麻雀解説について


ツイッターで最近ノートがブームというのを知りしました。
協会でも「雀王」堀さんのノートや、「猛獣」仲林さんのノートが話題となっていますね。
僕はブームに目がないので早速はじめようと思ったのですが、仲林さんのような後先考えないことは書けないし、物書きのプロの方のような面白い文章は書けないので何を書こうかなと迷っていると、一気に出遅れてしまいました。
僕は出遅れると大体もういいやとスルーするタイプなので今回もそのパターン寸前まで行ったのですが、ある事件によって書くことを決意しました。
それが、俗に言う「渋川Mリーグの解説に呼ばれる」事件です。
知らない人も多いと思いますが、なんと僕は3月6日のMリーグの解説に呼ばれました!
その報告を聞いて、僕は嬉しくて飛び跳ねそうになりました。(飛び跳ねはしませんでした)
そしてせっかく呼ばれたからには、いい解説をしたいし、いろんな人に聞いてほしい!、そのために少しでも何かできることはないかな?となった時、ノートのことを思い出し、僕が解説をする時心がけていることをノートに書いてみようと決めました。

解説の心得

「麻雀の対局は、解説が8割」

これは、僕が昔とあるプロに聞いて、とても感銘を受けた言葉です。ちなみにとあるプロと濁してるのは隠しているわけではなく、単に誰だったか忘れたからです。そして今思うとどう考えても8割もないんですがそれは一旦置いておきます。
僕は比較的口が回る方なので、プロになってからすぐ解説をやる機会がありました。その時は好き勝手に自分が思ったことを喋っていたのですが、ある時冒頭の言葉を聞いてハッとしたのです。
僕は見ている人の事や、対局者のことより自分が何を喋りたいかを優先していたのではないか、と?
そこから僕は心を入れ替え、より良い解説ができるよう研究していきました。そして、幾つかの決め事ができました。
それをここで発表したいと思います。

その1.対局者になりきる


皆さんは解説者がなんのためにいると思いますか?
当たり前ですが、麻雀の対局中に対局者は喋ることができません。
その人ならどうする?その人はなぜこの牌を切った?ということを対局者の代わりに、観ている人に伝えるために解説者はいるのです。自分ならどうするか?と言うことを話すためにいるわけではありません。
なので、対局者の気持ちになりきることが大切です。その人の普段の打ち方を知っておくことはもとより、今の表情や手つきにも注目してその人の気持ちになりきるのです
僕が解説をしている時に「うわ!やられた!」とか「参った!」とかまるで自分が打ってるかのようなセリフが自然と出てしまうこともしばしばあります。その時はこいつどうした?と思わず今対局者になりきっているのだな、と温かい目で見てください。

その2.解説者は、否定から入らない

解説者が言ったことは、たとえどんなでたらめだろうと見ている人にはそれが事実として伝わります。なぜなら解説者は全てを見ているので、何を言おうと説得力が出てしまうからです。
僕も対局を後で見返した時、解説者に全く考えてもいないデタラメを言われ、反論も出来ず枕を涙で濡らしたこともあります。
だから、僕はどんな一打だろうと選手の打牌には絶対に否定から入りません。ミスだというのではなく、なぜその牌を切ったのか?という理由を考えるのが解説者の役目です。

234m344567s23488p ドラ4p

例えばこんな手があったとして、普通は当然4s切りリーチですが、4s切りヤミテン、7s切り、3s切り、はたまた8p切りに対しても、否定をせず何故その選択をしたのかという理由を探すようにしています。
そしてその結果絶対にミスだと思ったら、「今ミスったと思ってるかもしれませんね」という禁断のフレーズを解禁することがあります。僕がこのフレーズを使う時は、本人も間違いなくそう思ってる時なので、安心して信用してください。

その3.見ている人がいると意識する


僕は選手になりきるあまり、なぜその打牌をしたかが詳細にわかる時が多々あります。
しかし、それを全て語っていると時間がいくらあっても足りませんし、視聴者の方を置いてきぼりにする可能性が高くなってしまいます。
かと言って何も触れなければ、せっかく選手になりきった意味がありません。なので話し始める前に、この情報は伝えて、この情報はカットしよう、というのを脳内で考えてから解説しなければなりません。この作業が実は解説で一番大変と言っても過言ではありません。

