4mgの置き土産【短編小説】【小説2】
彼女は無表情に喜んでいた、彼の就職先が決まったことを。「カチャッ」音と共に煙は揺れはじめる。掃除されていないバルコニーのイスに腰をかけると、彼女はくわえたタバコを手に取り、最初の煙を空に吹きかけた。タバコから立つ煙は、心なしか踊っていた。
思えば、未熟な彼を心配ばかりしていた。彼のお店での衣装は、雰囲気が少しズレていた。彼の髪型は、お世辞にも整っていると言えなかった。彼の性格は、はっきりしないものだった。次の仕事が決まってないのに彼は、ここを辞めようとしていた。そんな彼に