企業の基幹業務を支える最新システムの仕組みとオペレーションがわかる『SAP担当者として活躍するためのERP入門』より 第3回 ~ERPの対象業務と組織とは~
企業の基幹業務を支えるERPを理解するために、SAPの基礎知識からプロジェクトの進め方、ERPの運用に必要な業務知識まで基礎からわかりやすく解説した『SAP担当者として活躍するためのERP入門』から書籍内容を抜粋してご紹介。第3回は第1章「ERPの基礎知識」から「ERPの対象業務と組織」です。
2 ERPの対象業務と組織
■会社の基幹業務が対象
ERP では、基本的に会社の基幹業務を対象とします。
例えば、購買業務、在庫管理業務、生産業務、販売業務、人事業務、会計業務などの業務処理を対象とします(図1)。
製造業の基幹業務について考えてみましょう。モノを製造している会社の基幹となる業務には、購買、在庫、生産、販売、人事、会計等があります。
購買部門では、モノを作るために必要な原料や、部品を仕入先に注文して仕入れます。仕入れた原料や部品は、倉庫に在庫として保管します。
生産部門は、製造ラインで必要とする原料や部品を倉庫から取り出して使用し、製品を作ります。できあがった製品を倉庫に保管します。
販売部門は、顧客からの注文に応じて、製造した製品を倉庫から出荷して顧客に納品し、代金を請求します。
人事部門では、社員の勤怠管理と社員への給与計算処理などを行います。
会計部門では、仕入先から仕入れた代金の支払いや、顧客に販売した代金の入金管理などを行います。また、儲かっているかどうかなどの計算を行います。
このように製造業を営んでいる会社では、購買、在庫、生産、販売、人事、会計が基幹業務となっています。
■グループ会社の業務も対象
ERPは、会社全体のみならず、子会社や関係会社も対象とする場合があります。大きい会社では、子会社の経営成績も含めて外部に報告する必要があるため、子会社や関係会社も含めて、ERPシステムを構築している会社もあります。
特に、海外にある子会社も含めて経営資源を一元管理しようとすると、言語や、通貨、各国の会計ルールなど様々な課題をクリアしていく必要が出てきます(図2)。
■関係する取引先の業務も対象とする場合がある
例えば、製造業では、自社製品を効果的に販売するために、製品をいつ頃、何個作るべきかに悩みます。製品によっては、毎月、安定的に売れるものや、季節によって需要が変動するものがあります。
もし、自社の倉庫の製品の在庫量と得意先が持っている当社の製品の在庫数量や販売実績数量がリアルタイムにわかれば、そのデータをもとに、対象製品を製造することができます。
つまり、製造会社と販売会社間で情報を共有するERPシステムを構築することで、相互にとって効率の良い製造・販売を行うことが可能になります(図3)。
書籍目次
第1章 ERPの基礎知識
1-1 ERPとは
1-2 ERPの対象業務と組織
1-3 ERPシステムが提供するもの
1-4 ERPシステムの必要性
1-5 ERPシステムの進化
1-6 ERPが目指す方向
コラム 様々な言語、通貨も使える
第2章 SAPの基礎知識
2-1 SAP社とは
2-2 SAP社のERPパッケージの種類
2-3 SAP社のERPパッケージのコンセプト
2-4 データベースの進化
コラム RPAの活用について
2-5 S/4HANAの種類
2-6 S/4HANAで変わったこと
2-7 S/4HANAの全体像
2-8 S/4HANAの周辺アプリケーション
2-9 ERPパッケージの構成
2-10 ERPパッケージの導入手順
2-11 Unicode
コラム ERPシステムでは自動仕訳は必須
2-12 移行方法
第3章 ERPプロジェクトの進め方を学ぼう
3-1 プロジェクトの進め方(1) 全体の工程
3-2 プロジェクトの進め方(2) スケジュール管理
コラム プロセスを管理する
3-3 プロジェクトの進め方(3) 工程とスケジュールの例
3-4 プロジェクトの進め方(4) 要件定義の進め方
第4章 ERPの開発の仕組みを理解しよう
4-1 ERPシステムを動かすために必要なもの
4-2 開発(1) Add-onの方法
4-3 開発(2) Fiori
4-4 開発(3) ABAP
4-5 開発(4) データベース/SAP HANA
4-6 サーバー機
4-7 SAP GUIによるメニューの作り方
4-8 ABAP開発(1) 基本設計書
4-9 ABAP開発(2) 詳細設計書
4-10 ABAP開発(3) ABAPコーディング例
第5章 社会のインフラの仕組みを知っておこう
5-1 会社組織とは(1) 儲けることと納税義務
5-2 会社組織とは(2) キャッシュを増やすこと
5-3 会社の仕組み
5-4 会社の中の要素と外の人たちの関係
5-5 銀行の役割
5-6 消費税の仕組み
第6章 会社の基本となる業務を理解しよう
6-1 会社全体の仕事の仕組み
6-2 購買・在庫業務の仕組み
6-3 生産(製造)業務の仕組み
6-4 工事・建築業務の仕組み
6-5 販売業務の仕組み
6-6 人事管理業務の仕組み
6-7 会計業務の仕組み
第7章 ERPの運用に必要な業務知識を身に付けよう
7-1 会計帳簿の仕組み
7-2 ツケで売った代金の管理の仕組み
7-3 ツケで買った代金の管理の仕組み
7-4 在庫補充の仕組み
コラム 変更履歴管理について
第8章 ERPの使いこなしのためのヒント
8-1 業務処理を複数のシステムで処理している場合の問題点
8-2 プロセスをデザインする時のポイント
8-3 バッチ処理は少ないほうが良い
8-4 お客様に納期を伝える仕組み
8-5 入金予定日、支払予定日
コラム 請求金額と入金金額が異なる時
コラム 透過テーブルについて
第9章 ERPの保守作業
9-1 保守の手順
9-2 ユーザーの管理
第10章 S/4HANAのオペレーション方法を身に付けよう
10-1 お気に入りの使い方
10-2 SAP GUIの使い方
10-3 Launchpadの使い方
コラム 会計伝票番号について
10-4 卸売業における全体業務フローと各業務プロセス
10-5 購買・在庫業務のオペレーション例
10-6 販売業務のオペレーション例
10-7 会計業務のオペレーション例
第11章 SAPについてのQ&A
11-1 ECCとS/4HANAの違い
コラム ドリルダウン機能について
11-2 ECCからS/4HANAへのバージョンアップ方法
11-3 財務会計と管理会計の違い
コラム 会計監査人もSAPを使う
11-4 仕入れと売上原価、製造原価の違い
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