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斎子六助忍 人間を憎んだ鬼殺隊

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さいころくすけ しのぶ


むかし、鬼狩り様の中に
人間を憎むようになった隊員がおった。

名を、斎子六助忍(さいころすけ しのぶ)
年齢36歳
6月6日生まれのA型

やや遠縁だが、親戚に桑島慈悟郎がいた。
鬼殺隊の存在は幼い頃より知っていた。

家柄もそれなりによかった。
正義感が人一倍強かった忍は
鬼の存在を知りながら何もしない家族や親族に嫌気がさしていた。

だから自然と自分は将来、鬼殺隊になると考えていた。

「誰も幸せになりたくて幸せになったわけじゃない」
「誰も不幸になりたくて不幸になったわけじゃない」
「だけど自分の生き方は選べる」
「幸せのまま何も知らずに何も気にせず生きるのか?」
「自らの幸せを捨て、命をかけて人を守るのか?」

忍15歳
桑島慈吾郎に弟子入りをする。
しかし、忍に雷の呼吸の適正はなかった。

「忍、お前が努力家なのはよく知っておる」
「だが、お前は真面目過ぎる」
「そして優し過ぎるんじゃ」
「雷の呼吸はな、激情家、特に色恋に夢中な色情家に適性がある」

忍は、桑島慈吾郎の元を去った。
しかし諦めたわけではない。
自分に合った呼吸を探した。
桑島の紹介で音柱、花柱に弟子入りし、修行を重ねた。
最終的に炎の呼吸に適性があることがわかった。


炎柱:煉獄槇寿郎


忍は煉獄家を訪ねた。

煉獄槇寿郎と忍はすぐに打ち解けた。
お互いに正義感が強く、真面目で誠実なところが似ていた。

忍は煉獄に弟子入りをした。
しかし、それでもうまく呼吸が使えなかった。

「忍、やはりお前は優しすぎる」
「潔癖と言い換える事ができるかもしれない」
「攻撃に転じる時に、どうしても覚悟ができない」
「俺にはそう見える」
「鬼を殺せないのなら、鬼殺隊はやめた方がいい」

忍18歳
人生の岐路に立つ


「2人ともそんなに思い詰めずに、花火でもしませんか?」
その日は涼しく、西瓜を食べながら瑠花と杏寿郎の誘いで庭で花火をした。
忍は線香花火に火をつけ見つめる。
「私に才能はないのか」
「鬼殺隊とは、正義感だけで務まるものではないということか」

そんな後ろ向きな考えをしている時に、煉獄の息子の杏寿郎は言った。
「僕は線香花火がいちばん好きだ」
「他の花火の引き立て役みたいなものだけど」
「優しい光と静かに燃える線香花火はなくてはならない花火だと思う」

忍の中で何かが閃いた。
優しすぎるがために鬼を滅殺する覚悟ができない。
ならば他の隊士の引き立て役に徹すればいい。

土を耕す者
種を植える者
水を与える者
収穫する者
それぞれにそれぞれの役割があるのではないか。

忍18歳にして独自を習得する。
雷の呼吸、花の呼吸、音の呼吸を土台とし、
炎の呼吸の派生としてたどり着いた彼独自の呼吸。

「花火の呼吸」

そして、忍は鬼殺隊入隊試験に合格した。
煉獄と忍の2人はよく組んで任務にあたった。


煉獄槇寿郎と斎子六助忍


花火の呼吸は、鬼本体を攻撃するのではない。
土埃を巻き上げ
草木を切り刻み
真空波を引き起こす
それらの技で敵を撹乱し
敵の次の攻撃をも視覚化した。
煉獄が鬼の首を切るその確率と正確さを向上させた。

花火の呼吸は、文字通り花火のように多彩である。
あえて囮になるような剣技もある。
鬼の次の動きを読みやすくする。
煉獄の炎の呼吸との相性はとても良かった。
煉獄と忍の鬼討伐は鬼殺隊の中でも頭ひとつ抜けて多かった。
しかし、忍自身が鬼を狩った実績は、実力の割に極めて少なかった。
それは戦いの場面作りに忍は徹していたからだ。
仲間想いで欲のない忍ゆえ、常に鬼の首を切るのは他の隊士であった。

