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骨・軟部腫瘍

骨軟部腫瘍について知っておきたいこと

注)自分の専門医試験対策用にまとめたものです。間違いがある可能性もあるので発見した際はやさしく教えていただけると幸いです。


悪性腫瘍の好発部位

脊索腫
脊索腫は仙椎に最も多く発生しますが、他にも頭蓋底の斜台や頚椎にも発生することがあります。稀な腫瘍であり、慢性的な痛みや神経症状が特徴です。手術が第一選択ですが、放射線治療も有効です。

軟骨肉腫
軟骨肉腫は骨盤に最も多く発生し、大腿骨、上腕骨、脛骨、肋骨、肩甲骨にも見られます。これは骨の軟骨細胞から発生する腫瘍であり、進行が遅いですが、局所再発や転移が多いです。手術が主な治療法で、化学療法や放射線治療はあまり効果的ではありません。

骨肉腫
骨肉腫は大腿骨遠位や脛骨近位に多く発生し、特に若年者に多く見られます。急速に進行するため、早期診断と化学療法、手術の組み合わせが重要です。MRIやCTスキャンでの画像診断が役立ちます。

傍骨性骨肉腫
傍骨性骨肉腫は大腿骨遠位後面に多く発生し、比較的良性であるが、局所再発を防ぐために広範囲の切除が必要です。予後は良好です。

Ewing肉腫
Ewing肉腫は骨盤が最も多く、次いで大腿骨に発生し、多彩な部位に生じることがあります。10代から20代に多く見られ、化学療法と放射線療法、手術の併用が効果的です。

仙骨の骨腫瘍

仙骨に発生する骨腫瘍の中では、脊索腫とがんの骨転移がそれぞれ1/3を占めます。その他に骨巨細胞腫や軟骨肉腫も見られます。S1椎体前面には重要な血管や神経が存在するため、手術時には前方からのアプローチが必要です。これにより安全な手術が可能となります。

骨腫瘍の好発年齢

骨巨細胞腫
骨巨細胞腫は20~30代に多く見られ、性差はありません。治療には病巣掻爬や骨移植が行われますが、再発率が高いため、液体窒素処理やアルコール処理、フェノール処理などの局所補助療法が行われます。再発しやすいため、治療後の長期的なフォローアップが必要です。放射線療法や新しい分子標的療法も研究されています。

傍骨性骨肉腫
傍骨性骨肉腫は30代に好発し、早期発見と適切な治療が行われれば、予後は良好です。

軟骨肉腫
軟骨肉腫は30~50代に好発し、遅発性のため定期的な検診が推奨されます。新しい治療法として免疫療法の研究が進んでいます。

多発性骨髄腫
多発性骨髄腫は50~60代に多く発生し、骨破壊や貧血、腎不全などの全身症状が見られます。全身管理が重要です。

多発性骨腫瘍

骨軟骨腫
骨軟骨腫は単発性と多発性があり、多発性の場合は遺伝傾向が強く、5~25%のケースで悪性化することがあります。悪性転化するリスクがあるため、定期的な画像診断とフォローアップが必要です。

線維性骨異形成
線維性骨異形成は単発性と多発性があり、多発性の場合は色素沈着や思春期早発症を伴うことがあります。これはAlbright症候群と呼ばれます。骨の変形や脆弱性が問題となるため、外科的な治療や骨強化療法が必要な場合があります。

Langerhans細胞組織球症
Langerhans細胞組織球症は単発性あるいは多発性の骨に限局した病変を示し、良性病変で自然消失することもあります。重症例ではステロイドや化学療法が必要です。

骨膜反応

骨膜反応の種類や特徴は診断において重要な指標です。画像診断での評価が不可欠です。Langerhans細胞組織球症は脊椎や肩甲骨に多く見られ、長管骨に発生した場合は骨膜反応があり、悪性骨腫瘍との鑑別が必要です。また、類骨骨腫はnidusに一致した部位にわずかな骨膜反応を呈することがあります。

病理診断・免疫組織所見

免疫組織化学染色は、腫瘍の種類や起源を特定するのに重要です。診断精度を高めるために複数のマーカーを使用します。

筋原性腫瘍

  • 平滑筋系腫瘍: SMA陽性

  • 横紋筋系腫瘍: Myoglobin, MyoD1陽性

がん骨転移

  • EMA陽性

  • サイトケラチン陽性

神経原性腫瘍

  • S-100タンパク質陽性

  • NSE, N-CAM陽性

軟骨肉腫

  • S-100タンパク質陽性

脊索腫

  • S-100タンパク質, Bracyury, サイトケラチン, EMA陽性

放射線照射後肉腫

放射線照射後に肉腫が発症するまでには、2~5年の幅があり、平均14年です。骨肉腫、繊維肉腫、未分化多形肉腫などが見られます。治療が難しく予後が不良なため、定期的なフォローアップと早期発見が重要です。

