日弁連に関するツイートについて

日弁連に関するツイートに関連して沢山のご意見を頂きました。すべて読めておりませんので逐一対応できませんが、とりあえず私の主張を整理し、後は、皆様で様々にご議論いただければ幸いです。

日弁連は法人ですので(弁護士法45条3項)、その目的によって権利能力が制限されます(民法34条)。会社の場合には、取引の安全を図るため、その目的は、明示された目的自体に限局されるものではなく、その目的を遂行する上で直接・間接に必要な行為をすべて含みます(最高裁昭和45年6月24日判決)。しかし、日弁連はいわゆる強制加入団体であって、その目的も、会則をまたずに法律によって定められている点で、会社とはその性質を異にしています。すなわち、弁護士法45条2項によれば、日弁連は「弁護士及び弁護士法人の使命及び職務にかんがみ、その品位を保持し、弁護士及び弁護士法人の事務の改善進歩を図るため、弁護士、弁護士法人及び弁護士会の指導、連絡及び監督に関する事務を行うことを目的とする。」ことが法定されているわけです。今回の一連のツイートとの関係では、この条文の文言には「政治活動」が明記されていないため、日弁連という団体自体が政治活動を行うことは、はたしてこの目的の範囲内か否かが議論されなければなりません。

日弁連が強制加入団体である理由は、全ての弁護士を自主的に監督できる組織を作ることによって、個々の弁護士が公権力から直接監督を受けることを防ぎ、その自由な弁護活動を保障することを目的とするものであって、極めて重要な仕組みです。こうした観点を踏まえるならば、日弁連の目的の範囲を考えるに当たっては、①法が当該団体に付与した公的な役割(強制加入とすることで行政的監督の代わりを果たすといった役割)を逸脱しないように、弁護士法45条2項に定められた目的は限定的に解釈されるべき(明示された目的とそれに直接必要な行為に限定されるべき)である、②強制加入団体である以上、その構成員である会員には様々な思想・信条及び主義・主張を有する者が存在することを前提に解釈すべきである、といった準則が導かれます(南九州税理士会事件に関する最高裁平成8年3月19日判決参照)。

私の問題提起の1番目は、このような準則に照らした場合、日弁連という団体自体による政治活動は、法が日弁連に付託した役割と個々の弁護士の思想・信条の自由等との関係において、どのような形で行われるべきなのかといったことです。その1つの論点として、総会の議を経ることなく会長及び執行部の判断で発出されている「会長声明」の在り方に疑問を投げかけさせていただきましたが、例えば、政府与党が弁護士業務に直接関連する法令の改正を企図していて、野党がそれに強く反対している場合に、日弁連が、総会の多数決で(一部に政府与党案に賛成の弁護士がいたとしても)、野党と同様の意見を表明することは許されるかといった点については、弁護士業務との関連性の考え方を含めて、より議論を深めなければならないと考えております。

第2の問題提起は、弁護士法45条2項の文言に示された弁護士及び弁護士法人の「品位の保持」や「監督」というものを解釈・運用するに当たっては、政治的中立性・公平性が求められるのではないかという点です。具体的には、現状のような政治的内容を伴う「会長声明」が仮に今後も継続するとした場合には、弁護士会の監督権限を背景としたいわゆる「同調圧力」を生まないための歯止めが必要ではないかということです。要するに、ある弁護士が自らの政治信条にもとづいて、「会長声明」を真っ向から否定する活動を行ったとしても、それ自体が弁護士としての「品位」を欠くことにはならないという保障を設けるべきではないかという趣旨です。日弁連という団体自体に比較的広範な政治活動を認めるのであれば、こうした保障の必要性は高まるため、その点を45条3項として明記すべきではないかと考え提案しました。いずれにしましても、第1の問題提起との関係で、日弁連という団体自体の政治活動をどこまで許容するかにより、この第2の問題の深刻さが違ってきますので、場合によっては、かかる制度的保障は不必要となる可能性もあります。

最後に、言うまでもなく、弁護士が個人ないし有志の形で政治活動を行うことは全くの自由です。その自由を大切にするのであれば、日弁連という団体それ自体は、自らの組織の中に異なる政治信条を有する者が共存していること、並びに、個々の弁護士の活動を評価し処分する権限を有する権力機構であることに、より一層敏感でなければならないと考えます。一部の者が、弁護士の総意であるかのような誤解を生む形で「日弁連」という看板を使うことは慎むべきですし、監督権限を背景として弁護士の間に「同調圧力」を生むような行動も避けなければなりません。こうした当たり前のことを述べたかったのですが、字数の制限や単発的な発言のために、十分に伝わらなかったことから、このような形でまとめさせていただきました。もちろん、こうした私の考えが絶対に正しいとは思っておりませんので、これを機会に弁護士の皆さんの間で、大いに議論されることを期待いたしております。

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