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Unity 1週間ゲームジャム お題「そろえる」に参加した話

今回もUnity1週間ゲームジャム(以下u1w)に参加しました!
いつも通り振り返りの記事になります。

今回作ったゲームはこちら。

犬と一緒に歩いていく8bitリズムゲームです。

今回の記事ではネタバレ要素があるため、未プレイの方は最後まで遊んでいただけると嬉しいです。


お題発表前

今回は今までと違ってお題発表前から作ってみたいゲームのイメージを何となく浮かべていました。u1wで今までに作ったことがなく、自分の好きなゲームのジャンルに「音楽ゲーム」「ホラー」があります。もしお題にしっくりくるようならどちらかで挑んでみたいという気持ちで、普段の生活でいろいろなネタをストックすることを心掛けました。結果的には今回のゲームに使った要素はないのですがなかなか面白そうなアイデアは溜まりました。そのうちゲームに活かせれば……というところです。

お題発表

さて、今回のお題は「そろえる」。前回総合1位のkinjoさんからの出題です。
ゲームにおいて何かを揃えるというのは一般的なアクションで、なかなかメカニクスのメインとして取り上げるのは難しそうに感じました。(kinjoさんいわく、あえて普遍的なテーマにして自由にゲームを作ってもらいたいという意図があったとのこと。素敵ですね)
こじつけるにしてもやや難しく、ここはひねらずストーリーやシナリオ的な取り入れ方がよさそう。そしてホラーゲームに組み込みにはややシリアスさが足りないお題かな……という印象だったので、音楽ゲームを作ることに決めました。

開発開始

ジャンルを決めたはいいものの、どのような内容にすればいいかは悩みました。システムで勝負しようにも大体の発想は既存の音楽ゲームでほぼ試されてるんですよね……。そこでシステム面での工夫以外の方向で何か新しい要素を足せないかと考えます。
わりと自分の場合は既存のゲーム性に対してミスマッチな要素を組み合わせるのが好きで、あまり音楽ゲームと相性がよくなさそうな要素はないかと考えました。その中で考え付いたのが音楽ゲームにストーリー性を持たせるというもの。
既存の音楽ゲームでは基幹システムはそのままに様々な楽曲を遊ばせるというのが一般的な構成だと思います。楽曲の追加などを考慮したシステムの都合上、単曲レベルでのストーリーなどはあってもゲーム全体として楽曲を含め1つのストーリーを描くというのはあまりなさそうに感じました。
逆にゲームジャムという短編作品を作れる場ではちょうどよさそうな題材だなと思い、どのような演出が作れるか考えることに。

一番最初に考え付いたのは「2つのレーンにそれぞれ1人ずつキャラクターがいて、流れてくるノーツがキャラクターの心情・情景を表す」といったアイデア。ストーリーが進むにつれノーツ自体の性質(スピード・SEなど)も変わっていく……のような感じですね。その中でも「ある曲で1人のキャラクターが不在で全くノーツが流れなくなり、別離を暗示させる」という演出を思いついた時は自分で「ほう……たいしたものですね」などと言ってしまいました。

キャラクターを2人用意するということで、前回にも作ったことがある犬と人のテーマを違った形で描けないかと考えます。その時はフィクション寄りの世界観だったので暗めのラストでまとめても問題なさそうでしたが、今回はもう少し普遍的な世界観、それも動物の生死という要素を含むのでネガティブなだけの終わりにはしたくないというのは第一に考えた所です。どうしたら気持ちよく終わってもらえるか悩みつつ、最終的にはうまい具合にまとめられたのではないかと思います。

そんなラストシーンのイメージとして浮かんだのはカットシーンとゲームプレイをシームレスに見せるというアイデア。これは音楽ゲームにストーリーを組み合わせるということに説得性を持たせるためのものでした。例えば「独立した音楽ゲームのステージ間にカットシーンがありそこでストーリーを進行させる」という手段もないではないのですが、これは音楽ゲームでなくてもできることなんですよね。せっかくならプレイ中の音楽に意味を持たせ、音楽ゲームのスタイルでないと実現できない演出はないかと考えた結果でした。

関連して、音楽ゲームのシステム自体でさらにストーリーを表現できないかと考えました。具体的には
・2つのレーンの判定ラインをずらす(最後の曲で初めて揃う)
・最後の曲で初めて同時押しノーツが出てくる
・曲によって各レーンの総ノーツ数に偏りがある(最後の曲で初めてノーツ数が同数になる)

