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20年アイスホッケーファンやってるおっさんがアニメ「プラオレ!」OP曲「ファイオー・ファイト!」を解説してみる

初めまして、わたくし採譜委員長と申します。
今回衝動的にnoteで投稿するテーマはアニソンです。

2021年秋のアニメ「プラオレ!」は女子アイスホッケーをテーマにした作品で、栃木県日光市を舞台としております。実在のアイスホッケークラブ「HC栃木日光アイスバックス」が全面協力・監修しております。

そのOP曲である「ファイオー・ファイト!」(唄:SMILE PRINCESS)についてここでアイスホッケーファン目線から解説していきます。


作中のテーマとして「心の絆でパックを繋げ」というセリフが出てきますが、このOP曲にはそういったテーマに沿った歌詞はあまり出てきません。
プラオレ!は今のところ、初心者としてスタートした女の子達のプレーヤーとしての成長物語といった感じで、トッププレーヤーを目指すというより目の前の課題をクリアしていく筋書きであります。

ここでその「ファイオー・ファイト!」の歌詞カードをアップします。このためにわざわざ25年ぶりにアニメイトへ行って11月24日発売のCDをフラゲしてきました。

歌詞を読んでまず思うのは、「このままでは良くない、何かアクションを起こさねばならない」という、おおよそ作中の女の子達の状況とは掛け離れてるよね、ということ。


まあもったいぶるほどの話でもないのでズバッと書きますが、この「ファイオー・ファイト!」の歌詞は
『日本アイスホッケーの置かれている状況に対する叫びや叱咤激励』
が綴られていると思います。
その背景などを併せてご紹介しながら、読み解いていきます。

誰かが何とかすると どこかで願っていた
昔はよかったなんて 思い出話はもう飽きたよ
足りないものを数えて言い訳作るクセは
体質や習慣になって ヒョウジョウをなくしてく

まさに、この20年の日本アイスホッケー界で繰り返し聞かれてきたこの言葉から、歌が始まります。
1998年、長野冬季五輪を境に日本アイスホッケーは凋落の一途を辿ることとなります。
低迷、縮小、弱体化。広辞苑のあらゆるネガティブワードを全て集めたかのような状況に陥ります。今まで同じ不人気競技だと思っていた色んなスポーツが、いつしか影も踏めなくなり、背中を追うことすらできず、自分達がどこにいるのかさえ見失い、たまにニュースになる時は実業団チームの廃部発表。次々とファンは離れていきました。
いつしかそれが当たり前になって、誰も何とも思わなくなって…の無限ループでした。
表情を「ヒョウジョウ」としたのは氷上と掛けたかったのかもしれません。

ずっと このまま在ると思うな
時間は残酷なもの
前へ先へあとで笑え
進まザルをえないよと
おいこまれていく

誰もが「このままじゃほんとにヤバい」と思いつつも、有効な手立てもなく時間だけが経過していって、でももうタイムリミットなんです。少子化、競技人口の減少、スケートリンクの減少、さらには温暖化というウィンタースポーツへの逆風など、競技を取り巻く環境は日一日毎に悪くなっています。このまま何もしないのは座して死を待つことに等しい。

Hockey!
ファイオー・ファイト!戦え
ファイオー・ファイト!フェイスオフ
うつむいていたのは 走るため
黙るためじゃない
OK!
ファイオー・ファイト!自分が 輝きだしていないと
後ろから本気で ついてこないはずだよ

この作品を低迷するアイスホッケー界の起爆剤としたい「覚悟」が窺えます。
プラオレ!のエグゼクティブプロデューサーである落合雅也さん(@masaya28)は自身も早稲田大学のアイスホッケー部でプレーし、98年前後の絶頂期からの転落を見てきた方です。
おそらくこの「ファイオー・ファイト!」にも、落合さんの日本アイスホッケー界への思いが随所にちりばめられていると思われます。

愚直に頑張ることは ひそかな春の息吹
いつかフィールドいっぱいに 目覚めるうねりへと立ち上がる
寝ぼけたいつも通りを 歩いた冬の道で
一度 壊さなきゃダメかって 薄氷を踏みつぶす

二番冒頭、打って変わってプラオレ!の世界観に少し近づきますが、ここの部分も「今頑張らないヤツに春は来ない」という意味にも取れます。
薄氷の部分は、今のアイスホッケー界に蔓延する、厭世感のようなものを踏みつぶしたい、のかもしれません。

きっと挑戦始めたパックは 私にまた跳ね返る
いいよ いくよ 好きを 試せ
覚悟せザルをえないよと 研ぎ澄まされてく

これはアイスホッケーの競技性が込められてますね。フェンスボードがあって、パックは誰かの元に跳ね返る。だけれど、準備と覚悟がなければ、パックをコントロールすることはできません。

Nikko!
燦々 Sun ヒノヒカリ
まぶしいフェイスオフ
うつむいていたのは 走るため
黙るためじゃない
Let's go!
みんなで勇気を チャレンジできる未来を
最高のゲームは 一人ではできない

