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第49回感染管理抄読会:COVID-19パンデミック時の医療従事者の身体的健康に対する個人防護具使用の影響:システマティックレビューとメタアナリシス

10月の抄読会で取り上げた論文のご紹介です。

【今回の論文を選んだ理由】
コロナ禍において、職場でのPPE着用は義務化していますが、暑さや不快感から徹底した着用には職員間で差があるのが現状です。PPEを着用することによる有害事象やその予防、職場で出来る工夫について理解を深めたいと思い選びました。
また、レビュー論文のクリティークを行ったことがないため、皆さんからご意見を頂きながら取り組みたいと思いました。

【今回選んだ論文】
Impact of personal protective equipment use on health care workers’ physical health during the COVID-19 pandemic: A systematic review and meta-analysis

COVID-19パンデミック時の医療従事者の身体的健康に対する個人防護具使用の影響:システマティックレビューとメタアナリシス

【論文の書誌情報】
American Journal of Infection Control: 49 (2021) 1305-1315
DOI: 10.1016/j.ajic.2021.04.084

【抄録】
背景
:コロナウイルス感染症2019(COVID-19)のパンデミックの際、医療従事者(HCW)は個人用保護具(PPE)の着用が義務付けられている。PPE使用がHCWの身体的健康に与える影響を評価し、PPE使用による有害事象のリスク上昇に関連する要因を検討した。
方法:Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-AnalysisとCochrane criteriaを適用した。2020年1月1日から2020年12月27日に、PubMed, Medline, Scopus, ProQuest, CINAHL, medRxiv を検索した。
結果:レビューには11,746人のHCWを対象とした14件の研究が含まれた。HCWの有害事象の推定有病率は78%であり、研究間で42.8%から95.1%の幅があった。PPE使用によるHCWの有害事象のリスクと関連していたのは肥満、糖尿病、喫煙、頭痛の既往、PPEを着用するシフト時間の長さ、PPEを着用する連続日数の増加、COVID-19確定患者または疑い患者への曝露の増加であった。
結論:PPE使用によるHCWの有害事象の発生頻度は非常に高い。医療施設は、COVID-19パンデミックの間、PPE使用による有害事象を予防しHCWへの被害を最小化するため、必要な予防措置を講じるとともに、作業条件の変更を行うべきである。

【Discussionの内容、感想】
システマティックレビューでは、変数の定義、どのように検索・選定しているかが重要であり、今回の論文については、適切なデータソースを使用しているのか、英語論文だけで良いのか、検索キーワードにPICOが反映されているのか等、方法に関しての不十分さが多く、必要な論文を拾いきれていないのではないかとの指摘がありました。また、選定に関するフローチャートや各研究の特徴を表す表の記載はあるものの、情報量が少なく、様々なバイアスが含まれていることが考えられました。最終的に、変数やアウトカムの定義、検索方法の不十分さにより、何を測っているのかが不明確となり、得られた結果を支持する的確な先行研究を用いた考察にはつながっていないとのDiscussionとなりました。
SR論文だからと書かれていることを鵜呑みにせず、またチェックリストの項目に対して何らかの記載あるから良いのではなく、その内容をクリティークすることの重要性を学びました。検索方法については、自分自身が論文をレビューするときの参考になり、勉強になりました。

(M.S.)


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