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アメコミ感想『フラッシュポイント英語版』

まえがき

Amazonプライムというサービスには、kindleにおいて無料で一部の本を読めるプライムリーディングというサービスがあります。

これまでは殆ど使う機会のなかったこのサービスではありますが、最近このプライムリーディングにてアメコミの名作が読めることを知り折に触れて読むようになりました。以前読んだのは『イモータルハルク』でしたか。新しい解釈でのハルクを読んで、そのホラー要素を非常に戦慄したのを覚えています。
なにせ映画版アベンジャーズをリプライズする形で、キャプテンマーベルに対し

「なあキャプテン。僕の秘密を教えようか……常に死んでる……!」

と回答するのですから。ちなみにこのシーンは屈指の見栄えです。そもそもこのハルク存在が不定形じみているというか、ヒーロー要素どこいったな部分がありますが。なので個人的にはアルティメッツ苦手だったり。
だってヒーロー要素あんまりないんだもの('ω')
まあ分厚いアルティメッツ見ただけで何がわかるかって話ではあるんですが……。

閑話休題。

さて、本編へと入る前に問いかけたいことがあります。
「もし時間を逆行することでかつての悲劇を防げたなら、あなたはどうする?」
という問いかけです。これはこの物語と密接に噛み合っています。

本編感想①『フラッシュポイントとは』あらすじ紹介

さて、愚痴のような何かはこのぐらいで終わりにして本編に入りましょう。
これを読んでる皆さんはフラッシュについてどれぐらい知っているかわかりませんが、知らない人向けにざっくり言うと────
・すんごい速さで走れるスピードスターと呼ばれるタイプのスーパーヒーロー
────です。
この物語はクロスオーバーという多数のヒーローが参加する作品でありながら、あくまで主軸はこのフラッシュ、すなわちバリー・アレンに絞られています。
また今回英語で読んでいた為、細かいセリフなどはわかりませんでしたが、ある程度はフィーリングで読みつつどうしても気になった単語のみ辞書で調べました。まあぶっちゃけほぼ雰囲気で読んでます。
話はもどって、バリーは長い間この超スピードを売りにしたヒーローとして活動しつつ、警察の科学捜査官(間違ってたらごめんね♡)という二重生活を送っていました。
ところが、職場での居眠りから目を覚ましたバリーは自分から能力が喪失していることと、さらにはそのせいで階段から転げ落ちた先に、幼いころに目の前で死んだはずの母親がいるのを目撃します。

能力の喪失、スーツがないこと、それら全てを無視して目の前にある現実を物理的にも抱きしめ実感するバリーことフラッシュ。

しかし母親との会話で出たバットマンの話。そう、彼は能力を喪失しましたが、同時に世界もまた色や形を変えていたのです。

本編感想②『変貌した世界』※ネタバレ注意※

この世界は、バリーが知るかつての世界とはあまりに変わり果てていました。バットマンはヴィランを平気で殺害しようとし、危うくサイボーグがそれを助ける始末。ちなみにバットマンは説明するまでもないと思いますが、このサイボーグというのもかつての世界においてはバリーの仲間です。
彼は不幸な自己から肉体の大半を機械化したスーパーヒーローなのですが、本来の世界であれば彼はまだ若く、ティーンタイタンズと呼ばれる若年層ヒーローの一員であったりもしたはずです。
ところが、この世界にはスーパーマンがいません。その所為もあってか、彼はこの世界を代表するヒーロー達のリーダー格にまでなっていまいた。
そしてそんな彼がバットマンへと持ち掛ける誘い。その理由、及び後に描かれるこの世界では、実にとんでもないことが起きていました。

戦争です。

アクアマンワンダーウーマン。それも彼と彼女が御互いに二つの種族を引き連れぶつかり合う戦いにおいて、ヨーロッパは大半が水没。これ以前に同じく英語版で読んだフラッシュポイント:バットマンにおいては、残虐なアマゾン達(ワンダーウーマンの同種族)が人々を殺害して回るという忌まわしい光景が広がりました。無論そこにも、本来の歴史においてはヴィランやヒーローである存在がいたのですが、多勢に無勢。特に一人一人が超人でもあるアマゾンの女兵士には敵わず無惨に殺されていきます。

そんな状況にサイボーグは、伝説の存在でもあるバットマンに戦争を止める為のチームを結成しようと声をかけます。ですがバットマンは断ります。
彼の興味は戦争になどないからです。さらに言うのであれば、彼には世界そのものに興味がなかったのかもしれません。
ではその理由はなんなのか。なぜ、この世界におけるバットマンは伝説なのか。それは、彼の正体がブルース=ウェインではなく、その父親トーマス=ウェインであるからに他なりません。かつての世界で、強盗ジョー=チルが放った弾丸は彼とその妻マーサの命を奪いました。しかしこの世界ではなんと、二発の弾丸はそのどちらもが息子ブルースに命中してしまったのです。
世界に絶望した父親は悪を制裁するバットマンとなり、そして妻マーサは……。

