリと浮かびました。この時は一瞬でそのまま忘れちゃったんですが、空振りが続くなか再び「待てよ、もしかしてあのときのビールがいけなかった?」と気になりだしました。計画書の「注意はありません」は、言外に「とうぜんお酒はダメに決まってます」という意味だったの?

急に不安になって、ネットで調べてみると「抗がん剤治療中のお酒OKか否か」について、はっきりとした結論は見つけられませんでした。あくまでも常識的な一般論として「お酒は控えてください」のような記述が多かったけど、「リラックスするために多少なら」と言ってるサイトもある。
「薬による」とも書いてあるので、私が使っているそれぞれの薬とお酒について検索してみてもやっぱり具体的な回答には行き着かない。

うーん...これにはずいぶんモヤモヤしました。食事や睡眠に過剰に神経質になるわりに、こういうポカをやっちゃうのも私らしいっちゃ私らしいけどね...いや、そうノンキに構える気にもならないよ...「アルコールが悪さして白血球が増えないのかな?」と思うと、いたたまれない気持ちでした。(ちなみに「アルコールと抗がん剤の因果関係」はその後も時々ネットで調べたりしましたが、未だ明快な答えが見つからず「?」のままです。)

抗がん剤にくわしい看護師Sさん

このモヤモヤ、がっくりのピークはやはり3回目空振りの血液検査結果が出たときでした。前回よりさらに白血球値が下がっている...。これでますます不安が増長されました。

「さらに数値が下がるなんて...このまま増えなかったらどうしましょう」とドクターに漏らすと、このドクター(初めて会う若い男性ドクター)は「あー、もし次回も上がらなかったら(抗がん剤は)中止ッスね〜」と私の顔も見ず軽くおっしゃった。これがマンガなら、私の頭の上に「ガーン」という文字が出てくるところですが...ちょ、ちょっとセンセイ、患者のハートはガラスのハートなのに、その言い方はあまりにひどいんじゃ....

悪口ついでにもうちょと続けさせてもらうと、このドクター、口調だけでなく態度全般が唖然とするほど「なっとらん!」でした。プリンターの調子が悪いのを「チッ」と舌打ち...はさすがにしなかったけど、そんな態度とともにプリンターを思い切り「ガン!!」とこぶしで叩いて診察室に大きな音を響かせたり。
ひ、ひどい...今までずっと良いドクターに恵まれてきたけど、研修医にはこんなのもいるのか...ああ神様、どうかコイツがこのまま医者になったりしませんように...と思わず心の中で祈ってしまいました。後味の悪さとともに病室を出ると、さっきまでドクターの後ろで控えてやりとりを見ていた看護師さんが追いかけてきて「大丈夫ですか?」と。

この看護師さんSさんは「以前、うずらさん看護相談受けられてますよね。それは治療や生活全般のことだったと思うのですが、私は特に抗がん剤、化学療法に関することで相談に乗っていますので」と自己紹介してくれ、「いかがですか、なにか不安なことがあれば、時間をとってお話うかがいます」と言ってくれました。
Sさん、さきほどのバッドドクターの態度を「ちょっと!先生...!」という目で見てましたっけ。そして私の落ち込む様子が心配になって声をかけてくれたようでした。ウウッ、心が弱ってる時になんてありがたい...溺れてずぶ濡れで陸にあがったところにタオルをかけてもらったようです。「ありがとうございます、今お話できますか?」と、そのままSさんに個室で話を聞いてもらいました。

Sさんに「このまま中断になってしまうのかもと思うと不安です」と伝えると「ちょっと待っててくださいね、A先生に聞いてみます」と、主治医のA先生に確認しに行ってくれました。そう、抗がん剤に関してはずっと研修医が担当で、A先生に相談できないのも心配の種のひとつでした。
Sさんは戻ってくると「来週もできないなんてことはないんじゃないかなとA先生おっしゃってます。きっと大丈夫ですよ」と。

そう聞いて少しほっとして「私、がんばって時間作って寝てるんですよ〜。ご飯もちゃんと食べてるのに」とダダっ子モードで訴えました。Sさんは「うーん、何かすれば白血球が増える、ってことがあれば本当にそうしたいところなんですが...こればっかりは仕方ないんですよ」と。はい、そうですよね...わかってます。
でも、これまでもいろんなシーンでそうだったように「どうしようもない」「わかっちゃいるけど」のことでも、それを看護師さんやドクターあるいはソーシャルワーカーさんと共有できると、それだけでもずいぶん気持ちが落ち着くのでした。Sさん、ありがとうございます。

で、この時Sさんに「ビール飲んじゃったんですけど」は言えませんでした。もしそれが本当にダメージのあることだったら、救いようもないほど落ち込んでしまいそうで怖くて言えなかった。そしてビールの一件はこのままずっと、看護師さんにもドクターにも内緒にしたままでした。このnoteで初めての告白です(笑)。(なので、私の白血球苦戦はお酒のせい?も不明なままです。)

思いがけずSさんに助けてもらえたのがラッキーの兆候だったのか、なんとか翌週には3回目投与ができました。そしてこの一件に恐れ入って、それ以降半年近く、治療が続く間はアルコールは一切飲みませんでした。いや、もう怖くて、さすがの私も飲もうって気にはなりませんでした。夏だったしね、ビールのおいしい季節にグビーッといきたい気持ちだけは健在でしたが...そこは炭酸水やノンアルコールビールに頼ってやり過ごしました。(つづく)

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