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学びを止めるな。サマースクールの中止に寄せて。

HLABの2020年のサマースクールの中止を決めた。

最高の夏を届けるため、これまで頑張ってきた大学生チームの努力を思うと本当に苦渋の決断だった。大学生は2019年のサマースクールが終わり次第、すぐに翌年の準備をはじめる。全身全霊で、常に本気で取り組んでいる彼らの無念さを思うと心が痛む。しかし、何よりも安全が第一である。

本来のサマースクール実施は8月なので、早すぎる判断と思う人もいるかもしれないが今は、最善の決断をした、と考えている。(実際には、もっと早く決めていたことだが、公にするのに調整もあり、時間がかかってしまった。)

少し思うところがいくつかあるので、せっかくなので筆を取ろうと思う。いつもの文体と違うかもしれないが、感情のままに書いてみよう。

2011年、東日本大震災の年にサマースクール。

今の状況で思い出すのが、2011年の東日本大震災だ。

HLABのサマースクールは、初開催は2011年8月。実は、その準備は2011年2月にはじまった。現代表の亮介を中心として、僕を含む当時の創業メンバー(といっても、まだ当時は会社なんてものではなく、学生団体のようなもの)が初めて集い、顔をあわせた。そして、応援してくれるアドバイザー(そして、現在の理事・監事)である先生方とも顔を合わせ、「よし、じゃあ8月の開催に向けて動こう!」とギアを入れたのが2011年2月24日だった。このとき、今の代表の亮介はひとりボストンからオンライン参加。リモート参加で、時代を先どっていたな、なんて思う(笑)

その矢先、である。3月11日に、東北を襲った震度7の地震。福島の原発はメルトダウンが発生し、日本全体が危機に陥った。

僕たちの届けたい価値のひとつ、「多様性」。それを彩る仲間である海外から訪れるはずだった大学生たちも、この状況で果たして来日することができるのか?獲得を目指していた企業スポンサーが果たしてこの状況で見込めるのか?というか、そもそも福島から近い東京は大丈夫なのか?そんな問いが頭をぐるぐると渦巻きながら、不安も相まって出鼻をくじかれてしまった。

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↑出鼻をくじかれたけどとりあえず合宿した時

そんな中でも、チーム一丸となってピンチを乗り越えることができた。ボストンから亮介は友人たちを口説き、信頼を勝ち得てハーバードから多くの大学生が来日した。スポンサー企業もこの状況にも関わらず温かい支援をくださった。東日本大震災の影響でたまたま予約がキャンセルされたから、僕らがやりたかった8月の日程で旅館「鳳明館」さんが貸切予約できた。こんなわけのわからない企画に定員を超える高校生が応募してくれた。とにかく何もかもがはじめてで手探りで、思いついたことは全て自分たちでやらないといけなかったし、実際にやったけれども、そんな中、はじめてのサマースクールは8月に開始することができた。本当に感謝である。

僕自身は留学があったので、後ろ髪を引かれる思いでハーバード生たちと入れ替わりで米国に旅立ったが、日々友人たちから送られてくる写真や映像を見て、無事サマースクールを開催し、無事終了することができた(と聞いている)

この年の開催がなければ、昨年までのサマースクールは勿論ないし、長野・徳島・宮城で開催しているサマースクールも開かれることはなかった。そして、きっと今僕はこの仕事をしていないだろうし、全く違う人生になっていたと思う。余談だが、今HLABの職員には2011年の参加高校生だった人もいる。彼と仕事を一緒にすることにも当然ならなかったわけだ。地震で諦めていたら、と思うとゾッとする。

さて、2020年の現在の状況を見てみると、2011年のデジャヴ感がすごい。ヒト、モノ、カネ、全てが不明瞭である。しかし、なぜかわからないけれども、これを乗り越えていける自信しかない。あの年、僕たちになかったのは仲間、そして過去の経験。今、HLABは2011年以来の卒業生をはじめとするコミュニティがあり、当時よりも経験を持った仲間たちに囲まれている。前述の2011年の元高校生も、一緒にはじめた仲間たちも何人も戻ってきた。アメリカにいるが、そこから新たな知見を取り入れてくる仲間もいる。そして何よりも、このピンチをチャンスに変えてやろうと鼻息の荒くパワーとエネルギーに溢れた大学生チームが共にいる。むしろ楽しみで燃えてきている。

学びを止めるな。

ところで、これまで、自分たちが提供してきたものは、まさに今避けるべき、「密」で創り上げてこられたものである。約1週間の間、世代を越え、国籍を越えた仲間たちと「密」に寝食をともにし、「密」に語り合い、学び合う。そんなサマースクールを提供してきた。残念ながら、その場を今年は創り上げることができない。

