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経営改善に、痛みはいらない

こんにちは、医療経営コンサルタントRe-FREE代表の梅木です。

「小規模病院の毎日をラクにし、スタッフの満足度やサービスの質を高めるカギは医療経営にある」。これは私自身の経験に裏打ちされた認識であり、揺るぎない信念でもあります。コンサルタントとして経営の観点から医療業界に貢献しようと決意したのも、この信念があったからです。

ところで、実際に小規模病院の経営改善を推し進めるにあたっては、ぜひとも押さえるべきポイントが存在します。それらを踏まえて取り組むことで、経営の改善はみなさんの想像よりもはるかにスムーズに成し遂げられます。この記事ではそのことについてお伝えしていきたいと思います。

小さな変化で、経営はラクになる

おそらくほどんどの方は「経営改善」と聞くと、痛みや苦しみを伴う大がかりな組織改革のようなものを想像してしまうのではないでしょうか。医療の現場でも同じですが、たしかに致命的な状況で命を救おうとすればどうしても痛みが伴います。

しかし、問題のある経営状況の改善は、致命的な傷病よりもむしろ生活習慣病の治療になぞらえられると私は考えています。ご存知の通り、生活習慣病の治療にあたっては大きな痛みはむしろ逆効果。小さくとも根本的な変化がカギになることは、医療も経営も同じです。

そもそも小規模病院の経営改善は、「これだけ?」と思うような小さな変化から始めざるを得ません。現場のスタッフは自身の専門とするサービスの提供や研鑽に日々追われており、大変化に対応するゆとりなどないからです。大がかりな経営改革案は一見魅力的に見えますが、その案を実行するのは現場のスタッフです。彼らの事情を置いてけぼりにした改善案は、まさしく絵に描いた餅にしかならないのです。

せっかく大手のコンサルタントに高額のコンサルフィーを支払ったのに、提示されたのは実情にそぐわないオーバーサイズな改革案。決死の覚悟で現状打破に臨んだ結果がそれではまさしく本末転倒です。だからこそ、経営理論だけでなく現場の実情にも沿った改善案を編み出し、小さくとも核心を突いた改善策から着手していく必要があるのです。

大切なのは、3つの「S」

小規模病院が医療経営の改善に着手するにあたって、改善策が満たすべき要件は3つあります。すなわち、Simple・Smart・Speedyです。これらを兼ね備えた経営改善により、医療経営はみるみるラクになります。

・Simple

経営改善に取り組むうえでの最大の障壁は現状維持バイアス、すなわち現状を維持しようとする力です。この力に打ち克つために、一時的に大きな力をふるわざるを得ないタイミングは確かにしばしば存在します。そうした時には、たとえばトップからの強制力や、大かがりで魅力的な改善案が持ち出されることになります。

大きな力には弊害が伴うもの。トップからの強制は院内全体に大きな歪みも生み、スタッフの離職などのネガティブな事態を引き起こす恐れがあります。他方で大がかりで魅力的な改善案は、一時的な改善行動の着火剤にこそなれ、放っておくと時間とともに忘れられ、実行されることなく立ち消えになります。これらの弊害を無視してむりやり事を進めてしまうと、結局すべてが中途半端に終わってしまいます。

ここで求められる視点は、現場にも理解しやすいシンプルさです。調査や分析を行う段階ではどうしても複雑な思考が必要になりますが、それらをまとめ、現場に伝える表現はやはり端的でわかりやすいものでなくてはいけません。「たったこれだけ?」と思われるくらいシンプルであればこそ、現場の混乱は少なく済み、計画も実行に移されやすくなるのです。そうして施策が軌道に乗ると、PDCAサイクルが回る正しい組織風土ができあがり、孤独に経営を頑張っていた院長先生の肩の荷もどんどん軽くなっていきます。

・Smart

当たり前ですが、大切なのは最小限のコストで最大限の効果を生み出すことです。そのために必要なのは大きく2つ、すなわち「根本的な要因にきちんと迫ること」と「全体最適を図ること」です。