本編感想③『取り戻せない選択肢』※ネタバレ注意※

みなさんは、かつて死別した相手がいるでしょうか。
わたしにはいます。かつてわたしを選んでくれた恋人。そして愛したペット達。一部の後悔に伴う行動はさらなる後悔を生むことにもなりましたが……ここでは語りますまい。まずは物語の感想に注視していただけるとありがたいです。

さて、物語は変容します。バットケイブ、すなわちバットマンの秘密基地の存在を知るバリーはその基地へとやってきて、自分が知る限り最も頭のいいバットマンへと相談しに来ます。
「この世界はおかしい」と。
ところが、そのバットマンはブルースではありません。ブルースと問いかけ驚くバリーへと、その言葉に激高したトーマスバットマンは答えます。息子は死んだんだと。
そんなトーマスへ、バリーは自分が過ごした世界のことを説明しました。訝しむトーマスでしたが、息子が生きている世界がある、すなわち息子が救えるのなら何でもすると、疑いながらも彼への協力を承諾しました。
そしてバリーは驚きの手段に出ます。今現在彼にはかつてのスーパーパワーはありません。スピードフォースという異次元空間からエネルギーを取り出し、或いは光の速さまで加速するという彼の特殊能力は、この世界では存在していないのです。
そこで彼はトーマス協力の下、かつて自分がフラッシュになった時と同じ状況を造り上げます。囚人の電気椅子を改造し、その周りに薬品を並べたものを雷雨降り注ぐ真下へ設置したのです。

……結果は、失敗でした。全身に帯だたしい火傷を負ったバリー。当然の結末ではありましたが、そんなバリーの様子にトーマスは僅かに心を開き始めます。死にかけた彼でしたが、そこで奇跡が、いえ、ある意味では必然が起きました。再びの落雷がバリーを貫き、その身にスピードフォースを宿らせたのです。常人ならば死ぬような怪我も、この能力の影響下にあればあっという間に治癒します。そして能力を得たバリーは、なぜか自分のスーツとして入っていた母親の仇であるリバースフラッシュのスーツを赤く染め直し、フラッシュとしての活動を再開します。

本編感想④『そして最後の舞台へ』※ネタバレ注意※

世界各地で、激化する戦争への対策が叫ばれる中、サイボーグ、バットマン、フラッシュの三人はある人物を探しに行きます。

それは、米国政府が隠蔽したある宇宙人の存在。すなわち、クリプトン人の生き残りことスーパーマンに他なりません。ところが、隠された設備にいたのは痩せ細った青白い男に過ぎませんでした。なんとスーパーマンが落ちたのはカンザスの田舎ですらなく、メトロポリスの中心地に落ちて大惨事を引き起こしていたのです。その後彼は囚われ、能力を研究され実験台となる日々を送っているようでした。
解放された彼は追ってくる兵士の銃をヒートヴィジョンで溶かすと、どこかへと飛び立ちます。そう、彼はバリーの知るクラーク=ケントではありません。ただの長年閉じ込められ続けたクリプトン人なのです。

そんな間にも、戦争は最終局面へと到達していました。バリーは自分一人でも止めようと出発し、トーマスはバリーから言われた「ブルースなら来るさ」というセリフに心を動かされ、ヒーロー達と本当の意味で行動を共にします。

しかし、戦場はアトランティス人とアマゾネスの死体に満ちていました。颯爽と駆け付けるフラッシュを先頭にしたスーパーヒーローズですが、予想外の出来事が起きます。味方であった筈のエンチャントレスの裏切りによって、5人の少年少女が合体しキャプテンサンダーを名乗っていたシャザムがその変身を解除されてしまったのです。さらに誰が止める暇もなく、シャザムの中心だったビリーが殺害されてしまいます。

絶望的な状況。子供が殺される状況を見て打ちひしがれるフラッシュ。しかしそんな彼の目の前にある男が現れました。
────リバースフラッシュ。ある意味ではバリーにとって、全ての元凶とも呼べるだけの人物が。

彼は言います。「お前がこの状況を作り出したんだ」と。
困惑するフラッシュへとリバースフラッシュことソーンはその脳を弄ります。変容した世界の影響で記憶を失っていたバリーでしたが、彼の干渉によって何が起きたかを全て思いだしました。
この世界が変わってしまった理由。それは、フラッシュがその能力とある道具を用いて過去へと戻り、殺されるはずだった母親を救ったことで起きたパラドックスが原因だったのです。

戦場で戦いながらリバースフラッシュは高らかに宣言します。
「俺は因果律から解き放たれた!俺は存在する生きたパラドックスだ!」と。
トーマスバットマンを一方的に殴り倒しフラッシュをも追い詰めるリバースフラッシュ。しかしそんな彼の胸を貫いたのは、普通の人間に過ぎない筈のトーマスによる剣の一撃でした。