骨巨細胞腫

骨巨細胞腫は20~30代に多く見られ、性差はありません。治療には病巣掻爬や骨移植が行われますが、再発率が高いため、液体窒素処理やアルコール処理、フェノール処理などの局所補助療法が行われます。再発率が高いため、術後の長期フォローアップが重要です。新しい治療法としてデノスマブが研究されています。

骨肉腫

通常骨肉腫の5年生存率は化学療法の進歩により70%まで上昇しました。傍骨性骨肉腫は90%以上の生存率を誇ります。化学療法の副作用としては、ドキソルビシンによる脱毛や心筋障害、イホスファミドによる骨髄抑制や出血性膀胱炎、エトポシドによる骨髄抑制、シスプラチンによる消化管障害や腎機能障害、聴力障害が重要です。化学療法の進歩により、予後は改善していますが、副作用の管理が重要です。新しい治療法として免疫療法が注目されています。

Ewing肉腫

Ewing肉腫は初発症状として疼痛や腫脹が見られ、発熱や白血球増多、CRP陽性などの炎症症状もあります。放射線感受性が高く、早期診断と多剤併用化学療法が鍵となります。再発リスクが高いため、長期的なフォローアップが必要です。

軟骨肉腫

軟骨肉腫は灰白淡蒼白色で、石灰化を伴うことがあり、小嚢胞を作る粘液様変化を示す場合には悪性を疑います。内軟骨腫と比較して、細胞密度の増加や核の増大、腫瘍細胞の大小不同、多形性などが特徴です。悪性度が高いため、早期の広範囲切除が推奨されます。新しい治療法として分子標的療法が研究されています。

悪性軟部腫瘍

脂肪肉腫が最も高頻度で、未分化型肉腫や滑膜肉腫が続きます。MRIのT2WIで低信号を示すことがあります。横紋筋肉腫や滑膜肉腫などはリンパ節転移を起こすことがあります。

代表的な軟部腫瘍

脂肪肉腫
脂肪肉腫は40歳以降に好発し、大腿部や体幹、後腹膜に発生することが多いです。組織学的に高分化型、脱分化型、粘液型、多形型に分類され、高分化型は脱分化が起こらなければ予後良好、脱分化型は予後不良です。

滑膜肉腫
滑膜肉腫は若年成人に好発し、男性に多く、肺や骨、リンパ節に転移しやすいです。比較的緩徐に進行するが、局所再発や遠隔転移をきたしやすく、5年生存率は50〜60%です。

類上皮肉腫
類上皮肉腫は前腕や手に好発し、若年男性に多く、疼痛や圧痛はなく比較的緩徐に進行します。肺以外にはリンパ節転移することが特徴です。

グロムス腫瘍
グロムス腫瘍は毛細血管の先端の動静脈吻合部の血管周囲に存在する腫瘍で、爪下に多く発生します。30~60歳に見られ、腫瘤は小さく赤紫の斑点状で熱感はないが著明な圧痛や自発痛が特徴です。

明細胞肉腫
明細胞肉腫は20~40歳にまれに見られ、比較的緩徐に成長しますが、遠隔転移しやすいです。転移部位としては肺や骨、リンパ節が多く、メラニンの沈着を認めることがあります。

腹壁外デスモイド
腹壁外デスモイドは思春期から40代の女性に好発し、四肢、体幹、頚部に発生します。遠隔転移は起こさないものの再発しやすいため、広範囲切除が推奨されます。ただし、自然に縮小することもあるため、経過観察とすることもあります。化学療法やホルモン療法、トラニラスト、COX2阻害の有効性も報告されています。

胞巣状軟部肉腫
胞巣状軟部肉腫は若年成人女性に多く、極めて血管に富む腫瘍であり、拍動を触知したり血管性雑音を聴取したりする場合があります。肺や骨、脳に高率に転移を生じ、5年生存率は70%とされていますが、長期追跡では予後不良です。MRIではT1WIで筋肉に比して高信号、T2WIで極めて高信号を示します。

未分化多形肉腫
未分化多形肉腫は中高年に好発し、広範囲切除が原則です。花むしろ模様が特徴的です。

遺伝子診断

遺伝子診断の重要性は腫瘍の種類や起源を特定することにあります。各腫瘍の具体的な遺伝子異常についても説明します。

  • 滑膜肉腫: SS18(SYT)-SSX

  • 粘液型脂肪肉腫: TLS(FUS)-CHOP

  • 胞巣状軟部肉腫: ASPL-TFE3

  • Ewing肉腫: EWS-FLI1

  • 明細胞肉腫: EWS-ATF1

軟部腫瘍生検の注意点

生検ルートは大血管や主要神経から距離を取り、術野に展開しないようにします。剥離した部位は腫瘍細胞が広がる可能性があるため、最小限に留めます。

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