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企業の基幹業務を支える最新システムの仕組みとオペレーションがわかる『SAP担当者として活躍するためのERP入門』より 第5回 ~SAP社のERPパッケージのコンセプト~

企業の基幹業務を支えるERPを理解するために、SAPの基礎知識からプロジェクトの進め方、ERPの運用に必要な業務知識まで基礎からわかりやすく解説した『SAP担当者として活躍するためのERP入門』から書籍内容を抜粋してご紹介。第3回は第2章「SAPの基礎知識」から「SAP社のERPパッケージの
コンセプト」です。


3 SAP社のERPパッケージのコンセプト

ワンポイント
● 全体最適
● One Fact One Place、and Real Time
●リアルタイム経営の実現

SAP担当者として活躍するためのERP入門

■全体最適

 全体最適は、経営資源を一元管理することで会社の基幹業務処理の全体最適化を目指し、そのための仕組みを提供します。

■SAP社が最も大切にしているコンセプト

One Fact One Place、and Real Time は、SAP 社が最も大切にしているERP パッケージのコンセプトです(図1)。日本語にすると、「すべての活動をデータの発生個所でリアルタイムに記録する」という意味になります。

図1

 つまり、リアルタイム経営の実現を目指すという考え方に基づいて、SAP 社の製品は作られています。

■リアルタイム経営の実現

 S/4HANA の前のバージョンにR/3 がありました。このR/3 の「R」は、Real Time の「R」だと言われています。リアルタイム経営の仕組みをどうやって実現しているのか、販売プロセスを例にして考えてみましょう(図2)。
 例えば、商品1個を販売した場合の一般的な販売プロセスは、受注→出荷→請求→入金となります。
 注文を受けると、受注伝票を登録します。受注伝票から出荷伝票を作成し、倉庫から商品を1個取り出してお客様に届けます。そして、倉庫から商品を1個取り出したら、商品が1個在庫から減少したことをデータベースに記録
します。その後、お客様に代金の請求書を発行して送付します。
 この時、お客様に対する売掛金*の発生データと売上計上データを、データベースに記録します。この後、お客様から販売代金が入金になったら入金処理を行い、預金が増えるデータと同時に売掛金が減少するデータをデータベースに記録します。

図2

*売掛金……得意先にツケで販売した代金のこと。

 このように、ERPシステムでは、活動の発生場所からの処理に紐付いて、裏側で自動的に関連するデータをデータベースに記録する仕組みになっています。
 その結果、受注時点、出荷時点、請求時点、入金時点のそれぞれのタイミングで、今どうなっているかがわかります。このことをリアルタイム経営の実現と言っています。

コラム 様々なサービスを提供しているSAP社
 SAP社は現在、S/4HANAというERPパッケージ製品を提供していますが、ERPパッケージ製品のほか、下記のような様々なサービス提供も行っています。
・周辺アプリケーションの提供、特にクラウド系のもの
・コンサルティングサービス
・データセンターの提供
・プロジェクト支援サービス

SAP担当者として活躍するためのERP入門

書籍目次

第1章 ERPの基礎知識
 1-1 ERPとは
 1-2 ERPの対象業務と組織
 1-3 ERPシステムが提供するもの
 1-4 ERPシステムの必要性
 1-5 ERPシステムの進化
 1-6 ERPが目指す方向
 コラム 様々な言語、通貨も使える
第2章 SAPの基礎知識
 2-1 SAP社とは
 2-2 SAP社のERPパッケージの種類
 2-3 SAP社のERPパッケージのコンセプト
 2-4 データベースの進化
 コラム RPAの活用について
 2-5 S/4HANAの種類
 2-6 S/4HANAで変わったこと
 2-7 S/4HANAの全体像
 2-8 S/4HANAの周辺アプリケーション
 2-9 ERPパッケージの構成
 2-10 ERPパッケージの導入手順
 2-11 Unicode
 コラム ERPシステムでは自動仕訳は必須
 2-12 移行方法
第3章 ERPプロジェクトの進め方を学ぼう
 3-1 プロジェクトの進め方(1) 全体の工程
 3-2 プロジェクトの進め方(2) スケジュール管理
 コラム プロセスを管理する
 3-3 プロジェクトの進め方(3) 工程とスケジュールの例
 3-4 プロジェクトの進め方(4) 要件定義の進め方
第4章 ERPの開発の仕組みを理解しよう
 4-1 ERPシステムを動かすために必要なもの
 4-2 開発(1) Add-onの方法
 4-3 開発(2) Fiori
 4-4 開発(3) ABAP
 4-5 開発(4) データベース/SAP HANA
 4-6 サーバー機
 4-7 SAP GUIによるメニューの作り方
 4-8 ABAP開発(1) 基本設計書
 4-9 ABAP開発(2) 詳細設計書
 4-10 ABAP開発(3) ABAPコーディング例
第5章 社会のインフラの仕組みを知っておこう
 5-1 会社組織とは(1) 儲けることと納税義務
 5-2 会社組織とは(2) キャッシュを増やすこと
 5-3 会社の仕組み
 5-4 会社の中の要素と外の人たちの関係
 5-5 銀行の役割
 5-6 消費税の仕組み
第6章 会社の基本となる業務を理解しよう
 6-1 会社全体の仕事の仕組み
 6-2 購買・在庫業務の仕組み
 6-3 生産(製造)業務の仕組み
 6-4 工事・建築業務の仕組み
 6-5 販売業務の仕組み
 6-6 人事管理業務の仕組み
 6-7 会計業務の仕組み
第7章 ERPの運用に必要な業務知識を身に付けよう
 7-1 会計帳簿の仕組み
 7-2 ツケで売った代金の管理の仕組み
 7-3 ツケで買った代金の管理の仕組み
 7-4 在庫補充の仕組み
 コラム 変更履歴管理について
第8章 ERPの使いこなしのためのヒント
 8-1 業務処理を複数のシステムで処理している場合の問題点
 8-2 プロセスをデザインする時のポイント
 8-3 バッチ処理は少ないほうが良い
 8-4 お客様に納期を伝える仕組み
 8-5 入金予定日、支払予定日
 コラム 請求金額と入金金額が異なる時
 コラム 透過テーブルについて
第9章 ERPの保守作業
 9-1 保守の手順
 9-2 ユーザーの管理
第10章 S/4HANAのオペレーション方法を身に付けよう
 10-1 お気に入りの使い方
 10-2 SAP GUIの使い方
 10-3 Launchpadの使い方
 コラム 会計伝票番号について
 10-4 卸売業における全体業務フローと各業務プロセス
 10-5 購買・在庫業務のオペレーション例
 10-6 販売業務のオペレーション例
 10-7 会計業務のオペレーション例
第11章 SAPについてのQ&A
 11-1 ECCとS/4HANAの違い
 コラム ドリルダウン機能について
 11-2 ECCからS/4HANAへのバージョンアップ方法
 11-3 財務会計と管理会計の違い
 コラム 会計監査人もSAPを使う
 11-4 仕入れと売上原価、製造原価の違い

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