忍の鎹鴉「樹」

ある夜、
鎹鴉より指令が入る。
煉獄と忍は八丈島へ向かった。
旅人が何人も行方不明になると言う噂があったからだ。

「煉獄さん・・・」
「この屋敷、この島には相応しくないほど豪勢だ」

「ああ、何かきな臭いモノを感じる」

「煉獄さんは周辺を調査してください」
「私は一旦屋敷に潜入を試みてみます」

「わかった、頼んだぞ」


BingAI(八丈島 豪邸 お屋敷)


忍は屋敷に忍び込むとすぐに異変に気づいた。
まるでゴミのように小さな頭蓋骨があちこちに転がっていたのだ。

「子供ばかりを食べる鬼がいるのか?」
「いや、ここはそれなりに多くの人間たちが住んでいる」

(では、これは人間の仕業・・・?)

忍はこれまでにないほどの恐怖と疑念を押し殺した。
これは鬼の仕業だと自分に言い聞かせた。

その時、小さな子の悲鳴が聞こえた。
忍は考えるのをやめた。
とにかく声のする方へ走った。
忍は子供の悲鳴が聞こえる部屋の扉を開けると我が目を疑った。
女たちが笑顔で蛇の半身をした鬼に女の子を差し出していた。
女たちは女児の口を裂き、ハラワタを抉り出し鬼に差し出していた。

笑顔で。
そう笑顔で。


「お前たち、何をしてるんだ・・・」
「そいつは鬼だぞ? なんでそんな小さな子供を・・・」

「なんだあんたは?」
「あたし達の生活の邪魔をしないでおくれ!」
「どこから入って来た!」
「見られたからには生かしておくわけにはいかないよ!」

「まさか、あの無数に転がる子供の頭蓋骨・・・」
「全部あなたたちが・・・?!」
「子供だぞ!子供が食われて平気なのか!」

「あれは私たちが産んだ子供だ」
「私たちの物をどうしようが言われる筋合いはない!」
「これで幸せなんだよ」
「他人にどうこう言ってほしくないんだ」
「私たちの幸せのためにお願いします!主さま!」
「あいつを殺してください!」

「無、無理だ」
「あいつは鬼狩り」
「あたしは鬼狩りとは戦いたくない!ヒィー!!」

「そんな、主さま!行かないで!!」
「子供ならいくらでも産みます!差し出します!」
「私たちほど美しい子を産める者はいません!」
「どうか私たちの幸せのために!!」

忍はその場にいた人間を全員殺した。



場面は変わり
煉獄が屋敷から逃げ出した蛇鬼を討伐した。

「やはり鬼がいた」
「屋敷から飛び出し男の子を食おうとしていた」
「すんでのところで助けることができたが・・・」
「この屋敷、何か様子がおかしい」
「すぐに忍と合流せねば」

BingAI(屋敷の門を開ける)


「な!?忍これは!!」
「この死体の数、いや、それよりこれは刀で切られた死体」
「鬼の仕業ではない・・・」
「忍、まさかお前が人間を殺したのか?」

「煉獄さん、ここに人間はいませんでした」
「いたのは鬼畜生だけです」
「だから、私が殺した」
「何か問題ありますか?」



「こんなこと、報告できない」
「鎹鴉よ、頼む」
「蛇鬼が殺したのことにしてくれないか」

ここから忍は変わってしまった。
人間を憎むようになった。
仲間の死にも涙一つ流さなくなった。
鬼狩りも金のためと割り切り弱い鬼を悪戯に狩るようになった。

煉獄も忍の変貌ぶりに落胆した。
人間に対して不信感を抱いたのは煉獄も同じだった。
それでも柱ゆえ他の隊士の見本となるよう振る舞い続けた。
酒の量は日々増えた。
「俺は弟子1人まともに育てることができなかった」
「俺に柱としての資質はあるのか?」
「育手としての資質があるのか?」

