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Unity 1週間ゲームジャム お題「正」に参加した話

いつも通りunity1week(以下u1w)の振り返り記事になります。
結果発表から少し間が空きましたが、次の開催までには書いときたいな~ということで久々のnoteです。

今回のお題は「正」!

初めてのチーム開発

前回の参加では総合1位というこれ以上ない栄誉をいただき、次は順位以外の新しい目標を立ててみようと思いました。そこで今まで気になっていたチーム開発にチャレンジしてみたい……!と思い至り、身の回りの開発者にお声がけすることに。今回ご一緒することになったのは以下の2チームの方々でした。

sartさんsskrさんらぶらどさん

sartさんはu1wお題「回」のときに参加されており、その時に自分のゲームをとても褒めていただきました。そのご縁で個人的にお話をするようになり、現在同チームで開発中の個人制作ゲーム「RYSTEL」のお手伝いをしています。チーム内でu1wの話になり、直近で大きなゲームイベントもないので本開発をいったん置いておき、メンバー全員のフル稼働でu1w作品を作ってみよう!ということでチームでの参加が決定しました。

さめみずさん

u1wの常連で、個性的で尖ったスタイルのゲームを得意とする開発者様。たびたびu1wで存在感を放っており、常々気になっていた方の一人です。自分が所属しているゲーム開発者コミュニティ「Unityゲーム開発者ギルド」にも参加されており、その中で自分のゲームに言及いただく機会があり「そのうちなにか一緒に作ってみたいですね」というやり取りをしていました。かねてよりチーム開発に興味があり、今回がいい機会ということでチームを組むことを決定。


当初の想定では今回自分はサポートに回り本開発は他の方々にお任せするつもりでした。メインの仕事は素材制作あたりになるかなと思い、指定されたタスクをこなすくらいであれば2プロジェクト平行でもなんとかなるのでは……と目論み、かけ持ちすることをそれぞれの方にあらかじめ承諾いただいていました。結果としては反省の多いものになってしまったのですが……。
今回の記事ではそのあたりの失敗の話、チーム開発ならではの発見や面白さの話などを2作品それぞれについて振り返ろうと思います。
どちらも謎解き系のネタバレがありますので、未プレイのゲームがあればお気を付けください。


His Right End : Five Days Journey

sartさんチームで制作した、謎解き要素のあるSFアドベンチャーです。
こちらの作品では主にグラフィック・サウンドをメインに担当しました。

制作過程編

今回の制作にあたり、sartさんの主導で事前にミーティングを行いました。「ストアでリリースできるクオリティを見据えて開発する」「各メンバーの作りたいものをリストアップし方向性の共有を図る」など、チームの意識合わせを明確にしています。
これらはお題の発表前に行っており、こういった場を設けることで開発に入ってからの意識のずれによるロスを減らしクオリティアップにつなげることができたと思います。

お題発表後、すぐにメンバーでのミーティングを開始。お題に合わせあらかじめリストアップしていたやりたいことと突き合わせ、実現可能性などとも合わせてゲーム内容を検討していきます。チームメンバーが好む方向性がおおよそ一致していたのもあり、「SF」「ホラー」「謎解き」といった要素をメインにしていくことに。アート担当のらぶらどさんから近いイメージの参考画像が挙げられたり、シナリオ担当のsskrさんが必要なギミックのリストアップ・複数エンディングのプロットまで用意してくれたり。とにかく驚異的なスピードで決まっていき、ほぼ最終系と同じ仕様が固まったのがお題発表後150分時点。

当時のslack上のミーティングまとめ

この時点でゲームの面白さや魅力を的確にとらえられていたのがわかります。自分もアイデア出しの時間は最小限に抑え面白さの核を早期に決定するというのは普段気をつけているところではありますが、今考えるととんでもない精度ですね……。

