見出し画像

地方創生と政策起業家(2)

私が代表を務めるNPO法人SETは、東日本大震災直後から活動を開始して、次の3月13日で11周年となります^^
11周年をきっかけとし次の10年さらに活動を広げていきたいという思いから現在暗ウドファンディングに挑戦中です。
ぜひページをご覧いただき、キャンペーンにご参加いただければと思います!
(また協賛企業様のおかげで手数料0円となっておりますので、
全額SETに寄付されます)

さて前回記事で、「農村や漁村などの過疎地ほど政策起業家が必要である」と書かせてもらいました。それについて本日は書きたいと思います。

農村地域ほど、「起業家的政治」が必要であり、「政策起業家」の存在が必要だと結論づけられている論文があります。
「起業家的政治」とは、「社会全体に拡散的な利益を約束する一方で、明確に識別可能な小集団には具体的なコストが発生する政策である」とされています。「社会的ジレンマ」と近いものです。
例えば環境政策は、社会全体、地球規模で考えると多くの人々に利益がもたらされますが、一方で環境負荷の高い産業には明確な規制がかけられることとなり、高いコストが発生する可能性があるなどです。

なぜ、分配上の対立が生じているにもかかわらず、このような政策が実行されるのかというと、特別な政治的アクター、いわゆる『政策起業家』の存在があるからだと言われています。
政策起業家は、世論に影響を与え、特別な政策の反対者を守勢に立たせ、共通に共有された価値観を論証に用いることができるとされています。

さらに、「農村地域における地域ガバナンス(革新的なことなる手段を組み合わせて開発する)の目的の一つは、セクター別の政策(農業、自然保護、観光など)から、地域開発戦略の目標に向けて、すべての関連アクター間のセクター間協力を発展させることである。政治は、もはや関係者の個別の利益ではなく、地域の利益に向けられなければならない。しかし、このような変化は、地域ガバナンスに関わるさまざまな利害関係者の間に分配上の対立をもたらす。」としてされており、「地域ガバナンスは『起業家的政治』の典型であるという結論に至る」とされています。

「地域ガバナンスは、再分配政策、集合的財の生産、伝統的な地域開発政策の変更などを扱うゆえ、政策起業家の行動に典型的な政策分野である」とされているのです。

日本では、従来の国による標準化された枠組みとそれに依存した地方の政策展開が長らくされてきました。
しかしこれからの時代は、地域資源を個性的に地域自らが活用し、多面的な高付加価値を目指す政策の視点、すなわち地域に根ざした価値を引き出し拡充すると同時に、地域の欠点を克服するリージョナリズム(地域主義)の視点が重要となります。

この観点からも政策起業家の役割は大きいと言えるのではないでしょうか。

==

参考

宮脇淳・若生幸也(2016)『地域を創る!「政策思考力」入門編』ぎょうせい

Böcher,Michael (2011) “The Role of Policy Entrepreneurs in Regional Governance Processes” The 6th ECPR general conference, Reykjavik, August 24-27, 2011.

Wilson, James Q. (1980) ”The Politics of Regulation, in: Wilson, James Q. (Hrsg.)” The Politics of Regulation. New York: Basic Books, 357-394.

==

これまでの政策起業家に関する記事一覧はこちらになります。

また、政策起業家の行動原理など、海外の30年間の研究蓄積がまとまっている書籍の翻訳本の出版を行います。30年分の差を、この1冊で埋められるとは思っていませんが、少しでも日本で早く「政策起業」が拡がればという思いでいます。


最後までお読みいただきありがとうございます。
日本では「政策起業家」に関する研究が非常に遅れています。
研究を応援いただける場合には、
「サポート」していただけますと大変嬉しく思います。
サポート資金は全額、「博士後期課程」への進学資金にさせていただき、
更なる政策起業家研究に使わせていただければと思います。
どうぞよろしくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?