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倒され、のこぎりで切られた木

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【詩】
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2023年12月の記事一覧

【詩】鬣よりも 牙よりも

弱いから 連れて来られた 大人しいから 閉じ込められた 鬣を持たず 牙はなく ナイフのような爪もないから 貧弱な檻を 与えられた 強いから 銃で撃たれた 野蛮だから 遠ざけられた 鬣を靡かせ 牙を磨き お前らを切り裂ける爪があるから 朝日のように 尊ばれた ぼくを切り裂いた肉を どうするんだい? 四肢を切断され 腹を裂かれ 臓腑を引き摺り出される 一刻一刻 ぼくの瞳は あなたを視ている 檻に閉じ込めたおれを どうするんだい? あいつの檻より頑丈な檻に閉じ込めて 熱風に黄

【詩】ふたりは音楽

鶺鴒の高らかな歌声は 銀色 咲きそめし花水木の梢より さし出される光の指 居ずまいをただして 四番目の指へとおさまる その啼き声のカンタータは 銀色のまばゆい指輪 風にめくれるページの音は 草色 初夏の午前 書に耽るきみの栗色の目が 夢のつづきを追うように 空の果てへと移ろえば ページの鍵盤が奏でるのは 草色のグリッサンド 煉瓦路の落葉を駆けゆく音は 深紅色 出会うより以前の日々を 記した二冊のノートブック ひと日会う度ひと日を破り 彩雲の空へとふり撒くぼくら 夕陽の炎の