といった箇所で意識しています。一般的な音楽ゲームでは上記のような箇所はあくまでシステム上の要素でしかないのですが、逆にそこで暗にストーリーを語るという手法は面白そうに感じました。

選曲画面もそうで、一見してストーリーがありそうな画面には見せていません。

普通の音楽ゲームっぽく見せかける

これはあくまで「システムでストーリーを語るのはこっそりと」という意図があったためで、たとえば選曲画面を「キャラクターがフィールドを進んでいく」といった演出にもできたかもしれませんが、今回のテーマにはそぐわなかったと判断しています。
そのあたりを隠し過ぎてストーリーの存在に気づかず離脱してしまうのは懸念の一つでしたが、後から考えてみると気づいた人だけわかってもらえればいい程度の隠し要素としてちょうどいいバランスではないでしょうか。

ここまでの案を振り返ったとき、今回本当に見せたいのはストーリー部分であり音楽ゲームのシステムはストーリーを表現するための手段でしかない、ということに気づきます。自分自身ですら「音楽ゲームが主でストーリーは従」のように考えていたのですが、逆にとらえることで様々な要素がうまくかみ合ったように感じました。そんなわけで個人的にはこのゲームのコアを音楽ゲーム部分であるとは考えておらず、遊んでくれた方の中に「本質は音楽ゲームではない」と感じてくれた方がいたらいいなと思っています。


レベルデザインについて

今回こだわった点の一つに、プレイヤーにどういった体験をしてもらうかを明確に意識してから各種制作を始めたことがあります。いわゆるレベルデザインと呼ばれる工程でしょうか。(この言葉も誤用が多いことを取りざたされがちですが、今回の使い方合ってるかな……)
ゲーム全体を通してもっとも見せたかったのがラストシーンであり、そのほかの要素はラストシーンを引き立てるために逆算して組み立てています。具体的には大きく分けて以下3つの視点からトータルのレベルデザインを考えました。

ストーリー
・楽曲の難易度
・システム的な目新しさ

いずれも意識したのはメリハリで、起承転結や序破急のような展開を考えた起伏をつけています。それぞれ具体的な構成は以下の通り。

1・2・3曲目は順当にストーリーを進めつつ、4曲目で急展開を起こし、5曲目でさらに意外な展開に進める
1・2・3曲目で順当に難易度を上げるが、ラスト前にいったん難易度を落とし5曲目の難しさを予感させる
1曲目でゲームシステムを理解させ、2・3曲目でパターンを覚えさせる
4曲目で突然パターンが変わり、5曲目で正統派音楽ゲームのシステムに回帰する

最終的にユーザーには以下のような体験をしてもらうことを意図しました。

4曲目までに感情の流れの布石を置いておき、5曲目ですべて回収する

このように最終的な体験の流れを意識することで、注力すべき要素やそれほど重要でない要素の切り分けができたように思います。もっとも重要な5曲目にリソースを注ぎ、そのほかは最小限の構成にすることで限られた制作期間内で最大の効果を得ることを狙いました。

また、個別の楽曲制作についても上記の流れを踏襲しレベルデザインの概念を意識しています。特に最後の楽曲については作曲の段階からゲームの完成形をイメージし、必要な要素を入れ込んでいきました。

まず初めに考えたのはイントロ、アウトロの構成。それぞれカットシーンを挟むことを決めていたのでざっくりと秒数を確保し必要なフレーズを考えました。ゲーム的な難易度を考慮して序盤は4分音符メインの簡単めのメロディ、だんだん音数を増やしていって最難所を後半に来るようにといったことも考えます。また演出上最後のノーツは必ず同時押しで締めたいと考えていたので、それに沿うような楽曲の終わり方を意識しました。

レベルデザインの観点から作曲を行うというのは既存の音楽ゲームでも取り入れられていることだとは思いますが、今回自分でやってみて想像以上に楽しく、またとても効果的な体験づくりに寄与したのではないかと思います。

さらにこのような全体の組み立ても大事でしたが、今回一番見せたかったのが5曲目ということでそこにたどり着かせるまでの導線は気を配っていました。いかにトータルの構成を意識しても途中離脱してしまっては意図が通じないので……。
5曲目までに脱落しないよういくつかの工夫をしています。たとえばクリアノルマを設定しない、曲ごとに情景が変わり続きのストーリーを示唆するなど。

