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【『ゼルダの伝説』と『女の機嫌の直し方』の話】

ビックカメラでの抽選の結果、首尾よくニンテンドースイッチを手に入れた直後から、『ゼルダの伝説』のことは気になっていた。
身近なゲーマーに相談しようとも思ったが、答えは明らかなのでそのままにしていた。それにスイッチの能力は『マリオカート』で十分に知ることができた。
そんなぼくの背中を押したのは、アマゾンでの『ゼル伝』のレビューだった。なんだか異常にアツいのだ。気味悪いほどの高評価なのだ。それでついポチっとやってしまった。いにしえの「タイムボカン」シリーズから続くアレである。
今月のビックリドッキリメカは、任天堂さまが精魂込めてつくった(はずの)超キラーコンテンツだったのだ。ちなみにうちにはドロンジョが2人いる(いきなりタイムボカンからヤッターマンになった)。ボヤッキーとトンズラーはうちのイヌだ。ぼくはもちろんガンちゃん。
でもぼくもいちおうオトナであるからして、いきなりビリビリとフィルムを開けてヨダレを垂らしながらゲームをはじめるなんてことはしない。つまり、「買ったけどしばらくヤらずに、ヤりたい気持ちを熟成させる」という「良識ある大人」な対応をしてみた。
この気持ちは、せわしなく日常を過ごす男子ならみなわかるはずだ。ヤれるのにヤらないガマンが、最高の気持ちよさを生み出すのだ。
……ちょっと話が変わりそうなのでもとに戻す。
ところがそんな対応も1週間経つと、単なる「ムダな抵抗」に思えてきた。ふだんレストランなどで子どもに。「迷ったらまずは好きなものを食べなさい。5分後にはギャングにおそわれたりして食べられなくなるかもしれないのだから」とか言ってるヤツのやることじゃない、つまり買ったのに遊ばないのはバカなんじゃないの? と気付いてしまった。
そこで、むかしもいまも変わらない、1週間でもっともワクワクする「平日最後の日の夜」(子どものころは土曜の夜だったけど、オトナないまは金曜の夜だ!)、それも家族全員(イヌも)寝静まってから、いそいそとプレイをはじめた。マヌケなことにいつものRPGネームである「ベンツ」を名づける気マンマンだったが、よく考えたらこれは『ゼル伝』。ゼル伝の主人公はリンクに決まってるじゃないか。
プレイしてみて心底びっくりしたのは、「風が感じられる」ことだった。フィールドに吹いてる風を、ぼくはたしかに感じたのだ。
それは(横にいた)寝ぼけたイヌの鼻息でもなければ、網戸の向こうから気まぐれに吹いた真夜中の気圧の乱れ、などでは断じてない。まさしく荒らされたハイリア王国に吹く風をぼくは感じた。
プレステ4も WiiU も経験していないぼくにとって、『ゼル伝』の絵は気持ちよすぎたのだ。
次にびっくりしたのは、「登山が楽しい」こと。プレイ直後に出てくる思わせぶりなジジイにいわれるまでもなく、「高いところから見渡せば、いろいろな情報が得られる」。
だから、「そこに山があるから」登るのではなく、「山のアッチ側のようすが地図ではよくわからないから」登るのだ。
実際、ガンバリゲージをふりしぼりふりしぼり、丘を越え峠をまたぎ、ときにはトラバースして見晴らしのよい場所に出ると、いろいろな情報に出会えた。ほこらの場所、ホブゴブリンたちがイノシシを追いかけている場面、高山にしか咲かない(感じの)可憐な花々……。
そして、おどろくべきことに『ゼル伝』では、「池塘」までもが存在するのだ。池塘って知ってますか? ぼくも山登りをするまでそんな言葉は聞いたこともなかった。
いまでも池塘をうまく定義できないが、とにかく高山で池塘を見たことがある人で『ゼル伝』をやった人なら、このことはみな納得してくれると思う。今回の『ゼル伝』は、ゲームへはじめて池塘を池塘として描いたものなのだ。
◆ ◆ ◆
とまぁ、『ゼル伝』プレイはまだはじまったばかりだが、ぼくはそのおもしろさにそうそうに降参してしまっている。このゲームをおもしろくないなんていう人はいるのだろうか!?
……ただしひとつだけ、この際だから世の中に対して申し上げたいことがあるのでそれを申す。
先日の早朝(たしか6時ごろ)、ついに『ゼル伝』の存在が子どもにバレてしまい、当然の流れでいっしょに遊ぶことになった。途中からは奥さんも参加で、つまりうちにはリンクが3人いるのだ。
モンスターが出ると「こわいこわい」といってコントローラーを押し付けてくるし、弓矢は思うように狙えないし、ハートが少しでも減ると「キノコ喰えリンゴ喰え」とうるさいのだが、記憶力と観察力は子どもらしくバツグンなので、けっこう有益なこともいう。まぁフック船長の肩に乗ってギャーギャーしゃべりまくる鳥のようなものだと思うことにしてがんばっているのだが、彼女らは「冒険」のなんたるかを知らないのである。
モンスターが出ると、やれ、
「かわいそう」
「ハートが減るし、武器も壊れる」
「矢が当たってしまうと回収できないからもったいない」
「魔法の矢をここで使うくらいなら、いったん死んで!」
などと逃げたり死んだりすることを強要される。
どこの世界に、「当たってしまったら矢が1本減るから攻撃したくない」なんて思う勇者がいるものか!
謎のジジイの家を見つけ出すと、
「ここには快適なベッドがあって寝泊まりできるから、いますぐ地図にマーキングしてくれ」
「ほこらめぐりとかはしなくていいから、おいしい料理をつくりたい」
とかいってくる。ここは「どうぶつの森」とかではないから、寝泊まりも料理もあくまで生き延びるための手段であって目的ではない! っていうかはやくこの陸の孤島を出て、姫の待つ城へ行こうよ、それが「勇者」の目的じゃないか!
そしてあげくの果てに、
「このあたりはモンスターも出ないし、キノコとかたくさん生えてるから、ここに住めばいいのに」
とかいわれてしまった。
つまり考え方が100%女子なのだ。
ぼくは妻子のそんな「勇者」にふさわしくない言動を聞くにつけ、「こいつらはぼくとは違う生き物なんだ」という思いをますます深くした。そして気になっていた『女の機嫌の直し方』(インターナショナル新書、黒川伊保子著)をすぐに買って読んだ。
みなさんも、彼女や妻子と『ゼル伝』やる前には、『女の機嫌の直し方』を読むことをおすすめします。笑
https://www.amazon.co.jp/dp/4797680083

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