【詩】海風へ、生まれる。
抱卵の姿勢なら
燕 卵の上に水平にその身を置いて
それは 抱くというより
水平線の水平を 文字通り卵上に保ち
この季節は だから
燕は 一艘の船となる
おのが卵の中にも 海が眠ると
海をわたった燕は 知っている
吊革の下が一時の アサイラム
わたることが出来ない 空の為
地下鉄のトンネルの闇は
車窓をたよりない鏡にかえて
人ごみを歩くのが苦手なのに
人ごみを歩くのは得意そうな 顔
映し出さないのは 虚/実
どちら
身体の中を 光が 走り抜け
昔むかし 豊蘆原瑞穂国の葦の群