ただ、これ失敗したと思ったんですが1曲目と2曲目ではほぼ画面に変化がない……。
犬と人間が成長していることに気づかなかった人がほとんどではないでしょうか。

途中脱落防止に特に気を付けたのは曲の長さ。一般的な音楽ゲームの1曲の長さの標準は2分程度なのですが、ゲームジャムにおいては少し長すぎます。4曲目までの楽曲は40~60秒程度に収まるよう展開を作ることを心掛けました。(これは短い制作期間の中ではかえって作りやすくて助かる制限でもありましたね)
さらにちょっとしたこだわりポイントとして、選曲画面に曲の長さを表示したことがあります。

各楽曲の長さが選曲前にわかる

あらかじめユーザーに拘束時間を示しておくことで途中離脱を減らす狙いがありました。細かいところではありますが、5曲目にすべてを詰め込むデザインということで少しでも体験を伝えるための工夫はできたのではないかと思います。


ここまであれこれレベルデザインについて書いてきましたがあくまで独自の分析であり、実際にこれらが上手く作用したかは自信がありません。もしかしたら的外れな作りになっているかも……?このあたりの知見に詳しい方がいたらご指摘・ご助言いただけると喜びます!
いずれにせよ、普段あまり取り扱わない考え方でゲーム開発を進められたのはとても楽しかったです。


そのほか雑多なこぼれ話

  • 楽曲の数は全5曲ですが、これは犬と人のストーリー進行を描くために最低限必要な曲数として設定しています。これ以上少ないと感情移入する間もなく結末に至ってしまい、ユーザー置いてけぼりの演出になると考えました(現状でも描写不足のためにそうなっているのでは、という懸念はありますが……)。
    ただ、最低限の数とはいえ5曲の作曲は普通に厳しかったです。今回事前に作ってあった楽曲はいちばん初めの1曲のみで、あとは期間中に制作しています。そんな作れないよ~多いよ~とキレながら作っていた記憶がありますね……。

  • ゲーム的な起伏を持たせるために普段作らないシャッフルビート(3連符を基本とする跳ねたリズム)や3拍子の曲にも初チャレンジしました。多少なりとも作風の幅が広がると……いいな……(作曲なんもわからん)。

  • 最後の曲のカットシーンは全9枚ですがこれを描くだけで3日かかりました。ストーリーを伝えるのに最低限これだけの枚数はいるだろうと判断したのですが、これもそんな作れないよ~多いよ~とキレながら作っていた記憶があります。

  • 作曲力と画力が欲しいよ~~~
    今回あたかも「自分曲も作れるし絵も描けますよ?」的な態度でこのゲームを作っていますが、いまだにクオリティには納得いっておらず本来自信満々に見せる水準ではないと思っています。しかしながら作ったものを「大したことないんですが…」と言って出すのはかえって失礼にあたると考えており、せめて堂々と「これが今の実力だ!」と前面に出すようにしました。(恥を忍んでイラストは全画面大写し、楽曲に至ってはsoundcloudで公開したり)
    実力不足のために本来意図した演出を表現しきれていない自覚はあるのですが、それでも現在できる最善は尽くせたと思います。もともとu1wでは「どんな失敗をしてもいいからとりあえずやってみよう!」というスタンスではありますが今回は特に多くのチャレンジができたのではないでしょうか。
    本当に自信を持って出せるようになるのがいつかはわかりませんが、当面は恥ずかしさをこらえつつ研鑽を続けるしかないかな……と思っています。今後も妙に自信ありげに至らないものを出すかもしれませんが、温かい目で見守っていただければ……。


まとめ

今回の制作は比較的理詰めで進めており、ゲームとして面白いポイント・見せたいポイントははっきり決まっていたのでそれに沿ってほぼ想定のものが作れたと思います。ですが、最後まで悩んだのが本当にユーザーが想定通りの感情を持ってくれるかという点。こればかりは予想やコントロールすることもおこがましいものではありますが、ゲームを作るうえで切り離せない「ユーザーの感情」というものを意識することの重要性と難しさを改めて認識しました。今回これを実現できていたかはかなり自信がなく、もし「こういう作りはイマイチだな……」とか「NotForMeだな」といった感想があればこっそりお伝えいただけると嬉しいです。

