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Unity 1週間ゲームジャム お題「ためる」に参加した話

今回もUnity1週間ゲームジャム(以下u1w)に参加しました!今回で通算10回目の参加になります。
今回作ったゲームはこちら。

どんぐりをためるリスのボードゲーム風アクションパズルです。
今回は青木ととさんとの共同制作となっております!

共同制作の経緯

ととさんとはu1wの振り返りや知見を共有するLT会であるunity1week online共有会を通じて知り合いました。その後unityroom管理人のないちさんが運営するゲーム開発者コミュニティ「Unityゲーム開発者ギルド」で何度かやり取りさせていただき、一方的にではありますが「この方とゲームを作ってみたいな」と漠然と思っていました。

今回のお題発表後、なかなか作るゲームが決まらず困っていたところ、

との発言が。軽い気持ちで「ください」絵文字でリアクションしたところ、

めちゃくちゃ詳細な仕様が!渡りに船とばかりにこの仕様を使わせていただくことにしました。

ととさんが忙しく、ご自身で開発できる時間が取れないため「案は自由に使ってください」とのことだったのですが、これだけのアイデアをいただいているので正式に共同開発としてクレジットさせていただきたいと申し出たところ快諾が。ととさんに影響が出ない範囲で進捗の共有やアドバイスをいただくことにしました(結果的にはとても働かせてしまったのですが……)。

開発開始

上記のような詳細な仕様があったため、完成したゲームのイメージは早期に浮かんでいました。
初めにこのゲームの中心要素を考え、「一度にたくさん持って帰りたいが欲張りすぎると帰れなくなる」というジレンマが最も面白くなるポイントだと判断しました。

その部分をメインの遊びにしたゲームに「海底探検」というボードゲームがあります。
これは複数人で遊ぶボードゲームで、海に眠る宝を拾い集め高得点を狙うのが目的です。奥に進むほど得点が高い宝があるのですがその分帰還が難しくなり、欲張りすぎたりほかのプレイヤーの妨害を受けることでそれまでの努力が無駄になったりしてしまいます。

公式サイトからの引用画像

「進むか、戻るか」といったジレンマを今回作るゲームでも表現できないかなと考えを膨らませました。(あとからととさんに聞いたところやはり海底探検は意識されていたとのこと……!)

海底探検が頭の中にあったため、一人用ボードゲームとしてゲームのイメージを組み立てました。まずはゲーム画面の簡単なラフを描いてととさんとイメージのすり合わせを行います。

わりと雑であとから手直しするつもりで描いたのですが、結果的にほとんど構成を変えることなく完成まで進みました。やはり共同開発ではイラストやモックを使ったイメージの共有が強力なように感じます。雑でもいいので要素を最低限表せるだけの絵心はあって損しないのではないでしょうか。

また、ボードゲーム部分が牧歌的なテーマなので少しひねりを入れた要素を入れたいと思いました。具体的にはリスくんのキャラクター付けで、やや毒のあるテイストを混ぜています。構想段階ではゲーム中の行動に対してもっと喋らせ、世界観やゲーム的なヒントをプレイヤーに提示する役割もありました。ほかにも取得したどんぐり数によって顔グラが膨らみ、UIが見えなくなってしまうなどのメタ的なネタも。

顔グラが膨らみすぎてUIに悪影響を与える

こういったボードゲームでは同じ基本ルールを何度も遊ばせることになるため、量産が容易なテキスト部分で体験のパターン化を防ぐというのはぜひやっておきたかったところです。残念ながら工数的に実現できなかったのが悔やまれます。

その後、ととさんのリデザインで以下のようなモックが。

あっ……最高 丸パクリします

元の要素を残しつつ必要な情報を整理・強調したすばらしいデザインだと思います。同じ文章中でもフォントサイズや色を変えたり、特に重要な部分に目が行くようになっていたり。こういった自分にはないスキルを間近で見られるのも共同制作のよい点ですね。

