【詩】知っていることを書きつづけよう、知らないあなたのために
ぼくが知っているのは
風化の流砂にさそわれた一対の喉仏
ぼくが知っているのは
なにも開けられない鍵の冷ややかな稜線
ぼくが知っているのは
明日ここを立ち去っていく あなたという肉体の重量
あなたのそのか黒き先端は
今はもう あなたではなくなった或る男
過去にしか存在しない所作が
生きたいあなたを末端から蝕む壊疽となる
すでに不要となったその男を あなたは
襤褸となった肌着できつく縛り
切り落とせと
ぼくに命じる
ぼくが怯えるのは 肉体上の痛苦と醜悪
腐肉 血みどろ