あまりにも呆気ないリバースフラッシュの死。ですがそれはこの状況においてあくまでひとつの出来事に過ぎません。戦場ではレジスタンスまでもが参戦し、それに反撃して放ったエンチャントレスの酸めいた魔法がトーマスバットマンにかかってしまいます。重傷を負った彼でしたが、突如空からバリーが「知っている」飛行音が飛来しました。解放されたスーパーマンです。

ところが彼は、迷わずその足元にいたエンチャントレスを木っ端みじんに踏み潰しました。彼は言います。

「NO MORE」

わたしはこれを「もういらない」と読み取りました。その言葉を実行するかのように、縦横無尽に暴れるスーパーマン。本来の力を取り戻し、殺意のままに荒れ狂うクリプトン人の力が最悪の形で実行されます。
しかし状況はそんな程度では済みません。アトランティスの企みによるものか、複数発動した地震が地球の核へと影響し、地面から無数の光の柱が現れいよいよ世界が崩壊を始めました。

トーマスは重傷のなかで語り掛けます。無論、バリーにです。

「バリー、君なら死すべき無数の人々を救える。そして約束してくれ……君なら息子を救える」

トーマスの思いを受け止めたバリーは走ります。ただただ疾く、早く、速く。
光の速さを超え、その姿はスピードフォースへと侵入していきます。

彼は「母さん……」と呟きました。すると、その姿はかつての母親の下へと飛ばされます。当然過去の、殺される前の母はそれが誰か誰何します。しかしバリーは言います。「僕だよ母さん。信じてくれ、僕なんだ」と。

フラッシュは……バリーはその全てを母親へと打ち明けました。自分が彼女を救ったが為に、多くの人を死に追いやってしまったことを。そして今から彼がすることは、そんな彼女を救おうとやってくる自分自身を止めることだと。

それはすなわち、かつて願って止まなかった選択肢。すなわち救えなかった人を救うという行動を、自分自ら止めるという行為に他なりません。世界を書き換えてしまった責任を取る為に。バリー=アレンとして、そして何よりスーパーヒーローであるフラッシュとして。

再びスピードフォースへと戻った彼は、ランニングマシンのごとき時間転移装置で走るバリーへと追いつきます。彼は泣きながら自分へ謝ります。当然、母親を救おうとしている自分は困惑し、そんなことは止めろと叫ぶのです。しかし、彼は止まれません。止まるわけにはいかないのです。そしてその手が触れ、彼の記憶が混濁し、そして────。

「バリー!」

物語冒頭へと戻るかのように、居眠りしていたバリーは同僚からの声で目を覚まします。そして彼は────全てが戻っていることを理解しました。

彼は約束した通り、この世界のバットマンへと会いに行きます。

そこにはユーティリティベルトを弄るバットマン────ブルース=ウェインがいました。突然来訪した友人であるフラッシュに驚きながらも彼を出迎えるバットマン。「何があった?」と尋ねる彼に、フラッシュは起きた出来事を説明します。そのことを信じながらも、バリーは世界が戻った反動で記憶が薄れていっているようでした。

しかしバリーは、瀕死のトーマスから最後に預かった手紙を取り出します。そこには"息子へ"と書かれていました。手紙を開いたバットマンは、思わずよろめきます。短いメッセージ。その最後に書かれていたのは

「常にお前を愛している 父より」

と記されたメッセージでした。バットマンことブルースは名探偵です。彼はその筆跡がまぎれもなく父親のものであることを即座に看破しました。そして、手紙を読み終えた彼は思わずそのマスクを取り、涙を流します。

「ありがとう、バリー」

「どういたしまして、ブルース」

短いやり取り。歴史のIFからこぼれ落ちた、ひとつのメッセージ。それは本来ならあり得ない、死者からの手紙。

こうしてフラッシュポイントという前代未聞の事件は、ひとまず幕を閉じるのでした。

あとがき

今回英語での読書ということもあり、細かい内容などは殆ど理解できていません。それでも自分なりに「恐らく彼は今こう言っているのだろうな」と考えながら読むのは、正直かつて勉強した英語の授業の1万倍はその意味を考え楽しむことが出来ました。

今の社会において、英語を読むと言うのはある程度知識があれば可能なことなのかもしれません。特にネットにおいては便利な翻訳機能が無料で使えますし、それを用いることで情報のやり取りを行う取引は今後さらに加速するでしょう。

ですが、同時に異なる言葉を知るきっかけというのは千差万別であり、そこに至る興味とはやはりあった方がいいと思うのです。

本編とは異なる自分自身への感想となりましたが、最後のブルースの涙。そしてバリーが決めた過去をやり直す自分をやり直させる選択。その全てが、涙を誘うものでした。

もし機会があるなら、そしてこの記事を読んだことで興味を持った方がいたならば。プライムリーディングでも、あるいは日本語訳を購入しても構いません。是非、この素晴らしい物語に触れてみてください。

"Flashpoint (English Edition)"(Geoff Johns, Andy Kubert 著)

それではまた、次回お会いしましょう。

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