翌日からさっそく実装に入ります。メインゲーム部分のモックを自分が作成し、その間シナリオの練りこみ・画像素材の作成・ギミックの作成などを分担して行いました。このあたりはsartさんのディレクションによるものですが、実に的確でロスの少ない指示出しだったと思います。チーム制作において全員が無駄なく力を発揮するための調整役というのがいかに重要かわかりました。
その後も細かい仕様を詰めつつ作業を分担していくのですが、特にありがたかったのが非常に詳細な仕様書が作成されたこと。

仕様書の一部

あちこちで仕様の変更や必要素材の追加が多発するのですが、その中で指針となる資料の存在は非常に助けとなりました。今回チーム間のやり取りはSlackを利用していましたが、今回のゲームほどの規模ではログを追うだけでもかなりの時間がかかってしまいます。その中で「これを見ればやることがわかる」という共通認識を作っておくのは非常に効果的だと思いました。

その後仕様も固まり、素材をどんどん作っていくフェーズに。今回自分は主にゲーム内コンソールの画像・BGMを含めたサウンド作成(全体の8割ほど)を担当しています。ここでも早期に必要素材の洗い出しをしており、タスクを消化しきって手が空いてしまうようなことがありませんでした。……というか、必要素材があまりに多かった。プレーいただいた方はわかっていただけるかもしれませんが、これ1週間で作れる規模のゲームではないんですよね……。素材数も膨大になり、BGMも作成の必要があるとなっては使えるすべての時間を注ぐしかありません。当初の「素材作成メインであればかけ持ちもいけるか」というのが甘い想定だったと思い知らされます。
この辺りから正直あまり記憶がなく、ひたすらドット絵作成とDTMを繰り返していたような……。毎回u1wでは体力を削っているのですが、今回は顕著に疲れが出てしまったように思います。

その後もチームメンバーの手により実装が進み、最終的に2日遅刻となってしまいましたがゲームは無事に完成。
お手伝いした身ながら、完成品を見て個人開発では確実に実現できないクオリティに驚嘆してしまいました。開発中の自分自身の動き方としては大いに反省点があったのですが、完成したゲームのクオリティについては自信を持って保証できると思います。
ただし、今回の開発スピードはかなりの異例。開発終了時にはすでにメンバー全員満身創痍で、このようなパフォーマンスが出せるのはおそらく今後ないと思います。この記事も参考になる箇所はほとんどなさそう……。改めてこの規模のゲームをこの期間で作れたのは奇跡の一言です。

作品振り返り編

作品全体のコンセプトとしては「試行錯誤そのものを楽しませる謎解きアドベンチャー」といったところでしょうか。特にボタンの操作感や複雑なパネルといった、「よくわからんけどとりあえず押してみたくなる」作りに関してはとてもこだわられています。自分もSEの選定には気を遣い、ボタンやレバーの操作音は気持ちよさを第一に考えました。素材サイトの音を直接使うことはあまりせず、再生速度やピッチを細かく調整しています。またタイトル・エンディングなどのBGMをいくつか作成しており、(クオリティはともかく)短い期間でのサウンド作成の力はとても身についたように思います。

ゲーム内のコンソール画面も自分が作成しました。さまざまな進行のヒントが描かれているのですが、絶妙に伝わりにくいIKEAの説明書風の「文字を使用しない操作説明」がお気に入りです。

キャラクターもIKEAっぽい
余談ですが、コンソールは「スペースタイガー社が開発した旧式の航行システムで、旧式なだけに不親切なUI・情報不足」という脳内設定で作成しました。そこまで細かく指示されたわけではないですが、こういった裏設定を考えながら素材を作るのはとても楽しかったです。

u1wの作品としては類を見ない規模感になり、全エンディングを見るためには最低2~3時間のプレーが必要になるかと思います。トゥルーエンドを見るだけでもかなりの難易度であり、u1w評価期間中にたどり着いた方は数えるほどしかいないのではないでしょうか。きちんと評価するにはユーザーに負担を与えうる作りになっており、結果的に若干点数を落としたところはあるかもしれません。とはいえそれはu1wにおける評価軸の話で、単体のゲームとして見た場合非常に優れた体験を生み出していると感じます。数名の観測範囲ではありますが全エンディングを見てくださった方の評価はとても高く、改めて素晴らしいゲームの開発に携われたと嬉しく思います。


