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倒され、のこぎりで切られた木

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【詩】
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2024年2月の記事一覧

【詩】絶海の囚人

目醒めれば 絶海の囚人であった 樹々はなく 草もなく 屋根もない 荒れた岩肌だけの孤島に 置き去りにされていた 見上げれば 微動だにしない太陽 夜は来ず 月もなく星もない 空と海とが 青々とした口を開く 灼熱のいがみ合いに 延々と眼を焼いた 千万年と続く青と青との争いに 放り込まれる刑罰なのか 両手で顔を覆い 岩肌に縮こまっても 目裏に押し付けられるのは 真青なる焼鏝 聞き覚えのない声が 番号を発し それが僕のことのようだと 目を開けば 絶海を背にして 真っ白なキャンバ

【詩】方舟はもう戻らない

そよご 冬青 風よんで そよご 赤い実 そよ吹かれ いい気になって おどったら おっちょこちょいが ころんと落ちた 沖には 方舟 もう見えない ぼくが乗るはずだった 舟 水平線で くるんとめくれ 地球の裏側 星の国 そよご 冬でも 青い葉が 消えた 赤い実 風に訊く 見えなくなった あの舟で ぼくを探している人 いるのかな 方舟に乗れなかった者 すぐに死が来るのでしょうか 来ないとおもう人 手をあげて そよごの葉陰 ふて寝をするのは ぼくとおんなじ  乗せてもらえなかった