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昔の親友に会う、二人は年月は流れても驚くほどに昔のままに気が合う。懐かしいなぁ、昔のままだ。こんな一時が生きる鋭気を与えてくれます。

朝、目が覚めて時計に目をやると六時前だった。俺は少し早いなと思い、もうひと眠りしようと目を閉じて見たが全く眠気は無く、二度寝は出来そうになく、起き上がり冷蔵庫のドアを開けると殆ど空っぽでコレは拙いと思い、着替えもせずに急いでコンビニへと向かい、取り合えず食料品や身の回りの必要な日用雑貨を大量に買い込み、片手に二つの買い物袋を提げて帰ると、女は起きて居て「オハヨウ――」と言いながら微笑んだ。俺もおはようと返すと、昨夜のゆきことの事が頭に浮かび少し気まずい気持ちになったが、それを顔には出さず、何も無かったかのようにコンビニの袋から買ってきた物を取り出し冷蔵庫へいれた。パンと牛乳だけは女に手渡し笑みを作ると、女も同じ様に返してきた。
それ以上は何食わぬ顔で何もいわない女に俺は後ろめたい気持ちが湧き、誤魔化す様に時計に目をやり、時間を気にするような仕草で会社に出掛ける準備を始めた。
俺は何時の間にか自分の中に住み着き、膨れ上がっている女の存在に気が付き、初めて味わうこの気まずさに、俺はかなり自分の中で戸惑いアタフタとした気持ちのまま、会社へと向かった。

俺は会社のデスクに着くと、薄らと笑みを浮かべ挨拶を交わしてくるゆきこに、何時もと同じように返事を返しながら、出勤途中に自販機で買った缶コーヒーのプルタグを抜き一口啜った。
俺は昨夜の出来事などまるで何も無かったかのようにパソコンに向かった。
その日の仕事帰り、赤子のミルクも無いだろうと思いドラッグストアーで買い求め、右手にミルクの入った買い物袋を提げ、もう片方には杖を突きゆっくりと歩き出した。
すると何処からともなく男女の言い争う様な声が俺の耳に入って来る、だがその声には聞き覚えが……、暁美?
「ねぇ、おねがい、私を捨てないで――、何でもするから!」
「勘弁してくれよ――、こんな処で、とにかくもう終わりにしてくれ――」
「まって! お願い……」
「…………」
俺の目の前に映ったのは暁美が男に捨てられる処だった。どんどんと込上げて来る怒りだったり、嫉妬だったり、哀れみだったり、俺は堪らず一歩前に踏み出した。が、それを右手に持った杖と、左手に下げた買い物袋が一瞬にして俺の想いを踏み止まらせた。
離婚して直ぐ、まるで罰が当たったかのように片足だけの案山子になってしまい。おまけに見ず知らずの親子と暮す今の現状、昔は一度もした事の無い様な仕事帰りの買い物で、赤子の飲むミルク缶をドラッグストアーで買い求め、買い物袋を片手に提げた今の自分の姿をどう説明すればいいのだろう……、出来ない――。
そんな俺の目の前には、人目も気にせずアスファルトの上にしゃがみ込みながら泣く、四十路の暁美の惨めな姿を見詰めた俺は、強く目を瞑り踵を返した。
街中を嫌な想いを振り切る様に歩く俺は、荷物を持つ手でネクタイを緩め、ワイシャツのボタンを外した。自分の心の歪みに気が付いてはいたがどうする事も出来ず、ただただ苦虫を噛み潰すような想いのまま歩くより他なかった。
ウチの玄関ドアを開けて部屋に入ると女が迎えてくれた。俺は片手に下げた買い物袋を手渡すと微笑みながら「アリガトウ……」と言った。俺は何時ものように微笑み返したつもりだったが、女の目にはそうは映らなかったのだろう。
「ナニカアッタ?」と聞かれた時、俺は返す言葉がすぐに浮かばず、首を横に振るのがやっとだった。それどころか沸々と溢れ出る遣る瀬無い想いが心の蓋を飛ばしてどっと流れ出てしまった。
そんな俺の顔を見た女は表情を強張らせ、顔を顰め俯いた俺をそっと抱き寄せ、俺の頬に自分の頬を摺り寄せ「ダイジョウブ!」と囁いた。その一言が俺の心を優しく包み込んだ。俺は堪らず女の体にしがみ付き嗚咽を漏らした。