おもしろGAME

さめみずさんと制作した、メタ要素の強い謎解きゲーム。

制作過程編

このゲームの制作には紆余曲折あり……。
当初はさめみずさんがメインプログラム・自分が素材作成として分担し、別のコンセプトのゲームを作る予定でした。実現できればかなりの目新しさや楽しさを作り出せそうな雰囲気でしたがどうにも期間内に完成するビジョンが見えず、自分の判断でさめみずさんに作り直しを提言しました。自分のほうで考えていた案をたたき台に、現在の形の謎解きゲームを作ることに。とはいえこの時点ですでに4日が経過。この辺さめみずさんには直接謝りまくったのですが……冷静に考えて開発期間を半分過ぎて作り直しを提案、それも自分の案をゴリ押すというかなりの失礼ムーブ。ただ、このまま進めたとしても想定を超えるクオリティのものを期間内に作れる自信はないと感じました。ボツとはしましたがアイデア自体はとても面白く、いつかさめみずさんと何かの形で完成させられればと考えています。

さて新しく作ることにした謎解きゲーム。わりと自分はメタ的な視点で遊びを組み立てることが多く、特にここ最近連続で作っているのでちょっと封印したいなと思っていました。しかしお題から思いついたアイデアがなかなか面白そうに感じ、時間もないしまあええかとメタ全開に。芸風みたいなものだと思って大目に……(さすがにそろそろ控えよう)。

ベースを提案したのが自分ということもあり、メインプログラムを自分が担当しさめみずさんには素材のベースを作成してもらうことにしました。これも今思えば最善手ではなく、お互いの得意分野でない割り当てになってしまったと思います。結果としてはプログラミングの分担も上手くいかず、実装方法の違いが干渉してバグの温床になってしまったり。
その後、結局グラフィックやBGMについてもほぼ自分一人で素材を作成するような結果になってしまいました。チーム開発の利点を失うばかりでなくさめみずさんに失礼を重ねる動きに反省しきり……。それでも、事情を汲んでいただき気を遣わせないよう暖かい言葉をいただいたさめみずさんには感謝の念が絶えません。

結局完成は大幅に遅れ、トータル6日間の遅刻で提出。個人的にギミックの数々は気に入っているのですが、時間が足りないことで詰めの甘い出来になったしまったのは否めず。あとリリース後に知ったのですが、「There Is No Game: Wrong Dimension」という既存のゲームがかなり似たコンセプトらしく、何名からか「リスペクトゲーですね!」とのお声をいただきました。……すみません、このゲームのことを知らなかったです……。既存のゲームに被らないようにするというのはできるだけ気を付けているところではありますが、今回は単なる勉強不足でした。やはり普段から幅広くアンテナを広げておくのは大事……。ちなみにネタが丸かぶりだったら怖いのでThere Is No Gameはまだ未プレイです。面白そうだし勉強のためにそのうち……。

作品振り返り編

いわゆる「ゲームのお約束」部分にネタを仕込んだ脱出(?)ゲームと言えるでしょうか。これまでのu1wでもメタなゲームをいくつか作っており、その流れを汲んだ作品です。使用アセットの長い権利表記の下に先へ進むカギを隠したり、音量調節バーが進行に必須のギミックになっていたり。個人的にはなかなかひねった謎解きになっており気に入っていたのですが、それ以上に反省点が多かった……。

まずは操作系統のバグについて。前述したように複数人で作ったプログラムの競合があり、途中でアイテムが取得不能になるバグがありました。こういったメタなゲームにおける進行不能バグというのは通常のゲームに比べかなり致命的で、ユーザーからは仕様として進行不能なのか本当にバグなのかの区別がつきません。結果的に「もしかしたら自分が間違ってるのでは?」という疑念を持たせたまま不要な操作を行わせることにつながり、とてもストレスを与えてしまったと思います。
また、謎解きの難易度についても誤算がありました。作っている間は「誰でもクリアできる程度のやさしい謎解き」のつもりだったのですが、蓋を開けてみれば「難しい」「全然進めなくなってしまった」の声が数多く。謎解きの難易度調整は日ごろから悩んでいるのですが、これほど想定を外したことにショックを受けました。ただ、これは明らかに導線やヒントの配置不足といった制作者側の不備によるものだったと思います。たとえばオプション画面に「言語」の設定があるのですが、これは純粋にゲーム内言語の切り替えを行うのみで、進行に関するギミックではありません。