個人的な目標

ところで毎回u1wでは個人的な目標を立てているのですが、今回は新たな技術の習得ということで「UniRx」の勉強を始めました。

UniRxはUnityで使えるイベント処理・非同期処理に関するライブラリです。Unityの開発では広く使われており、そろそろ覚えないとな……と思っていたところでした。

また、合わせてUIの実装モデルである「MVPパターン」を意識した設計にもチャレンジ。これまで個人開発ではほとんど気にすることはなかった点ですが、ここ何度か共同開発をする機会が増えそろそろ設計のことも考えないと……と思い始めた背景があります。

そんなわけで新しい技術を勉強しながらの開発になったわけですが、これが非常に体力を使う。つねにキレつつわからないことを調べ、普段の手癖開発の倍以上の時間をかけることになりました。まあこれはこれで自分に向いている勉強法だと思います……。締め切りや不具合に困る経験がないとなかなか覚えられないんですよね。

そのため開発は遅れ、いつもよりさらに遅刻することになってしまいました。ととさん、参加者の皆さん、すまん……!もはやtwitterなどでは遅刻に触れることもなくなってしまった

細かいこだわりポイント

画面作りとしてUIのデザインを全体的にととさんにお任せしていましたが、自分はモーション付けを主に行いました。

押せるボタンをアニメーションさせて強調
特にフラットデザインが多いため、どこが押せる場所なのか明確にしたかった
ターン進行時に目立たせて区切りをわかりやすく
盤面の拡張時、シームレスな拡大やパネルの生成アニメ

シンプルなUIだけにアニメーション付けは丁寧に行い、単純な表示/非表示などもできるだけ使わずフェードで自然に表すようにしました。といっても何度も遊ぶことを考え、あまり演出に時間をかけすぎないようには意識したところです。各アニメーションのプレイヤー操作不能時間は長くとも0.2秒程度にしテンポよく進めるように気を付けました。

ゲームバランス調整の難しさ

基本のシステムが完成した後、各種数値の調整を行いました。テストプレイはととさんと一緒に行ったのですが、かなり急ぎ足の調整となったため後から考えるといろいろと反省の残るゲームバランスとなってしまいました。

かなりうまくできた!と思った自分のプレイですが、
ランキング上位を見ると異次元……

自分の想定したスコアは初回プレイで30~40程度、ある程度攻略を熟知しても最大で200程度でした。ところが上位層のスコアはその比ではなく、攻略法をかなり甘く見積もったことによる調整ミスを思い知らされました。

もちろん作者の想定を超える攻略というのは喜ばしいのですが、ゲームのデザイン的に「速度をできるだけ上げて虹どんぐりが大量に出るのを祈る」という以外のスコア稼ぎがなく、一定のスコアを超えた後はどのプレイヤーも同じ体験になってしまったのではないでしょうか。これがもう少し選択の余地があったりリスクを増やしたりすればスコアアタックもより楽しめるものになったかもしれません。

とはいえこれほど高いスコアを求めてやりこんでいただいたプレイヤーにはとても感謝しています……!高みを目指す方にもきちんとした体験を与えられるよう、今後はよりテストプレイや調整に時間を割くことを意識しようと思います。

結果発表

そんな開発でしたが最終的にはなかなかいいものができました。評価期間が終わり、なんと結果発表時総合1位を獲得しました!

やった~~~~

個人的には全体の作りは安定しているものの突出した個性が少なく各評価軸の上位はどうか……?という手ごたえだったので、総合1位は防御力に振った結果かなと思います。
あらためて遊んでくださった皆様、本当にありがとうございます!

