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「これで治療は終わりです」(ふりかえり卵巣がん日記 #81)

そろそろジ・エンド

予定していた6回の抗がん剤点滴すべてが終わり、後はゆっくり体調の回復を待つこととなりました。年末年始を挟むタイミングで、診察スケジュールはこんな感じでした。

12/3 抗がん剤点滴ラスト
12/17 恒例「ほぼ」10日後検診(この時は14日後ですね)& CT検査
12/24 A先生診察
1/14   A先生診察

通院が続きましたね。ラスト6回目点滴後の体調の推移は前回、前々回とほぼ同じ。ただ、不調期を超えだんだん元気になるにつれ、この時は特にキラキラと明るい気持ちになっていきました。抗がん剤治療終わった(たぶん。CT検査結果を見ないうちは確定じゃないけど)という開放感が少なからずあったのだと思います。
白血球数値もガクッと下がったあとは、順調に回復しました。

付け加えると、この明るい気分の中には野に放たれた家畜のような、いや猫のような?...んー?例えがヘタですね。よーするに家でヌクヌクと過ごしていたのに「さあ、これからはどうぞ、外で思いっきり羽を伸ばしてください!」といきなり放り出された小動物のような…ちょっとした戸惑いの感覚もブレンドされてました。

いよいよ「おさぼり公認期間」もジ・エンドに近づきつつあります。「あぁ名残惜しい、まだまだサボりたりないぞ、もっともっとサボりたい!」って、これけっこう正直な気持ちでした。でもそれと同時に、同業者の友人たちの活躍ぶりや仕事を目にしては「いつまでもノンビリしてるわけにはいかぬ」というじりじりした焦りもあり。いろんな思いが交差していました。

A先生、お久しぶりです!

そんなこんなで、A先生の診察日になりました。折り返し点での診察が台風でとんじゃったので、A先生に会うのは5ヶ月ぶり。お久しぶりです!

ここはじゃれつく犬と冷静な飼い主のような...気分だけはすっかり元気で前のめり気味の私と、いつもどおりクールなA先生。CT検査の結果も問題なく、A先生の口から「これで治療はすべて終わりです」と聞いた時は目の前がパッと開けたような嬉しさがありました。相手がドクターじゃなければハイタッチでもしたいくらい(ノリのいいドクターなら付き合ってくれそうな気もしますが)。

嬉しさを抑えきれずに「せっ、先生!お酒ってもう飲んでもいいですか?」と質問したところ(久しぶりの診察で最初にした質問がこれって...)A先生、表情を変えずに淡々と「まぁ...少しずつなら」と。「やー年末ですしね!」とにやける私をスルーして、次の診察はまた年明けすぐに、とあくまでもクールなA先生でした。「やれやれ..」という感じだったのではなかろうか。

夢にまで見たこの1杯

そう、診察がマメに続くように、治療は終わったといえどもまだまだ当分は油断できない時期なのです。この先、また異変があるかもしれない可能性は十分ある。

わかっちゃいるけど…でも、この時はうかれてました。当時の日記を読み返すと「病院の出口に向かいながら『わーっ!』とか『キャー!』と叫びたい気持ち」などと書いています。…このはしゃぎっぷり、我ながら恥ずかしい。もちろん叫びはしなかったけれど、帰り道はウキウキと大好きなパティシエ・シマでチーズケーキ、スーパーではワインとチキンも買い(そう、この日はクリスマスイブでした)ささやかながら一人お祝いすることにしました。

ついにお酒解禁...万感の思いとともにグラスに注いだワイン。どんなにこの瞬間を待ち焦がれていたことか。でも…この時のワインの味は全く覚えていません。あれ?あぁ、夢にまで見た1杯なのに!五臓六腑にしみわたる感激はいかほどかと思いきや...手術後から数えたら、お酒を遠ざけてた時期はほぼ半年。このブランク中にすっかりお酒が弱くなってしまい、あまりおいしく感じられなかったのでした。がっくり、残念。
でもまぁ、このおかげもあって年末年始だからってハメを外すこともなく(もっとも、まだまだ体調そのものも万全じゃないし)いつもどおり落ち着いて過ごすことができました。

そして年が明けてすぐ、A先生の診察。幸いこの時も無事が確認でき、ここから先は「経過観察」ということになりました。 (つづく)



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