【詩】たとえば、北国の蝶
さみどり色のしずくに濡れる五月は暮れなずみ
樹々は今日を終える人々のその後ろ
誰からも気に留められることはないけれど
その木蔭は少しはずかしい
呼ばれても他の少年みたいにほがらかに
振り向けなかったぼくがいる
銀色の鍵を取りだして今日のぼくを仕舞う前
小さな夜空遠くの星の名を諳んじる
どこかの星でも雨が上がって星を仰いでいる
あの光はよく澄んで痛いほど
もう何処にいるとも知れないきみが
持ち去った開かない小箱
きみよ、きみ
きみは本当にいたのかな
ぼくの中の花吹雪だとか