ピューロランドへ行った話
久しぶりの更新。
桜は散り始め、桃色と新緑の混ざったカラフルな桜の木を見たときに新年度が始まったような気分になる。満開の桜が全てではない。四季は大まかな分別であって、本当はもっと細分化されてもいいのではないか。
一昨日、サンリオピューロランドに行った。
京王線から眺める街並みがのんびりしていたのがすごく印象的だった。
平和な気持ちで辿り着いた京王多摩センター駅はディズニーのそれとは違って、ピューロランド目当ての人だけではなく地域で働く人や生活しているであろう人が多く行き交っていて、少しローカルさが滲んでいた。そんなところもまたいい。
到着したのは14時過ぎ。アフターパスで入場すれば2800円だったのだけど、前日のうちに金券ショップで1dayパスポートを買っていた。2900円。100円が惜しいわけではないけど、純粋になんだか悔しかった。でもそんなゆるい感じがまた我々らしいから、それでいいのだ。
なお、前日までに購入したチケットは来場予約というものが必要で、知らずに入場しようとしたところ、スタッフに来場予約について案内を受けた。こうしてSanrio+に入会して来場予約をした私は、ついにサンリオの一部になり、会員だぞ、という気持ちで入場した。
まず出迎えてくれたのは世界のキティさん。
これがキティ…ピューロランドには何度か来ているのに毎度圧を感じている気がする。キティさんを拝む。手を合わせる。これは参拝。参拝なのだ。
聳え立つキティさんの鳥居を潜り、エスカレーターで下ると1Fのステージではショーが始まっていた。ピューロランドのステージは距離が近く、客席と同じ高さで、地べたに座りながら鑑賞できるのがいい。あれ、ディズニーもそうだっけ。
我々は後方の開かれたドアから人の隙間越しに覗く程度にしかショーを鑑賞できなかった。ただそれでもサンリオキャラクターたちは後方にいる我々にまで届くレスをくれる。憧れのキキララが、手を振ってくれる。アイドルよりもずっとアイドルかもしれない。尊くて、ちょっと泣いた。
私にはかわいい女に生まれてきたかったというどうにも乗り越えられないコンプレックスがある。
女装すれば、とか性転換すれば、とかそういうことではない。そんなことで解消できるならとっくにそうしている。こればかりは男として生まれてきた時点でどうにもならない。
だからせめて自分が可愛い、美しいと思うものは愛で続けていたいし、自分の感じる可愛いを信条にして生きていたいと思う。それを肯定してくれるから大森靖子が好きというところもあるのだが、それはまた違う話になるので割愛する。
そんな私がピューロランドに行くにあたって悩み続けていたこと。それはカチューシャをつけるか否かという問題である。
例えばカップルがテーマパークに行くとき、男が恥ずかしがってカチューシャをつけないだとか、カチューシャをつけてくれる彼氏がいいだとか言うけれど、私の場合はそんな単純な話ではない。
カチューシャはかわいい、もちろんつけたい。けれど、自分がかわいいものを身につけてかわいい世界に紛れ込んでいて良いものか、そう考えたときにどうしても躊躇してしまう。結局これまでの人生でテーマパークでカチューシャをつけるということはできずにいた。
結局今回もどうしていいものか結論が出ないまま当日を迎えたわけだが、いざカチューシャを前にしたとき、やっぱり悩んでしまった。つけたい。許されない。その二つの感情の狭間で揺れていると、恋人から買ってあげようかと提案があった。私は決心して、厚意に甘えた。クロミのカチューシャを買ってもらった。
カチューシャをつけてからしばらくの間、鏡を見ることができなかったし、カメラを向けられても目を背けてしまった。けれど、嬉しかった。なんだか全てを許されたような気がした。
キティさんの部屋でキティさんとグリーティングをした。キティさんはかわいくて、優しくて、すべてを包み込んでくれているようだった。何も喋っていないのに、濃密に会話ができていた気がする。何も伝えていないのに、すべてわかってくれたのかもなぁ。すごいよ。眩しかった。ここでも自然に涙がぽろぽろ出てきて、別れ際、キティさんから慰めるように応援ポーズをいただいた。
それから軽食を食べて、ボートライドに乗った。ボートライドはボートに乗ってキティさんからパーティーの招待状を受け取ったサンリオキャラクターたちを眺めるアトラクションだ。サンリオキャラクターが全員集合するため、どのキャラが好きでも楽しめる。最終的にはキティさんの部屋にみんなが集まるのだが、道中の世界観がまた最高にかわいい。サンリオのかわいさを集めた最高のアトラクションだと思う。これもまたかわいくて尊くて、結局ここでもまた泣いてしまった。
泣いてばかりだけど、とても楽しんでいるんですよ、これでも。
閉園前に駆け込みで鐘を鳴らし、幸せを願う。ここがピューロランドの駆け込み寺。二人で一本ずつ握った綱は細いようで力強く、尊いものだった。こんな幸せをずっと生きていけますように。
帰りの電車は二人とも寝ていて、気付いたら渋谷に着いていた。テーマパーク帰りの疲れ。心地よい。渋谷PARCOで開催されているシルバニアのポップアップを覗いて、韓国料理をつまみに少し飲んで浅草へ帰る。推しに会って、いつもの店でいつもの酒を飲んで、ラーメンを食べて帰って、愛し合う。たまにでもいい、たまにでもいいからこんなに贅沢な一日をこれから先も生きていきたい。
時間は溶けていくから美しくて儚い。だから見失わないように、気化していく些細な一瞬の幸福をなるべく漏らさず吸入して、体の隅々まで浸透させていきたいと思う。それが愛でそれが幸せなら、例えそれが毒でも私は受け入れていく。
かわいいの一部になれたこと、かわいいの一部にさせてくれたこと、信条を抱き締められる世界線。私は今とても幸せだから、この幸せを返していきたい。与え合っていきたい。ピューロランド、ありがとう。
飽和する愛を一滴も逃しはしたくない。また行こうね。
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