また、いつもながら締め切りを過ぎてのゲーム提出に。 基幹のシステムはトータル2日で完成していたのですが、グラフィックおよびサウンド作成に8日を要する事態になってしまいました。これは……まあ……今回の要件を考えるとそれはそうとしか言いようがないのですが。いろいろなことにチャレンジする楽しみはある一方、あれもこれも一人でやりたいがために手に余るものを作ってしまうというのは反省すべき点です。ゆるいイベントではありますが、締め切りをきちんと守る方々のことを考えもっとスケジュール感を意識した制作は心がけたいですね……。

最後に

今回も作品の雰囲気を壊さないようunityroomでのコメント返信は控えるようにしていました。特に今回は作品に込めた意図が多かっただけに感想が気になるところではありましたが、いただいた言葉のどれもが温かく、とてもありがたく思いました。毎回多くの方に多大なモチベーションをいただいています。この場を借りて深くお礼申し上げます。


おまけ

最終的な結果は以下の通りでした!

総合 5位(4.353)
楽しさ 11位 (4.275)
絵作り 11位 (4.626)
サウンド 2位 (4.681)
操作性 14位 (4.11)
雰囲気 9位 (4.549)
斬新さ 48位 (3.879)

2022/5/22 20:00時点

やはりサウンドに評価をいただけたのはとても嬉しかった……!ほかの項目も全体的に高く評価いただき、今回の傾向として非常にハイレベルだったほかの上位作品と肩を並べることができました!
やや心残りだったのは斬新さの項目が相対的に低めだったところ。確かに基幹のゲームシステムは一般的な音楽ゲームのフォーマットそのものですし、判定ラインのズレといったシステムは音楽ゲームとしてはかえって遊びづらい仕様だったりするんですよね。そういった部分を減点として評価されたのかなと思います。
個人的には先に書いたように「音楽ゲームのフォーマットそのものを演出の道具にしている」という考えが気に入っており、これまでのu1wで好んで使ってきたメタっぽい手法をさらにひねった自分らしい表現ができたのではないかと満足しています。(特に最近ワンパターンっぽくなってきてたので、好きな表現から逃げずに新しい見方を得られたのはとても良かったです。)

また、ゴールデンウィーク中の開催ということもあってか参加作品の平均的なクオリティがとても高く、遊ばせてもらった他の方のゲームも非常に素晴らしかったです。最後に少しだけではありますが今回とても面白いと思ったゲームを紹介させてください。

そろいぶみ/二兎さん

5人乗りの自転車のペダルをタイミングよく踏み込んで加速するゲーム。

シンプルな絵作りにサウンドも最小限なのですが、とても効果的にゲームのユーモラスさを伝えています。うまくタイミングを合わせた時の爽快感、実際にどんどん加速していき連打と化すゲーム性が楽しく何度も遊んでしまいました。

チュートリアルが非常に好きです。
「なるほど」

フォントもめちゃくちゃかわいい。これは自作でしょうか?
いろいろなデザインが自分の感性に刺さってしまい、今回最も高得点をつけた作品のうちの一つです。

おそろっち/炭酸ミルミルさん

某懐かしの携帯ゲームを彷彿とさせる脱出(?)ゲーム。

ゆるくかわいい絵作りなのですが、ちょっとしたことですぐ爆弾が爆発しおそろっちが死んでしまいます。おそろっちを救うために様々な操作を試すことに。
操作感が非常に良く、いろいろな行動を試したくなります。そのたびに爆死してしまうおそろっちですがそれもかわいく、リトライ性も良いためストレスが全くありません。謎解きも丁寧で無理のない難易度と、かなり練られた作品に感じました。

この画面が最高すぎる


四字戯画 ~よじ君の漢字クイズ~/瓜頭(かず) 🍈さん、nyoさん

絵の描かれたパネルを組み合わせて漢字を表す別の絵を作り、四字熟語を完成させるパズルゲーム。

今回特に推したい作品です。非常にユニークなゲーム性で、いったいどのようにこの発想に至ったのか想像もつかないくらいです。漢字どうしの組み合わせで新たな漢字を作れるのですが、その解釈がどれもユーモラス。四字熟語を作るのが目的ではありますが新たな漢字を見つけることそのものが楽しく、ゲーム性の核をうまくずらしてきたなという印象です。あれこれ解説するより実際に触ってみて楽しさを実感してほしい、人に薦めたくなるような素晴らしいゲームでした。

とにかくやってください……


今回の振り返り記事は以上です!
毎度のことながら新鮮な驚きや成長が得られてとても素晴らしいイベントだと思います。次回のu1wも楽しみですね!


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