冒頭で説明しましたが、舞台は栃木県日光市です。ここまでアイスホッケーの崖っぷちぶりばかり話してきましたが、日光市も過疎という現実と戦っています。世界遺産の街も、超高齢社会とは無縁でいられないのです。コロナ禍で激減したインバウンドに対して、国内需要を喚起したいという思惑もあるはずです。ちなみに、ヒノヒカリ(日の光)は栃木県民の歌にも歌詞として出てきます。

そしてようやくここで、チームとしての絆や友情といったワードが登場します。そしてそれはここまで読み解いてきた日本アイスホッケーの未来に掛かる部分でもあります。この20年、日本アイスホッケーにはドラマ「プライド」という突風が吹いたこともありましたが、その後の競技への追い風として全く活かせず終わったという苦い記憶があります。仮にアニメが当たったとしても、その後のアクションが大事ということですね。それも単発で終わらず、次々と矢を射掛けるような施策を、みんなで。

軽い気持ちだったらケガするよ
勝負に 火傷しそうな恋してる

アイスホッケーはケガの多いスポーツということですね。初めて恋愛関係のワードが出ましたが、専門家ではないので解説は割愛します。

今だ 変われ 今を 糧に 学べ 挑め
うまくなりたい 強くなりたい いつだ?ここだ
前へ 先へ あとで 笑え
伝えザルをえないよと

強い言葉の乱れ打ち。正直女の子がアイスホッケーやるだけの作品でここまでの単語が並ぶとは普通思いません。ここまで読んでいただけたならおわかりかと思いますが、彼女達は日本アイスホッケー界の置かれた絶対絶命の盤面をひっくり返す為の希望なんです。我々は祈ります。今だ 変われ、と。そして所々に出てくる「ザル」は日光市が誇る世界遺産東照宮の三猿と、作中のチーム「日光ドリームモンキーズ」のマスコット「もんきち」を引っ掛けているものと思われます。

勝ちを獲りにいく
Hockey!
ファイオー・ファイト!戦え
ファイオー・ファイト!フェイスオフ
うつむいたままでは 逆境を越えていかれない
OK!
ファイオー・ファイト!自分が 輝きだしていないと
後ろから本気で ついてこないはずだよ

最後にきて、オッサンの涙腺が崩壊しました。この20年、特に2010年代のアイスホッケー男子日本代表は、やる前から結果がわかってる試合ばかりでした。口では「五輪を目指す」と言いながら、その檜舞台は天体観測レベルの遥か別世界のお話としか思えない状況。どう負けるか、が見所。スマイルジャパン(アイスホッケー女子日本代表の愛称)は、五輪本戦で火花散るバトルを見せてくれているけれど、残念ながら五輪報道のメインとなる「メダル争い確実」とまではならない(ので、大会前の露出は少ない)大多数のファンのメンタリティには、負け癖が染み付いているに違いない。
だけど、SMILE PRINCESSが歌う「勝ちを獲りにいく」「うつむいたままでは逆境を越えていかれない」という歌詞は、そんな負け犬メンタリティを持つ僕の心を、明確に撃ち抜いた。壁は高くとも、絶対やるんだという強固な意志。

僕らだって、心に勇気を携えて世界の強豪と本気で戦う男子日本代表が見たい!表彰式でメダルを首にかけられて最高の笑顔のスマイルジャパンを見たい! 
僕の心の導火線に、火が点いた瞬間でした。

正直40を過ぎて、よもやアニソンを聞いて涙ぐむとは思いませんでした。落合さんがこの曲に込めた思いに魂が揺さぶられました。落合さん自身、商業アニメなのできちんと回収できるようにしないと意味が無い(というような内容)とおっしゃってましたが、それでも「プラオレ!」は単なるスポーツ×アニメのコラボに留まらないと思います。これは僕が勝手に思ってるだけですが、このアニメは『日本アイスホッケーの浮沈を左右する乾坤一擲の作品』だと考えます。

僕はこの解説が、プラオレ!からアイスホッケーや日光を知った人に届いてほしいと願います。プラオレ!をきっかけに日光霧降アイスアリーナに観戦に来られる全ての皆さんを歓迎します。霧降アイスアリーナでの試合には、アイスバックスが培った国内最高峰のエンターテイメントがあります。どうか、アイスホッケーを知った方には、アイスホッケーに足を運んでいただきたく、お願い申し上げます。最後に今季のHC栃木日光アイスバックスの霧降アイスアリーナでのホームゲームスケジュールをご紹介いたします。感染症対策の為、座席数を減らしており、チケットが手に入りにくい状況が続いております。お早めにお求めください。

素敵な歌詞を書いてくださった只野菜摘さん(@tadanonatsu)胸を打つ歌唱を見せていただいたSMILE PRINCESS(@smileprincessPR)の皆さん、ありがとうございました。


#プラオレ
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