女は優しく温かかった。毎晩亭主が居るにも拘らず、俺の寝どこに入って来ては性欲を満たす軽薄な女のすべては温かく、優しくて堪らないほど安心できた。
(なんだろう……、女って……)俺は温かく心地の良い女の胸に顔を埋めそのまま押し倒した。
何時ものアラームの音で目覚める、どうやら俺は知らぬ間に眠ってしまい。女が掛けてくれたのであろう毛布に包まっていた。顔には昨夜散々流したのであろう涙でパキパキに乾き顔が腫れぼったく感じる。
俺は顔を洗おうと洗面所の前に行き鏡を眺めた。そこに映ったのは何とも情けない疲れ果てた男だった。俺は水道の冷たい水をやつれ果てた顔に浴びせた。すると気持が幾分か普段の自分に戻って行く気がした。準備を済ませ会社へと出掛けた。駅までの道中で昨夜の事を思い出しながら考えた。
(あの親子を何とかしてやれないものだろうか、今のままで良い訳ないしなぁ)
だが、あのトラブルを起こしたのか、巻き込まれたのか判らない亭主と一緒に暮らすと言う事は、今の暮らしは無くなるんだなぁ……、うん――、どうしたもんだろう、と俯き悩んだ。だが結局日本に居れば今追われて居る連中に追い掛け回されるだけだろう、いっそ国へ返してやる事が一番いいんじゃないかと思い、早速今夜、女に話してみる事にした。
帰り間際に、ゆきこに一献誘われたが今日は都合が悪いからと断り、早めに帰った。
女達親子と食事をしながら話しをきりだした。
「……そろそろ中国へ帰ったらどうだ?」
「エッ…………」
「今のまま外にも出る事も出来ない生活を続けても、何にも解決しない――」
「……モウスコシココ、オイテクダサイ。ワタシノオトコガ、ムカエニキマス……」
切羽詰まった表情で女は俺に訴えた。俺は女のその顔を見ると何も言う事が出来ず、黙って頷くほかなかった。
今日は会社を午前中休み病院へ右足の定期検診に行った。
「坂崎さん、最近リハビリには来てない様ですが? リハビリを怠ると、今のまま何も変わる事はないですよ――」
「ハイ……、すみません――」
俺は既にこの右足の事を何処かで諦めている。動く筈の無い右足の為に、態々時間を割くのは無駄以外の何物でもないと、今日の定期検診すら来るのを迷ったくらいだった。
この右足の不自由な人生も、これはこれで慣れれば悪くないと思うようになっていた。
それは、あの親子二人のお陰と言っても言い過ぎではない。毎日部屋の中で怯えながらも生きようとする健気さを目の当たりに見せられると、俺の悩み事など足元にも及ばないと思えて来たからだった。それ故にあの親子達の力になってやりたい気持ちが日増しに強くなっていた。
ある日、俺が何時ものように会社からスーパーで買い物を済ませ家に帰ると、女が慌てた様子で駆け寄って来て「コドモガ、ネツ……」といって自分の額に手を当てて訴えて来た。俺は横になって寝ている子供の額に手を当ててみて驚いた。一発でこれは40度近い熱があると直ぐに判る程の熱だった。一先ず箪笥の引出しに放り込んだ覚えのある体温計を探しおんなに手渡し、熱を計るように言ってから近所のドラッグストアーへと向かった。
店の店員に詳しい事情を説明し小児用の熱さましとオデコに貼る熱さましシート、風邪薬を買い急いで家に帰った。女に熱は何度あったかと聞くと、俺の感じた通りやはり40度だと女は言って、首を横に振りながら動揺を隠せない様子だった。
子供のオデコに熱さましシートを張り直ぐに薬を飲ませたが、どう見ても市販の薬で治るとは思えず何か良い手は無いかと考えた。その時俺は大学時代の友人の恒次の事を思い出した。当時俺達は大学生でありながら、学業そっちのけで毎晩のように俺の下宿先であった六畳一間に麻雀好きが集まって、あれこれ麻雀談義をぬかしながら朝まで、と言うか大学の授業が始まる寸前まで打っていた。その時色んな学部の麻雀好きが集まって居たが、何故か一人だけ医学部の恒次が混じっていた。

「お前こんな処で麻雀打っていて大丈夫なのかぁ?」
