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【ハーモニー♡】

30代の半ば位のこと、縁あって社会人の混声合唱団に属していた。毎年、5月にコンサートがあり、一年かけて練習した20曲近くをお披露目する。毎週木曜日の夜が練習日で、秋には、泊まりがけで合宿にも行き、学生時代のサークル活動ようで、とても楽しかった。

構成団員は、一般の老若男女いろんな人たちがいて、音楽のキャリアも様々だ。プロのコーラスをやっていた人、子どもの頃に児童合唱団で歌っていた人、学生時代にグリークラブで活躍していた人等々。私は、ヴォーカルのスクールに通っていた時の仲間に誘われて入団したわけだが、子ども頃にピアノを少し習っていた位で、合唱、コーラスに関しては初心者だった。

ヴォーカル・スクールでは、ソロで歌うことをメインにトレーニングを受けていたが、コーラスとなると、また違う感覚や神経を使って歌うことになるので、その違いも面白い。

歌う曲目は、いわゆる合唱曲ではなく、アメリカンPOP、J-POP、ロック、Jazz、ゴスペル、映画音楽にミュージカルソングなど多岐に渡る。アレンジもプロのアレンジャーに依頼したオリジナルの曲がたくさんあって、本格的なコーラスグループだ。

女声は、ソプラノ、メゾ・ソプラノ、アルト
男声は、テノール、バリトン、バス(ベース)

の各パートがあり、総勢40名程で美しいハーモニーを奏でられるように練習する。

楽譜が配られ、各パートの音取りから始まり、リズム、テンポ、ブレス(息継ぎ)、トーン、ピッチ、グルーヴ感(ノリ)など、少しずつ合わせる作業を重ねてゆく。

私のパートは、「メゾ・ソプラノ」だった。「ソプラノ」と「アルト」に挟まれる、内声部となる。中間の音なので、中々音の取りづらい難しいパートだが、和音の響きの個性を出す音でもあるので、「縁の下の力持ち」的なやり甲斐のあるパートだ。

音感のある人ない人、リズム感のある人ない人、声量のある人ない人、ピッチの正確さなど、みんなそれぞれの中、何回も何回も繰り返し練習して、少しでも完璧で美しいハーモニーを奏でられるように意識を合わせてゆく。もちろん、集中力や根氣も使う。

そうやって本番に向けて練習をを重ねてゆくと、ある瞬間、みんながとても氣持ちよくハモれる時がやって来る。その時の氣持ち良さといったら、天にも昇る心地で、全身がゾワゾワっとして鳥肌が立つ程だ。世のコーラスの人たちは、この氣持ち良さがたまらなくて、やめられないのではないかと思う。
もちろん、本番で、たくさんのお客様たちの拍手を受ける時もいい氣分だが、調和した時の氣持ち良さは別次元のものだ。

コーラスをやっていて、もう一つ興味深いと言うか、面白いことがある。それは、声の高さと性格の傾向が比例していということだ。

本番の前になると、全体練習では補いきれない細かい課題が出てくるので、週末などの休みを使って、自発的にパート練習をすることがある。ただ、このパート練習をするのは、比較的声の低いパートに限られる。女声であれば、積極的にパート練習をするのは、「メゾ・ソプラノ」と「アルト」。男声であれば、「バリトン」と「バス(ベース)」だ。

あれ、「ソプラノ」と「テノール」は?

どちらも高音域で、主役のメロディーラインを歌うパートの人たちは、メロディーラインで音が取りやすく、特に自主練をする必要がないパートとも言えるが…実は皆さん、自己主張の強い方が多いので、「予定を合わせて、一緒にパート練習をしましょう。」と言う話には中々ならない。がんばって集まって、パート練習に漕ぎ着けたとしても、やはりそれぞれの自己主張が強いので、どうも練習がまとまらないらしい…。

低いパートの人たちは、協調性があるようで、みんなで集まってパート練習をするのが好きだし、本番の前には、何回もパート練習をして自主練に励む傾向があるのだ。

この対比が面白いなぁと思った。確かに、メロディーラインを歌う人たちは、主役となるので、「わたしに、オレについて来い!」「私たち、オレたちに合わせて来い!」位の気概がなければ、それこそ主役を張ることは出来ない。だから、その方が自然と言えば自然のことなのもしれないが、声の高さによって、これ程自己主張の強さの傾向がはっきりするのは興味深い。

確かに、一番低いパートである「バス」の男性たちは、皆さん、かなりおっとりとした人が多く、自己主張もどちらかと言えば、苦手なタイプの人たちだったが多かった。

ただ、ハーモニーの肝となるのは、下支えの「バス(ベース)」で、ベースがよく響くと倍音が鳴って、ハーモニーにぐっと奥行きが出るのだ。このおっとりした人たちの声をいかにしっかりと響かせるかが、大きな鍵となったりする。

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