ちなみに現時点(2022/9/27)では順位は変動しており、総合3位になっています。上位の評価が僅差だったのでこの後も変わりそうですね。

遊んだゲーム紹介

今回も他の方のゲームをなかなか多くは遊べなかったのですが、その中で印象に残った作品を紹介しようと思います。今回は各評価軸ごとに個性ある作品が多く、とても新鮮な気持ちでプレイを続けていました。

管楽のお時間です/taroさん

管楽をテーマにした、変わったシステムの音楽ゲーム。

制作者のtaroさん自身が作曲を手掛けており、独自のゲームシステムに非常にマッチさせています。一般的な音楽ゲームは発音のタイミングで入力するのが普通ですがこのゲームではあらかじめ入力をしておかなければならず、2軸でのリズム感が要求されます。これが楽器演奏としての譜面把握や息継ぎの表現としてぴったりとハマっており、とても着眼点に優れていると感じさせられました。またunityroomコメント欄に出現する平安貴族も推しポイント。ゲーム部分だけでなく制作者としてのスタンスにも感銘を受けました。

CupFighter!/staraさん

大量のコロコロとしたキャラクター同士で戦うローグライト(?)物理演算アクション。

プレイヤーにできるのはターンごとのジョブ強化だけ。戦闘は自動で行われ基本的に眺めているだけなのですが、これが異常に中毒性が高い。できることの幅が広く、最適解が全く分からないのになんとなく気持ちいいという脅威のバランスです。コロコロした挙動にも偏りがあり強力なパーティーでも運が悪ければ即死してしまうことが。それでも高いリプレイ性があり、ついもう一回を繰り返してしまいます。あまりの面白さに夜更かししてしまい生活に悪影響を与えてしまいました。

8ブロッククラッシュ/三草さん

8つのブロックを自分の好きなように組み立ててほかのプレイヤーと戦わせるビルドゲーム。

これまでのu1wから見てもトップクラスに楽しいと思ったゲームです。自分で組み立てる機体に愛着もありつつ、流行りのアセンブルや特定の機体に有効な戦術などがあり常に戦況を考えないといけません。ランキング1位を取ってもすぐ対策が開発され、この小さい規模の作品内でメタゲームが回っているのには感動してしまいました。今回特にお気に入りの作品としてイチオシです。

牛乳をためる女/トナリトさん

名画「牛乳を注ぐ女」をモチーフにした物理演算パズル。

なんといってもタイトル画面でスタートボタンに牛乳をこぼしまくる女性でいきなり笑ってしまう。そのまま放置していると無限にこぼし続けめちゃくちゃゲームが重くなるのも面白すぎる。出オチではあるもののゲーム性もあり、挙動の面白さやギミックの意外さにうならされます。パズルとしてきちんと考えられつつのこのユーモアセンスはとても見習いたいと思いました。

Mr.Tungsten -ミスタータングステン-/トロヤマイバッテリーズフライドさん

プレイヤーの残弾とライフが一体になった、駆け引きのある全方位シューティング。

シンプルなのにとても個性的な絵作りに目を惹かれました。単純な矩形というわけではなく不規則にアニメーションするキャラクターや独特のカラーパレットが世界観を作っているように思います。また制作者様によるサウンドが本当に魅力的で、何度も聴きたくなってしまいます。最近のu1wでは楽曲制作もプロ級の方が多く、あらゆるスキルがレベルアップを求められているな……と改めて感じました。

最後に

今回も楽しくゲーム制作ができました!ととさんとのチーム制作はとてもいい体験になり、また非常に高い評価をいただき嬉しく思います。
今回で連続10回目のu1w参加となりますが、リアルイベントへのゲーム出展をしたり個人的にゲーム業界への転職を考えたりなど、u1wをきっかけに多くのことを始めるようになりました。次回はいったん作るのをお休みして遊ぶ側に回ろうと思っています(イベントが始まったらやっぱり作りたくなってるかもしれませんが)。
重ねて素晴らしいイベントを運営されているないちさん、制作者の皆さまや遊んでくださった方に感謝を申し上げます!

おまけ

今回作ったゲームについて、以下イベントにて振り返り発表を行います!

今回のゲームの共同制作者の青木ととさんが主催、9回目となるu1w振り返り共有イベントとなります。
この記事で書いていなかったアナログゲームっぽいデザインについての話などをしようと思います。YoutubeLiveで見られますので興味があればぜひご覧ください!


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