「いいんだよ。これでもちゃんと単位も取ってるし、寝る間を惜しんで勉強もしている――」
「嘘つけ! 寝る間も惜しんで麻雀してる、だろう……」
「まぁそうともいうな。でも良いんだ。俺ン家の実家は小さな町医者なんだが、跡継ぎが俺しか居ないからなんとしても俺に後を継がせたくて、医師免許をちゃんと取るならあとは何してても良い、と親爺のお墨付きまで頂いているんだ。だから仕方なく厭々ながらも医学部に通っているって訳さぁ――」と熊の様に大柄な恒次は良くそう言って愚痴をこぼしながら、深更、無類の麻雀好きを露わにしていた。
俺はそんな恒次のあっけらかんと自分の趣味に没頭しながらも、親のエゴを丸呑みし両立させる処に感心しながらも、経済学部と医学部とで学部は違ったが息も良く合い、麻雀を打っていない時は合コンに出かけ、よく二人でナンパしたものだった。 
(確かぁ、恒次の家は新宿2丁目にあるって言ってたな……)
俺は電話帳で恒次医院で調べてみると確かに有った。しかしもう二十年近くも会っていなくていきなり押し掛けて無理な相談をするのもどうかと思ったが、ダメもとで電話してみた。すると酒の飲み過ぎで枯れてしまったのか如何なのかは判らないが、酷いダミ声で「理由なんかどうでもイイから早く連れてこい――」と一喝されてしまい。俺は戸惑いながらも事が事だけに、有難く甘えさせてもらう事にした。

早速出かける準備に取り掛かった俺達は、子供を俺が抱き抱きかかえている中に、女には俺のトレーナーとジーパン、そして皮ジャンを着させた。女はわりと背が高く百七十五センチある俺より五センチほど低くい程度だが、華奢なことから全て身に着けている物がダボついては見えるが、完全に元の女の姿形では無くなって見える事から、これにキャップとレーバンのサングラスを掛けさせ、一見男か女か見分けのつかないちょっと怪しい感じに変装出来た。女は流石にこの格好は無いだろうと、肩を竦めて両手を開いて見せたが、追手に見付からないようにするにはこの位の変装は必要だろうと思い、無理やり納得させた。が、自分で見ても、ちょっとこれは……、とおもったが新宿2丁目という場所が場所なだけにコレもアリだろうと家を出た。
恒次医院は直ぐに見つかった。二階建ての想像していたよりも清潔感のある病院だった。
「おう、久しぶりだなぁ坂崎、いやぁ~懐かしいなぁ、ウン? どうしたその足?」
「ああ、ちょっとなぁ、それよりこの子なんだがなぁ……」
「おっ、そうだったな、どれどれ……」
恒次は子供を抱きかかえ額の手をやり少し唸ったが、口の中をペンライトで照らし覗きこんだ後「ウン、大丈夫だ。風邪だ。薬飲んでしっかり栄養を取って寝かしときゃ直ぐに治るよ――それで子供の大きさを見ると一歳半位かぁ、そろそろミルクだけじゃなくて離乳食に切り替えて行った方が良いぞ! 何時までも赤ん坊のままだと思うなよ――」と何も言っていないのに離乳食を取らせていない事に気が付く恒次に感心し了解した。
(そうだなぁ、すっかり忘れてた。離乳食だ。家の子も食べてたなぁ……)
俺は帰りにドラッグストアーにより早速市販の物を買って帰ろうと思ったが、恒次が女に離乳食の作り方を流暢な中国語で説明している処を見て止めると同時に、多国語をいとも簡単に話す恒次に感心させられ、英語すらまともに話す事の出来ない自分を恥じた。
「ところで恒次、精算してくれ――」
「そんなもんいいよ、気にするな。俺達は親友だろう――、それに昔お前の家で散々好きな麻雀打たして貰ったお礼だ。そんな事より、彼女密入国だろう、これからどうするつもりだ――、まぁお前の事だからなんか込み入った事情があるんだろうが……」
「――何で判るんだ。彼女が話したのか?」
「いやぁ、だがなぁ、俺ン処は場所的に色々な事情を抱えた外国人達がやって来るから見ただけで大体は察しが付くんだ――」
「お前は昔から並みな奴じゃないと思っていたが、本当に大した奴だな……」
