ドゥームズデイクロック実況感想②『PLACES WE HAVE NEVER KNOWN~知りもしない土地~』
※この記事にはネタバレが含まれます※
刑務所から連れてこられた2人の犯罪者。女はマイムで、男はマリオネットというらしい。
彼らは過去と現在の話をする。或いはこれらの状況はどこか似かよっているのかもしれないが……白黒で映し出されるのは、かつて彼らが犯した最後の犯罪だ。
ヴェイトはロールシャッハ……便宜上ロールシャッハ二世と呼ぼう。彼を説得し続ける。さながら彼のことを洗脳し続けているかのようだ。
「ロールシャッハ、お前はあるがままに世界を見ている」
「ときに手を汚す必要があると、誰よりも知っているはずだ」
よりによってヴェイトが、多くの人々を自らの才能を見せつけんが為に殺した人間が吐く台詞かと反吐がこみ上げ拳を固めたくなるが、幸いにも彼らに時間は残されていない。
終末は近いのだ。
過去の場面。
子供を持つ母親──ジュリアを罵倒する上司を、マイムは冷たく見下し、侮蔑の表情を浮かべたかと思えば途端にショーめいた顔を作り出す。彼女の武器は細い鋼糸。ピアノ線かもしれないが、サーカスじみた動きの中で無遠慮に突き出された相手の人差し指を切り落とすほどにその狙いは正確だ。
状況は変わる。そこに現れたのは、かつてのDr.マンハッタンだ。彼はマリオネットへと手を差しのべ、次にマイムを見る。彼の脳裏に映るのは未来の映像だろうか。そこには黒いグローブを着けた人物が赤ん坊の写真を見つめている。次のページで、それがロールシャッハ二世から預かった写真を眺めるマイムだと分かる。
本来犯罪者を容赦なく“分解”してきたDr.マンハッタンが起こした奇妙な抑止。彼が2人を殺さなかった理由には意味があると、ヴェイトは断言して見せた。おまけに彼は「肉体でも感情でも、ジョンのことなら知り抜いている」と嘯くが、それは逆に言えば彼はDr.マンハッタンという存在をまるで理解していないとも言える。
──とうとう、終末は訪れた。
「飛行機か?」
という群衆の問い掛けがスーパーマンの存在しないこの世界で放たれるのは実に悪辣なジョークだろう。
酷くギリギリのタイミング。それほどに疑わしい、或いは核ミサイルの直撃によるエネルギーをも利用したかと思わせる閃光がオウルシップを包む。
……場面は変わる。アップになったロールシャッハ二世の顔から、ロールシャッハテストを受けるブルースウェインへと。
世間はあまりいい方向へ向かっていないようだ。あちらのように核ミサイルが今にも降り注ぐというわけではないようだが、少なくともゴッサムという街がバットマンを拒絶する動きを見せている。なにやら『超人理論』なるセオリーが発端だったようだが……。
ルシアスはブルースと口論をする。2人は視点が違うあまりに争っているのようだ。ルシアスはブルースウェインがバットマンをする上で欠かせない人材だ。彼の会社を健全に運営する人物であり、彼がブルースウェインでいられるようにしてくれる存在。口論を見る限りこの手のことはしょっちゅうのようだが、ブルースは彼の言葉を理解しながらも敢えて無視しているように見える。しかし同時に、それは子供じみた強がりにも見えるのだ。
無意識から覚醒へ。顔に加えられた力がロールシャッハのマスクを変えることがよく表現されている。どうやら、彼の本名はレジーというらしい。
ゴッサムへとたどり着いたヴェイトとロールシャッハ二世。世界の歴史、特にこの世界には無数のマンハッタンが存在することを彼らは知る。ヴェイトが頭痛を訴える。これで二度目だ。だが頭痛のタイミングが、彼にとって必要な要素を得たタイミングと重なっているように見えるのは偶然か?
今後も物語を注視する必要がある。
レックスルーサーとブルースウェイン。ほくそ笑み画面を見つめるヴェイトは、二手に別れることを宣言する。彼はより“利口”な方へと赴くらしい。
夜の街をいつも通り徘徊し、悪党どもに恐怖を与えるバットマン。彼は自らの洞窟(ケイブ)へと侵入した気配に気づく。
さらに場面は変わり、ヴェイトはレックスルーサーのオフィスへと現れる。
彼らの会話は実に面白い。称賛され満更でもない顔をするルーサー。その後ヴェイトの世界で起きた出来事を聞くルーサーの顔は暗く塗りつぶされているが、恐らくこの時の彼は笑いを必死で堪えていたはずだ。なにせ天才を自称する人間が、そんな程度の計画で人類を一つに出来ると信じきっていたのだから。ルーサーからすれば、そんなものは飽きるほど考えたプランの一つに過ぎないだろう。
だがそんな場面が消し飛ぶような衝撃が走る。
どういう理屈だろうか。
ルーサーを撃ち、大型拳銃を構えたその男は──コメディアン。
そしてロールシャッハ二世とバットマンは邂逅する。
対称形の恐怖を持つ2人が、巨大な1セントコインを前にして出会った。
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