サマースクール-5

どうしても私が考えてしまうのは、この中止によって、失われるであろう学びの機会。サマースクールで出会っていたであろう多様なバックグラウンドを持った仲間たち。そしてそのコミュニティ。普段出会えない人との出会いを通じ、多様な価値観や仕事に触れて自身の将来にふれる場。ここから学ぶこと、得られる自らの気づきの機会をこの「密」な場を通じては提供できなくなってしまった。しかし、この学びを止めてはいけない。とにかく学びに変える姿勢を身に着けてほしい。

確かに、サマースクール全てをオンラインで全く代替することは難しい。ただ、自分たちが大事にしている価値は何か?それを問うた上で、その価値をそれぞれ抽出したものは、オンラインでも提供できると考えて、既に実行に移し始めている。

各種進むオンライン化によりむしろ「普段出会えない人たちとの対話」のニーズがすごい。実際、こういうときだからこそ学校や企業からの問い合わせを頂いている。既にN高さんとはオンラインワークショップを共に実施することができ、大成功を収めた。

ここで、HLABのバリュー(大切にしている価値観)を紹介したい。

1. とにかく学びに変えよう
2. 実験しよう
3. 越境しよう
4. 経験をもちよろう
5. 思いやろう

今、僕たちはこのバリューに基づいて、とにかく学びに変える、そういったマインドセットを得られる場を生み出すために、実験的に様々な取り組みを始めている。今こそ全員の経験を持ち寄り、越境するときだ。

もう少ししたら、皆さんにも届けられると思うので、待っていてください。やっぱHLABじゃないと、と思ってもらえるようなものをね。

高校生の皆さんへ:今私たちにできること

今年は、残念ながらHLABのサマースクールを開催することができず、皆さんを迎えることができません。

HLABのサマースクールは、お陰様で毎年定員を上回る応募をいただいて、泣く泣く合否を出しています。中には、今年で応募は2回目、3回目、という人も毎年います。そういう人がもしこれを読んでいる中にいたら、本当に申し訳ない気持ちと、夏会えなくて悲しい気持ちでいっぱいです。高校3年生にとってはラストチャンスだったかもしれません。ごめんなさい。

ただ、HLABは大学生になっても参加できます。2021年には、(コロナウイルスが収まっていれば)完全なかたちでのサマースクールを実施したい。そのときには、大学生のメンターとして参加するという形で、チャレンジに踏み出してほしいです。(来年まだ高校生の人は、もちろんご応募お待ちしています。)

コロナ禍の中、先行き不透明な時代にまさに突入しました。そして、高校生、大学生の皆さんは、時々刻々と状況は変化する中で、今、自分の頭で考え続けることが何より大事になってきます。政府の決断を憂いても、親や先生の決断を憂いても、自分自身が自分の人生には決断を下し責任をとっていかなくてはなりません。その決断をするためには、何をしないといけないのか。それは学びつづけること。「とにかく学びに変えよう」というHLABのバリューの根幹メッセージでもあります。学校での科目といったフォーマルな学びだけではなく、日常から、身の回りの友人、先輩、後輩から学ぶ姿勢のことです。

今私たちにできることは、「コロナがあけたら◯◯しよう」ではなく、「このコロナだから◯◯をしよう」だと思います。新しい勉強や趣味をはじめるもよし、普段歯がゆくてできなかったような青臭い話をオンラインでするもよし(オンラインだとちょっと恥ずかしさが減りません?笑)、とにかく学びの機会を自ら作り出すことが、今みなさんに求められていることだと思います。一緒に頑張っていきましょう。

終わりに

とりとめもなく、書いてしまいました。最後まで読んでくれた人がどれくらいいるのかはわかりませんが、ここまできた方、ありがとうございます(笑)

私自身はこれからどうするかというと、もちろんこの学びを止めないこと、そして組織を健全に持続するための施策を考え、取り組んでいくこと。当たり前ですが、サマースクール中止、ということは、本来そこで得ていた収入が組織としてなくなる、ということです。

ということなので...ちょびっとでもいいからHLABを応援してやろう、という方は月額1,000円からの賛助会員も募集していますので、このような時期ではありますが、ご検討ください。皆様の支援が高校生・大学生に還元されます。(以下リンクより)

学びを止めないため、積極的な情報発信も頑張っています。よろしければ、Twitterを是非フォローください。このコロナ禍で、資金的な援助も必要な学生さんも増えると思います。役立つ情報を極力流せるよう努力しています。(職業柄、奨学金関連の情報は集まってくるので、特に)

医療関係、国、自治体、スーパーマーケット等、この中でも頑張ってくださっている皆様に感謝しつつ今回は筆を置きたいと思います。

読んで面白かったら、是非サポートしていただけると嬉しいです!大学生との食べ語り代にします笑