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倒され、のこぎりで切られた木

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【詩】
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#ぽえむ

【詩】ラムネスカイ,マカロンガーデン

♬ 1 トリカブト蜜もこぼさず摘むなら満月の 宇宙遊泳ミルキーウェイにぬれたその顔の (涙ではさらさらなく) しずく滴るまぶたを瞑る満月の 高きへかざせば花序の列 濃紫の高慢だとか薄むらさきの蠱惑とか 一秒きざみに塗り替えちまう満月の ばかに明るい夜がいい という作戦会議は ボクとキミのあいだでの 論を俟たない自明の理 ジャックナイフとステップ踏むなら理科室の その蔓草がセクシーな蛇へと戻る鉄柵を (星々はGOのウィンクを) 一足飛びなら夜這い星の弧をえがき   動脈静脈交

【詩】海風へ、生まれる。

抱卵の姿勢なら 燕 卵の上に水平にその身を置いて それは 抱くというより 水平線の水平を 文字通り卵上に保ち この季節は だから 燕は 一艘の船となる おのが卵の中にも 海が眠ると 海をわたった燕は 知っている 吊革の下が一時の アサイラム わたることが出来ない 空の為 地下鉄のトンネルの闇は 車窓をたよりない鏡にかえて 人ごみを歩くのが苦手なのに 人ごみを歩くのは得意そうな 顔 映し出さないのは 虚/実 どちら 身体の中を 光が 走り抜け 昔むかし 豊蘆原瑞穂国の葦の群

【詩】菖蒲咲く、黄色いハンマーとして

水ぐるま 烈しく水に回されて 烈しく水を蹴り返す 夢中に蹴れば いつしか 宙にあくがれ 水上0センチメートルでも そこは空 菖蒲 黄色いのが咲いた朝 一輪だけ迷い出た 水の激しさ 岩々に 崩され尽くした彼方には 紫紺に群れる 天の河の形象 あの宙はかんけいないさ 一歩一歩 その予感を踏み固める どこまで行っても一人 この径は それなのに 明日 会う 壊せるものなら壊してみろよ 挑発は ぼくのシルエットばかりが 巨大に映る姿見 明日 会う 明日と会う カーブを曲がる気楽さ

【詩】ぼくの似顔絵をかくのなら

ぼくの似顔絵をかくのなら 翳はかかないでいておくれ 翳は世界を美しく見せるから 雪嶺の山襞は朝日に青く透きとおり 田を掠める鳥らの羽は地の誠実を知らしめる ぼくの名前をよぶのなら 歌い終わった後はよしておくれ 歌は世界をまぶしく震わせるから 水は曲がり角で終わらぬクリシェを輝かせ 空を掠める若木の梢はとどかぬ無限を知らしめる イスラエルのシナゴークを オハイオのラストベルトを 横須賀の段ボール置き場を 雨が 濡らす びょうどう・に 尻尾をなくしたぼくたちが 雨のようにこの

俳詩「花のひら・まもなく」

        ❅ こんかいは、俳句に詞書をそえました ❅ ――――――――――――――――――――――――――――――――――         きみを吞まされ脳裏びしりと花のひら まがさした、まにあった、まだほしかった、まんぷくを、ましゃくにあわないわがままだ、まだいける、まだほしい、まちがいなのか霧の中、まどろみは熱い湯のなか宙返り、満月だ、満潮だ、まちがいなんておもわない?そんな無粋はよしましょう、まぼろしの手毬万年毬つくの、まちがい以外ほしくない、まだまだ落ちて