伝説効率

皆さんは新星戦というのをご存知でしょうか?
もし知っている、という方がいたらその人はとんでもない競技麻雀マニアでしょう。
新星戦とは、簡単に言いますと有志でやっているリーグ戦です。
あのMリーガーの松本プロや園田プロを筆頭にそうそうたるメンツが集まっています。
ちなみに今期は、僕がぶっちぎりで予選を勝っているのですが全員のスケジュールが合わずにもう一年以上続きが行われていません。グループラインも一年以上前の仲林さんのここに載せられないようなわけのわからない書き込みで途切れているので、このリーグ戦はもう終わったのだと思います。

さて話は戻りまして数年前、その決勝が配信されたことがありました。
僕は見事決勝まで残っていたのですが、その時、こんな局面がありました。

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こちらはタンヤオ三色ドラ3の18000テンパイに、引いてきた二枚切れの白。普通は悩むべくもないですが、僕はここで大長考しました。さて、何を考えているのでしょうか?これがわかる方は、かなりの麻雀通でしょう。皆さんも考えてみてください。



渋川の思考

僕の目線は、上家の石井一馬プロの捨て牌にそそがれていました。
序盤の手出しは置いといて、8巡目の2s、9巡目の8s、13巡目の8sが手出し、最終手出しは南です。この時の僕の思考は
(トータルを考えても明らかに打点の欲しい石井プロの捨て牌が、おかしい。染めではなさそう、8sは明らかにトイツ落としだからチートイでもない。普通のメンツ手にしては、バランスがおかしい。……4巡目に西、5巡目に9mを切ってるけど、これは小癪にも迷彩を効かせた国士なんじゃないか?)
と、国士無双を大警戒しての大長考です。
一所懸命4枚見えの一九字牌を探しますが、やはり見つかりません。ここで、石井プロの本線は国士と決まりました。

ということで、今度は本線は国士と決まった相手にこの白を打つ価値があるかどうか、という思考に移ります。
国士で迷彩をする時は、基本的にあがれそうなときです。4巡目の時点でおそらく10種類くらいはあっただろうと想定できます。
そして最終手出しの南、これは二枚切れで安全度はマックスです。
さらに、その後の5sツモ切り。リーチも仕掛けもないとは言え、はたして残りツモ番一回でノーテンから切る牌だろうか?と色々考えます。

これらを踏まえ、押す理由は以下の通りです。
1.トータルポイントと石井プロの性格を考えるとイーシャンテンでも切る可能性はある
2.仮に張っていても待ち候補は10種類あるので、白の当たる可能性はかなり低い
3.そもそも国士じゃない可能性もある
4.この18000をあがるとめちゃくちゃ大きく、テンパイ料や親権維持も大きい

しかし、その一方で勿論押さない理由も大きくのしかかっています。
1.国士を打つと、絶望的。降りても、まだここから五分の戦いが始まるだけ。
2.白は三枚目だから、10種類の中ではトップクラスの危険度
3.巡目も少なく、和了は期待薄

これらを天秤にかけ、僕は「押し」を選択しました。
そして、その結果。

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これです。

僕にできることは、「国士なのは、分かってたよ。やはりあたるか。ウンウン」と頷きながら点棒を払うことだけでした。
この放銃が響き、僕は優勝を逃しました。

終わった後に、やはりこの国士放銃の話になりました。
「白を悩めるだけすごい」「国士とは読めない」「さすがに無理」「考えるフリだけは、一流だな」「最後の頷きが、うざい」
という放銃肯定派の意見が多数だったのですが、雀王堀さんだけはこう言いました。

「あの白を打つのはありえない。難波ちゃんなら止めると思ったけど、どうやら過大評価していたようだ。失望したよ」

どう考えても、言い過ぎです。そんな責められる放銃では絶対にありません。
しかし一方、僕はこう思ってました。
(押すか降りるか、ほんとに微妙なところだった。でもよく考えると、この白を止めて当たりだったら、めっちゃカッコよくないか?伝説に残るレベルじゃないか?てことは、伝説効率を考えるとこれは降りるべきだった、と)
ここに、「伝説効率」という新たな単語が爆誕しました。

そして、僕は皆に言いました。
「これからは、牌効率だけじゃなく、伝説効率も視野に入れて打牌をしていくことに決めました」
みんなポカンとしていましたが、僕の中ではしっくりきたのです。
自分が勝つために得だと思うことをやるのは、絶対条件です。しかし、どっちがいいか本当に微妙だな、となった時に、僕はカッコいい方を選ぼう、と。
その結果、カッコよさを追求しすぎて勝率を落としてしまうようなことがあるなら、その時は潔く打ち方を戻そう、と。
それからというもの、僕の麻雀は少し変わりました。良い方になったのか悪い方になったのかは、これからの僕が証明してくれることでしょう。
しかし、勝つことが一番という気持ちだけは未だに全く揺らいでないので、きっと進歩していると信じています。
それでは、また!

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