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第43回感染管理抄読会:COVID-19パンデミック期間中のデバイス関連サーベイランスの必要性

2022年3月の感染管理抄読会で取り上げた論文です。

この論文を選択した理由:
コロナ対応で通常の感染管理業務やサーベイランスをおろそかにしたまま年度末を迎えてしまいました。まだコロナ収束までには時間がかかりそうですが、次年度はしっかりサーベイランスを行って改善活動をしていきたいとの反省からこの文献にしました。

Coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic, central-line–associated bloodstream infection (CLABSI), and catheter-associated urinary tract infection (CAUTI): The urgent need to refocus on hardwiring prevention efforts
COVID-19パンデミックと中心ライン関連血流感染CLABSIおよびカテーテル感染尿路感染CAUTI:予防のための取り組みを緊急に強化する必要性

【掲載誌】
Infection Control & Hospital Epidemiology. 2022;43(1):26-31.
doi: 10.1017/ice.2021.70.

【抄録】
背景:2019年のコロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは、米国の入院に大きく影響し、プロセスと患者集団に影響を与えた。
目的:病院における中心静脈関連血流感染症(CLABSI)およびカテーテル関連尿路感染症(CAUTI)に対するCOVID-19パンデミックの影響を評価すること。
方法:米国の78施設でCOVID-19流行前の12ヵ月とパンデミック中の6ヵ月のCLABSIとCAUTIの発生率を後ろ向きに調査した。
結果:2つの研究期間中、中心静脈カテーテルの日数は795,022日、尿道カテーテルの日数は817,267日であった。COVID-19パンデミック前と比較して、CLABSI発生率は、パンデミック期間中に1,000ライン日あたり0.56から0.85に51.0%増加し(P <.001)、10,000患者日あたり1.00から1.64と62.9%増加した(P < .001)。COVID-19患者が1か月の入院患者の10%以上を占める病院は、5%未満の病院と比べてパンデミック期間中CLABSIのNHSNデバイス標準化感染率が2.38倍高かった(P = .004)。コアグラーゼ陰性ブドウ球菌CLABSIは1,000ライン日あたり0.07から0.17イベントに130%増加し(P <.001)、カンジダ属菌は1,000ライン日あたり0.14から0.21に56.9%増加した(P = .01)。対照的に、CAUTIでは有意な変化は確認さなかった(1,000カテーテル日あたり0.86対0.77; P = .19)。
結論:COVID-19のパンデミックは、CLABSIの大幅な増加と関連していたが、CAUTIとは関連していなかった。我々の調査結果は、安全な環境を維持するために最適なラインケアとパフォーマンスに関する定期的なフィードバックのプロセスの重要性を強調している。

【ディスカッション内容&感想】
この2年、COVID-19対応が優先されてしまい、タイムリーな医療関連感染サーベイランスの実施をはじめデバイス管理のモニタリングや介入が十分に行えていないことの反省からこの文献を選んだ。
この後ろ向き調査では、COVID-19のパンデミック前後でCLABSIの発生率は有意に増加したが、CAUTIは増加しなかった。COVID-19患者を多く受け入れている病院のほうがCLABSIの発生率は高くなっており、微生物学的特徴としてコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)が増加していた。パンデミックよる病棟編成や人員配置の変更があったこと、慣れない個人防護具の着用でデバイス管理を行うことの操作性の悪さ、通常行われていたデバイスラウンドの中止などが感染リスクを高めた要因として考えられ、また、パンデミック前後で患者層が大きく異なっていた可能性があるが、それらに関する情報が「結果」にないまま考察されていたことは残念であった。結果と考察の書き方についても考えさせられる文献であった。

(M.T.)

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