そんな葛藤の中、妻が他界した。
炎の呼吸は始まりの呼吸の劣化でしかないと知った。
息子が鬼殺隊に入隊し、自分以上の人格と才覚を表していた。

弟子が不埒な考えへと変わってしまった傷が癒えぬまま
新たな痛みが煉獄を次々と襲った。

「煉獄さん、あなたが助けた少年が柱になったそうだよ」


「煉獄さん、あなたが助けた少年が柱になったそうだよ」


「どうでもいい」
「もう俺には何もかもどうでもいいんだ」




「サイコ隊長!!助けて!!!」
「このままでは隊が、隊が全滅してしまう!」

「どうでもいいんだよ、お前らなんか」
「俺1人が生き延びて出世できればな」

「そ、そんな、部下を見殺しにするのか!」
「あんたはそれでも人間か!!」

「人間?」
「俺はとっくに人間を辞めたんだ」
「人間なんて薄汚い生き物なんてとっくにな」


斎子六助忍
人間を憎んだ鬼殺隊にはもはや
鬼も人間も躊躇いなく切ることができていた。



花火の呼吸 とは

花火の呼吸は「型」ではなく「術式」である。
サーチ・分析をメインとした補佐・援護を目的とした呼吸だからだ。

花火の呼吸の術式を展開(満開に)するとき「花よ咲く」と言う。
これは仲間に目を凝らせという合図である。

「(これから場を作る。分析する。チャンスを作るぞ!)」
「じゅつしき てんかい はかいさつ!」

花火の呼吸一覧

・花火の呼吸 壱の術式満開 花よ咲く
御乱心(ごらんしん):刀を高速で振り回し、月光を乱反射させ目を眩ます。朝日が昇りはじめれば、刀で太陽を反射させ鬼を焼く事も可能。


・花火の呼吸 弐の術式満開 花よ咲く
空四季(くうしき):火薬の入った玉を地面に叩きつけたり刀で切ったりして4種の空砲のような爆音を轟かせ鬼を撹乱する技。春夏秋冬をイメージした爆音で、収穫の時期である「秋の音」が鬼を狩るタイミングであると煉獄や他の隊士と情報が共有されている。


・花火の呼吸 参の術式満開 花よ咲く
乱視鬼(らんしき):土や草花を撒き散らし乱舞させ小石を鬼の眼球めがけて飛ばし鬼の目を眩ませる技。


・花火の呼吸 死の術式満開 花よ咲く
流閃群光(りゅうせんぐんこう):炎をまとった龍の群れの閃光が敵を攻撃する花火の呼吸の強力な攻撃技。その威力と鬼への攻撃力は柱の攻撃力に匹敵するほどの捨て身の攻撃特化技。


・花火の呼吸 伍の術式満開 花よ咲く
冠先割(かむろさきわり):呼吸が続く限り斬りかかる連続攻撃に加え、地面や周囲の木々、草花をも舞い散らす撹乱技。連続して斬り掛かっているが、実のところは防御に徹していて、敵に刀が届かなくても、攻撃が当たらなくても良い。仲間が土留めを刺すための囮であり、または仲間を守る技でもある。


・花火の呼吸 陸の術式満開 花よ咲く
飛遊星千輪(ひゆうせいせんりん):火薬の入った玉を地面に叩きつけたり刀で切ったりして爆発させ、星のような金属片を散布する事で鬼の状態をサーチする技。およそ千通りの探りがあり、そこからステータスを分析する。


・花火の呼吸 漆の術式満開 花よ咲く
万葉関柳(まんようせんやなぎ):林や森で有効な技。カラスが巣を守るための威嚇として人に枝などを落とす。そのような感じで上空の木々や葉を切り落とし敵の注意を散乱させ、尚且つステータスの分析もする。


・花火の呼吸 捌の術式満開 花よ咲く
鬼芯八重芯(きしんやえしん):雷の呼吸の修行より会得した特攻俊足技。ただし雷の呼吸のような居合切りではなく突き技。突いたところでダメージを与えられないのは承知の上で、あくまで囮役としての特攻技で、ヒットアンドアウェイで速退散し、同時に煉獄が炎の呼吸の最終奥義「煉獄」で仕留める連携ありきの技。


・花火の呼吸 玖の術式満開 花よ咲く
青銀乱残光(あおぎんらんざんこう):冷たい月や雪のような青白い色へと変化した日輪刀より、灼熱の空気をその場に漂わせ、鬼の再生を遅らせる技。火は青いほど熱が高い。しかし、冷たく見える日輪刀に鬼は油断する。命を燃やすことで寿命と引き換えに刀の熱を上げている終わりの術式。ん)

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