例を挙げますと、こんな手がきていたとします。
44468m234468p357s ドラ5s
ここで選手が長考、そして選んだ打牌が3sだったとします。僕は対局者になりきった結果

「ドラを使い切りたいから、357sはまだ触りたくない。形的には8m辺りを切りたいけど、8mは2人の現物。安全度も高いし7mも場況的にはいいからここは残すか。となるとピンズか?8p切ると頭はできやすいが1p引きはほんとにいらない…かと言って4p切るとイーペーコ目も消える、ここも触り辛い。となると……ドラ表示に4sが一枚見えているし、ソーズは今切っておかないと将来切りきれないかもしれない。ドラの重なりで十分形になるしここは4sの裏目には目を瞑り3s切りだ!」

と読み取れたとします。こんなことを全部喋っていると、途中で実況の方に「もういいです」と言われること間違いありません。
なのでこの情報の中から、簡潔に、しかし的確に意図を伝えるワードだけを抽出しなければなりません。
ここで考えるのが、情報の優先度です。大体優先度の高い2〜3個の理由を伝えるとちょうどいい時間になります。つまり実際に話すときはこうなります。

「普通ドラ5sの時は357sと持っておきたいんですけど、今回はソーズが将来的に危険になりそうなのと、打牌候補の8mが比較的安全かつ7mの場況がいいのでそこに手応えを感じて3sきりになりましたね」

マンズを切らない理由・索子を切る理由の優先度が高いと判断して、優先度が低いとみた筒子の部分はバッサリカットすることとなりました。
この後、実況の方から何か質問が来たらそれに対しても簡潔に答えてこの局面の話は無事終了となります。
ちなみにその後の質問にも勿論淀みなく返さないといけないので、あらゆる質問を想定して準備しておくことも必要です。
例「7mの場況がいいというのは?」
A「基本的に序盤に切ってる牌の周辺の牌は持ってないことが多いのです。よって8m早い人が2人いるので、7mが山にある可能性が高くなっている、ということです」


その4.見ている人を退屈させないようにする


永遠に選手の思考を語るだけだと、まるで学校の授業のように疲れて眠くなってしまうことでしょう。
それを避けるために、盛り上げるとこは盛り上げる!そして多少のユーモアを入れて場を和ませる!この二つはどんな対局でも必須です。

例えば、九連宝燈のツモあがりが出たとしましょう。

悪い例
「あー、九連宝燈つもりましたねー」
「すごいねー」
こんな実況解説じゃ、せっかくの九連宝燈も浮かばれません。

良い例
「おおおお!!つ、つもりました!!九連宝燈!!九連宝燈です!!!和了ると死ぬと言われている伝説の役満がここに降臨!!!はたして生きて帰れるのか!?タクシー、いやハイヤーを呼んでくれ!!ガードマンもつけろ!!死なせるわけにはいかない!今日のヒーローを死なせるわけにはいかない!!!」

某方の影響を多大に受けている気もしますが、ここまで盛り上がると九連宝燈も浮かばれるでしょう。
勿論対局の雰囲気によって、ユーモアの割合を増やしたり減らしたりの微調整をしたりしますし、そのバランスは人それぞれでしょう。僕は大体、真面目:ユーモアが8:2くらいのバランスになるように心がけていますが、逆に2:8くらいのバランスの人もいるでしょう。そのバランスはなんでもいいのです。面白ければ、いいのです。とりあえずこのnoteも同じくらいのバランスでやっていこうと思っています。

この他にも色々あるのですが、あまりにも長くなりすぎてしまうのでこの辺にしておきます。
あくまでこれは僕の意識していることで、いろんな意見の人もいると思います。これを読んだあなたは、僕の解説を聞くときそう言えばこんな事をノートで言ってたけどほんとかな?と思いながら聞くと楽しみが増えるかもしれません。
それでは、また!
次回のノートは「渋川さんの、雀力(じゃんりょく)スカウター」です。お楽しみに!


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