Vol.2 大切なものを大切にできる人になりなさい

久々の投稿は今まで直接言われた印象に残ってる言葉シリーズの第2弾を書こうと思う。

今回は母親から言われた言葉で、

「大切なものを大切にできる人になりなさい」

である。

僕の母親を一言で言うと「隣人愛の強い人」がしっくりくるだろうか。思い返せば自分のことは二の次で、常に僕や姉、妹のことを優先してくれた。
介護職に就いているが、仕事でもそのスタンスを崩すことがない。自己犠牲を厭わない性格なのだろう。

そんな母親らしい言葉は僕に大きな影響を与えてくれた。

高校3年生の夏頃、僕は大学進学について悩んでいた。簡単に言うとサッカーを続けるかどうかである。

一方は推薦で大学に入学することができるが、体育会として4年間サッカー部に所属しなくてはならない。もう一方は普通に受験をして、サッカーは趣味として続ける程度。

夏のインターハイ前に怪我をして全く思うようなプレーができず、試合にも出られていなかった僕は大学でサッカーを続ける自信も失い、高校で競技としてのサッカーを諦めるつもりでいた。

加えて、こんな低いモチベーションで体育会サッカー部に入部して、部費などを払ってもらうなど申し訳ないと言う気持ちもあった。

「推薦は受けずに大学受験するよ」

僕は母にそう伝えた。
これまでサッカーをすることでたくさんの迷惑や負担をかけてきた両親に対してこれからは自分で生きていくよという主張でもあった。

今考えるとただの現実逃避である。すると母は、

「反対はしないけどしゅんはそれで満足?納得のいく選択なの?」

しっかりと図星を突かれた。
正直、満足など全くしていなかった。試合にも満足に出れていないし、長年続けてきたサッカーをこんな形で終わらせるなんて後悔でしかなかった。

「お金のことは大丈夫だから、自分のやりたいことをやりなさい。しゅんがサッカーをしている姿を見ることが私にとっての喜びなんだから」

これまで自分のためだけにサッカーをしてきたつもりだったが、応援してくれるお父さんやお母さんの思いも背負っていたことに気付かされた。
確かに思えばメンバーに入ったといえば一緒に喜んでくれ、試合に負けた時も一緒に悲しみ、いつでも励ましてくれた。

「大学でもサッカーをやらせてください」

心の底からの自分の想いを母に伝えた。

「わかった。ちゃんと大切なものを大切にできる人になりなさい」

その時に言われたのが今回のこの言葉である。
母親は僕にとって大切であるサッカーを大切にしてほしいと伝えてくれたのだと思う。

結果的に僕は、青山学院大学で4年間サッカーをすることができて本当に幸せだった。
あの夏、サッカーを大切にできたおかげで、大学でたくさんの仲間や、尊敬できる人、今取り組んでいるブラインドサッカーに出会うことができた。

今でも母親と話しをしていてこの人には勝てないなと常々思わされる。

このまま終わるのは母の好感度を上げるだけで面白く無いので、最後に僕が母親にされて一番嫌だったエピソードを紹介して終わりたいと思う。

それは中学生の頃、クラブチームの練習終わりの出来事だった。
夜練だったので終わったのは21時過ぎ。

練習場の照明が切れてしまったため、締めの挨拶を自販機の前で行っていた。
監督が真剣に話しているなか、突然背後から聞き馴染みのある怒号が飛んできた。

「しゅーーーん!!!何やってんの!!!
早く帰るよーー!!!!」

母である。謎である。
母は練習終わり、自販機の前で子どもたちがたむろして話していると思ったらしい。

監督はもちろん苦笑。チームメイトは爆笑。僕は恥ずかし死する寸前。
そこから中学卒業までの間、母親いじりされ続けた事は言うまでも無い。

でも、そんなたくましくて優しくて天然な母親を僕は心から尊敬している。相変わらず迷惑はかけているが、この言葉を教えてくれた「大切な母」をこれからも大切にしていきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?