バーの華①

冒頭からなんだが、まぁ、ぶっちゃけ、魅力的な女性がいるバーは繁盛する。

これは古今東西変わらぬ真理であり、おそらく2000年前にローマの街角にあったであろう居酒屋の経営者に聞いても同じ意見だったに違いない。

ということで、今日は、俺がビアバーを買収するきっかけをくれた女性について書く。

まず、俺が常連になった頃、バーの従業員はベルギー人のG店長のみだった。それからしばらくして、バイトの女の子が働き始めた。

彼女の名前はアヤナ(仮名)。確か東大法学部を卒業したばかりで、一応会社員?だが、会社としては規模は小さく、社長に気に入られて働き始めたような感じだったと思う。

俺は初見から、彼女には、俺が知り合ってきた、(若い頃の)東大女子達とは一風違う何かを感じていた。なかなか形容するのは難しいし、そもそも東大女子、と一括りするのがそもそも乱暴であるとは自覚しているのだが、、、


一言で表現すれば、彼女は自由だった。

「自由になる」ということについて、俺なりに解釈するとすれば、「属する社会やコミュニティ、国、時代が、無意識に刷り込んでくる常識を疑い、相対化することによって視野の枷を外していき、自分の定規を持つ事」に他ならない。まぁ、簡単に言うと「流されない」「常識を疑う」という事だ。
基本的に人は歳を重ねるごとにどんどん社会の雰囲気に呑まれ、不自由になってくる。自由で居続けるには、今自分が立っている場所を俯瞰する知性と、自分は自分でありたいという強い自我の両方が必要になる。ただ好き勝手生きているというのは、俺の思う自由とは違う。

彼女は確か高校時代から摸擬国連の日本代表だか何だかに選ばれ東大は推薦入学、大学時代の活動を聞いても、アメリカの大学との交流サークルのリーダーだったか、まぁ望めば人気省庁や外資コンサル、外銀、商社等、所謂東大生に人気のピカピカな進路は選び放題だっただろうが、聞いた感じだとそこら辺は一顧だにせず、在学中に知り合った社長の会社に就職、そして夜はベルギービールバーでバイトをしている時点で相当変わっている。

おそらく、自分にとって何が幸福なのか、相当深く考えた事があるのだろうと思う。

そんな独特の魅力を持ったアヤナ目当てに、大量の陰キャ東大生達がバーに来ていた。俺はアヤナに促される形で、そんな東大生達に、たまに人生のアドバイスをしたりしていた(その内の1人はその後商社に就職して常連になってくれている)。

その後アヤナがイギリスに駐在することになり、バーの売上も大分減ってしまったらしい。イギリスに行ったのも、元々ポストがないところで、社長が彼女の為にポストを作って、2年間くらい何でも好きな事やっていいよ、と送り出してくれたらしく、相当目をかけられているわけだが、俺はその社長の気持ちも分からんでもない。彼女は将来何者かになるのではないか、と思わせる何かがある。

最近近況を聞いたら、突如小説を書き始めて日本の文学賞に応募したところらしい。とにかく溢れた才能を自分でも持て余している感がある。


・・・・何の話をしてたんだっけ?


そう、バーの華の話。


バーを繁盛させる為には、魅力的な女性に働いてもらわなければならない。

そんな女性が見つかるだろうか?と頭を悩ませていたところに、とあるバイト候補の女性が現れた。


次回は、その新たな仲間について書こうと思う。


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