まず、根本的な要因にきちんと迫ることについて。
大前提として、あらゆる問題解決にはあるべき姿(目標)を定めることが不可欠です。事業体としてのあるべき姿、プロジェクト一つ一つのあるべき姿、スタッフのあるべき姿などについて、徹底的な検討を加えて言語化していく必要があります。そうして心の底から納得できる目標が設定できれば、現場で起こるさまざまな現象から真の問題点がおのずと浮き彫りになります。そしてあるべき姿を現場のスタッフにきちんと共有できれば、彼らが自ら問題点を見つけ、現場の実情に合った解決策を主体的に導き出すサイクルも回り始めます。

次に、全体最適を図ることについて。
医療・介護の現場においてありがちなのが、専門によってタテ割りされた部署間で連携がなされておらず、問題解決の施策が各部署内で完結してしまっているケースです。こうした部分最適的な取り組みは一時的・表面的な問題解決にはなり得たとしても、いずれは歪みや非効率を生み出します。必要なのは、常に全体像を意識すること。全体の業務フローを可視化し、重複している箇所や煩雑になっている箇所を改善していくことで、部署間の軋轢も軽減し、無駄のないしなやかなチーム医療が形になります。

病院を外部環境まで含めた大きな全体としてとらえ、あるべき姿を徹底的に浮き彫りにし、問題の根本を探り出して狙い撃つ。このようなムダのない最小限の動きで最大限の効果を生み出すことが、本質的で持続性のある改善につながっていくのです。

・Speedy

産業そのものの動向が制度に大きく左右される性質上、医療・介護業界の変化のスピードは他の産業と比較して遅いとよく言われます。しかし、だからといって悠長に構えていて良いのか? 当然そんなことはありません。医療経営の安定は、制度の3年先、5年先を行くスピード感で常日頃から変化を重ねていけるどうかに大きくかかっています。

もちろん、そのスピード感とは「バタバタ走り回ること」ではありません。公的な資料などの安心・確実な情報に基づいてポイントを押さえ、核心を突いたシンプルな改善策を重ねていくこと。そうすれば、小さくゆっくりに見えても改善は確実に進みます。そして実はそうした小さな積み重ねこそが、跳躍伝導のようなスピーディーな改善を長期的にはもたらしていくのです。

ここ最近の新型コロナウイルス感染症拡大により、日本中、いや世界中の医療機関が急速な環境の変化への対応を求められました。とはいえ今回の感染症拡大のような大異変は、決して特別なことではありません。歴史を振り返ってみても、リーマンショックなどの経済的不況や地震などの災害は、十年に一度のペースで起こっています。その意味でも、日頃から変化に強い組織を作っておくことは重要です。

日々の小さな改善の積み重ねこそが、どんな経営環境にも速やかに対応できる組織の形成につながる。スピード感がきちんと身についているかどうかは、小規模病院の生き残りの分かれ目と言っても過言ではありません。

余計な痛みのない改善のために

以上、小規模病院の改善に欠かせない3つの「S」についてお話ししました。これらを満たす改善策で問題の核心を突くことができれば、小規模病院の経営はみるみるラクになります。余計な痛みを負う必要もなければ、多額のコストを支払う必要もない。必要十分な最小限の変化さえ起こせれば、改善はきちんと進んでいくのです。

ただ、そうした改善を経営に特化した人材抜きで実践することは、率直に言って相当困難です。その意味においてやはり重要なのは、経営理論の理解と現場の実情把握を両立し、経営に時間と労力を集中させられる人材を活用すること。必ずしもフルタイムの人材を確保する必要はありませんが、医療経営に精通した専門家の力はある程度頼りにすべきです。私もいち医療経営コンサルタントとして、困りごとを抱えた小規模病院の力になっていきたいと考えています。

核心を突いた小さな変化から始めていけば、経営改善に痛みはいらない。長年戦ってきた不安と疲弊から解放され、日々の医療サービスに思いきり打ち込む院長先生や現場スタッフのみなさんの晴れやかな表情を見るのが、私にとって何よりの喜びです。

『idea notes of Re-FREE』、他の記事はこちら↓

▼#1 明日をラクにする、経営改善

▼#3 小規模病院が向かうべき先



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