恋の話を紡ぐ大学生。ちょっとずつ、本当の話。

恋の話を紡ぐ大学生。ちょっとずつ、本当の話。

最近の記事

キスマークなんて、つけないでよ。

最初から、そのつもりだった。たぶん、彼もそうだった。なのに。 午後五時に渋谷で待ち合わせて、まだ五時だよ、なんて言って。東横線に乗って中華街に向かった。食べ歩きや手相占いなんかして、普通のデートをした。占いの人の良さそうなおじさんに、お二人は友達?って聞かれて、はい、って私が即答したり。 外に出たら、もう夜だった。赤く連なる提灯をみて綺麗だねえ、なんて言いながら、山下公園に向かった。 たくさんのカップルが芝生でごろごろしてるのを真似して、私たちも寝転がった。たくさん話を

    • のどの痛みをかき消すように、のど飴を口に放り込む。

      この時期にのどが痛くなってはいけない。痛みを感じたことを認めたくないから、すこしの予感に気づくたびに、のど飴を口に放り込む。 おかげで、この2日でのど飴が1箱なくなった。しかも結構強めのやつ。 見たくないから見ないふりをする、見えないようにしてしまうって、こういうことなんだろうな。

      • 英語のエッセイで、コロナ前をNormal lifeって書いたけれど、もうどちらがノーマルかなんてわからないよ。戻った先は、ニューノーマル。

        • 大学の始まりは、苦手だ。

          だれもが人混みのなかに知り合いを探して、すれ違うあらゆる人の顔を、値踏みするように目で撫で回していく。好奇と物欲しさに溢れたその視線は、わたしの心に変なざらつきをもたらす。 作り笑顔で手を振ってすれ違う知り合い。今度ご飯いこうね、といつも社交辞令を交わす友達。今はもう目さえ合わせなくなった、何年か前のクラスメイト。わたしたちはここで重なって、発散する。違う航行高度をゆく飛行機みたいに。 ひょっとして、ここですれ違うのが最後かもしれない。それでも、すべての出会いを大事にでき

        キスマークなんて、つけないでよ。

        • のどの痛みをかき消すように、のど飴を口に放り込む。

        • 英語のエッセイで、コロナ前をNormal lifeって書いたけれど、もうどちらがノーマルかなんてわからないよ。戻った先は、ニューノーマル。

        • 大学の始まりは、苦手だ。

          「爪、綺麗だね」

          こともなげに言ってのける君.当たり前でしょ、だって今日このために、塗ってきたんだから. でもそんなこと言えるわけなんてなくて、わたしはすこし目を伏せて、ありがとう、と言うのが精一杯.一歩踏み込めない自分が悔しい. 「いつも綺麗にしてて、えらいよね」 見てたんだ.やっぱりこういうの、慣れているに違いない.そうでもなきゃこんな言葉、さらりとは出てこない. でもね、わたしはもっと欲張りで、もっと君の言葉が欲しいんだ. ネイルに気づくなら、私の気持ちにも気づいてよ.

          「爪、綺麗だね」

          処女しか、巫女になれない。

          「ようこそお参りくださいました」 神社で働くのは、去年が最後のはずだった。けれどわたしは今年もここで、お守りを売っている。 当時、わたしにはとても仲のよい恋人がいたから。 初めてのキスは、おもったよりもあっけなくて、難しくなくて、心地よかった。ああ、この人に初めてをあげるんだなぁ、そう思うと彼が一層愛おしくなって、私のなかで占める彼の割合がだんだんと膨らんでいった。 深夜まで続く電話で、会いたいね、早くお泊まりしたいね、なんてささやきあったりして。ああもうかわいい、と

          処女しか、巫女になれない。

          付き合ってから1ヶ月も経っていないけれど、もうすでに、切ない。 恋をぶつけ合った相手だから、愛のない言葉を投げる君を見るのが辛い。

          付き合ってから1ヶ月も経っていないけれど、もうすでに、切ない。 恋をぶつけ合った相手だから、愛のない言葉を投げる君を見るのが辛い。

          Zoomの居残りから

          夜遅くに始まるオンラインのミーティング後、わたしはいつも、Zoomの部屋に居残って、いつまでもお喋りしていた。君の声を一言でも多く聞いていたかったから、眠いのをこらえて机にもたれながら、スピーカー越しに届く、すこし癖のある声に耳を傾けていたんだ。 ある日、わたしたちは仲良くなった。一人、またひとりとルームから人が抜けて二人きりになったわたしたちは、延々と話し続けた。どちらからともなく話題がうまれて、笑いが尽きなかった。気づけば窓の外は白み始めていて、あわててわたしたちは会話

          Zoomの居残りから

          授業は最後まで、オンラインだった。 社会についてよく語り合っていた。春の日の私たちは、興味分野が似ていたから。 一緒に取った秋の授業は、学校で受けられるだろう。 そう願って微笑み合ったけれど、今の私たちは、言葉を交わすことさえない。 テストはレポートに変更となった。

          授業は最後まで、オンラインだった。 社会についてよく語り合っていた。春の日の私たちは、興味分野が似ていたから。 一緒に取った秋の授業は、学校で受けられるだろう。 そう願って微笑み合ったけれど、今の私たちは、言葉を交わすことさえない。 テストはレポートに変更となった。