俺は恒次の眼力には感心させられた。そして大体の大まかな説明をしたが、俺の脚の事を話した時は少し顔を顰めたが「判った――」と一言言うと「何かあったら何時でもこい。俺が見てやる――」といってくれた。勿論俺と女との間に、肉体関係がある事には触れなかった。帰り際に恒次の奥さんが顔を出した。
「アラ、坂崎君久しぶりね……」
「おぉ、葉子、どうして……」
「坂崎、実はなぁ、俺達大学卒業してからも五年程付き合っていたんだが、子供が出来た事もあって結婚したんだ――」
「そういうこと――、驚いたぁ? でも暁美話してなかったぁ? 私達の事……、それから坂崎君、暁美から聞いたわよ。離婚したんだって?」直ぐに隣にいた恒次が顔を顰めながら割って入った。
「オイ、葉子、余計な事を言うな! 二人には二人の事情があったんだ。幾ら親友だからって首を突っ込んでいい話とそうでない話しがあるだろう。すまん坂崎、昔のまんまで……」
「いやぁ、いいんだ、本当の事だから……」
実は俺達四人は合コンで知り合い、付き合いだしてからもよく四人でダブルデートなんかもしていたせいで気心が知れていた。だから葉子も昔から色々と突っ込んだ話も平気でして来るのであった。
「でも、坂崎――、自分の人生大切にしろよ。もう俺達若くないぞ――」
「判ってる……」
恒次にそう言われて得心しながらも、全く真逆な出来事に首を突っ込んでいる今の状況にも間違った事をしているとは思わなかった。
俺は帰りに三人でドラッグストアーやスーパーで買い物をして帰った。女は久しぶりに外に出たせいか、サングラスの向うの表情は幾分か明るく、楽しんでいるように思えた。特に食料品を買っている時はやはり女だなぁ、と感じるほど生鮮三品に対して目が効いた。何時もは何も考えずに籠の中に入れている俺も、なるほどと納得する理に適った買い方で勉強になった。
買い物の帰り道、女は子供を抱きかかえ買い物袋を下げる俺と横並びになり歩き、俺は女の話す片言の日本語にニンマリしながら受け答えした。たわいもない会話だったが何故か俺の心は落ち着き和んだ。
(何年振りだろう、こんなあたたかい一時は……)俺は暁美との昔の生活を思い出さずには居られなかった。
「アナタ――、ズットヒトリ?」
「……いやぁ、離婚した。つい最近……」
「ソウ……、サミシクナイ?」
「うん、大丈夫だよ……」
俺は女に俺の心の内を見抜かれている事に気付いた。だがそれを取り繕う気持ちは無く、素直な気持ちでいられることに驚き、随分俺も変わったなと、新しい自分を発見した様な気になった。
(何でもっと早く俺はこうなれなかったのだろう……)
西の空には橙色に染まったあかね雲が浮かんでいる。俺は、慌ただしい一日だったなぁと思いながら、女の横顔を見て自分の顔が緩むのがわかった。
家に帰ると俺達はゆっくりと抱き合い唇を吸い合いながら何かを確認し合った。子供は疲れたのか直ぐ隣で横になって眠っている。俺達は互に求め合い裸になった。
女は仰向けの俺の体を何度も舐めながら、俺に尻を向けて勃起した男根を頬張り舐め吸った。俺は堪らず目の前の女の股を開き膣を舐める。すると膣の中からどろどろと汁が溢れ出し俺の顔をべちゃべちゃにした。
女も堪らず喘ぎ声をあげる。するとその声に反応した子供が目を覚ましぐずりだした。女は隣で横になっている子供の頭を撫ぜながらも俺の男根に貪りつくのを止めない。それを無視して俺は目の前にある女の尻に手を掛けながら起き上り両手で女の尻を掴み男根を膣の中に押し込む、女は四つん這いのまま悶えながら泣いている子供をあやした。
俺は女のその体を捻りながら悶え、子をあやす姿に興奮し男根を激しくし膣の奥深くに押し込んだ。すると女も子供どころではなくなったのか何時ものように激しく悶え腰を振り喘ぎ声を上げながら力尽きて行った。

続く


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