しかし「何かありそう」感は非常に出ており、人によっては無意味に時間を使わされてしまったのではないでしょうか。(一応の補足として、設定画面にギミックの歯車を配置する都合上ユーザーが操作できる項目を最低1個置いておきたかったという意図がありました。ユーザーがさわれる項目がないのに歯車のアイコンは不自然だろう、という考えです)
他にも「もしかしてこれが関係ある?」と思わせてしまうような不備がいくつかあり、無駄に難易度を上げてしまいました。進行に関係しないものは徹底的に関係ないように見せるという親切さを忘れてしまった結果ですね……。
やり直し要素が多いのもストレスの一つ。難易度設定の見誤りが原因ではあるのですが、「多くとも各ギミック1回のやり直しでクリアできるだろう」というつもりで即死トラップを多く仕掛けてしまいました。実際のプレーの様子を見ていてこれも猛省。

謎解きゲームは一か所で詰まるとそれ以上先を楽しめなくなるという難しい特徴があり、しかもユーザーは「自分の見落としのせいで進めていない」と思いがちでストレスがたまりやすいジャンルだと思います。それだけに丁寧な難易度調整は必須なのですが、今回そのあたりにかなり粗が出てしまいました。やはり2作品の同時進行に無理があり、時間が足りずに詰めの甘いものを出してしまい申し訳ない……と大いに反省しました。

とはいえへこんでばかりでもなく、アートワークやBGMはなかなかいいものが作れたと思います。特にBGMを演出に組み込むのはやってみたかったことのひとつ。また楽曲はu1w後に少し手を加えてロング版を作ってみたりも。

他に、さめみずさんのつながりから謎解きクラスタの一部でこのゲームが広がりを見せたようです。謎解き上級者にはこの難易度も好意的にとらえていただいたようで、普段感想をいただくことがない層からフィードバックをもらえたのは新鮮でとても嬉しかったです。

おまけ

おもしろGAMEくん
unityroomに住む謎の電子生命体。フリーゲームに擬態し、遊びに来たユーザーを食べてしまう。タイトルは自由に変えられるが、アホの子なので人がいっぱい来ると思って「おもしろGAME」にしている。
……という裏設定がありました。


総合的に、反省点は多かったのですが次に繋げられることも多い貴重な体験でした。これに懲りずに次はもっと上手くやるぞ……!という気持ちです。また今回不完全燃焼になってしまったさめみずさんとの開発ですが、このままでは終わらせないということでそのうちなにか発表できればと思っています……!(いつになるかわかりませんが……)


まとめ

以上のように今回のu1wを振り返りました。どちらも作品自体はとても良いものができたと思うのですが、自分自身のムーブに心残りが多かったです。やはり失敗の原因は作業量の見積もりが甘かったこと……。ただでさえ普段のu1wでも全リソースをつぎ込んでいるのに、2作品の同時進行は無茶だったと言わざるを得ません(それはそう)。チームのメンバーにも少なからずご迷惑をおかけしてしまったかと思います。しかしながらメンバーからは温かい言葉をいただき、共に良い作品の完成に尽力できたことはとても嬉しく励みになりました。改めてチームの皆さんに感謝……!
初のチーム開発ということもあり一人では得られない知見が数多く、今後の糧になったと思います。またそのうちチーム開発でのu1wにチャレンジしてみたいですね!ただ、かけ持ちは絶対にしない……(笑)

最後になりましたが、いつもながらunityroom管理人ないちさん・ゲーム制作者の皆さん・遊んでいただいた方々に深く感謝申し上げます。次回のu1wでもよろしくお願いします!


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