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『つくし世代』【過去メルマガPick Up】

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今回は、、、、


●つくし世代 「新しい若者」の価値観を読む


著者:藤本耕平
出版年:2015年
出版社:光文社

リンク:
t.ly/Evgs

▼140文字ブリーフィング:

若者世代へのマーケティングの仕事をしている著者による、
「今時の若者論」です。
著者はまず、「若者」を、
1992年以降に小学校に入学した世代、
つまり本書執筆寺の2015年に、30歳以下の世代を、
さしあたりここでいう「若者」と定義します。

その理由に、
1.「新学力観」に基づく教育基本法が1992年だったこと、
2.専業主婦世帯を共働き世帯が上回ったのも1992年だったこと
3.小学校時代にパソコンと高速インターネットが家庭に普及したこと。
4.1992年はバブルが崩壊した年だったこと。

という4つが挙げられます。

つまり、
教育環境、家庭環境、
情報環境、経済環境が、
それよりも上の世代と比較し、
様変わりしたのがそれ以下の世代であり、
ざっくり今35歳以下の世代の特徴なのだと。

ではその世代にはどのような特徴があるのか、
というのを著者は、
これまで展開されてきた、
「ゆとり世代」「さとり世代」とは違う切り口で、
「つくし世代」と呼びます。

彼らは確かにゆとり・さとりが象徴する、
ガツガツしていない側面があるのだが、
彼らは彼らなりに、
独自の欲求を持っていて、
それが上の世代の前提と乖離しているから、
時々その行動原理が読めないのだ、と。
だから上の世代のマーケティングが、
まったく若者に刺さらなかったりするのだ、
という話しです。

今時の若者の価値観を著者は
いくつかのキーワードで説明していますので、
ここに列挙しますとこんな感じ。

「つながり願望」
「チョイスする価値観」
「ケチ美学」
「ノット・ハングリー」
「せつな主義」
「誰トク」
「サブアカ」
「コスパ至上主義」
「いつめん」
「自分ものさし」

これらが象徴するのは、
「個性的であるのは当たり前だし、
 競争とか一番になるとかそもそも興味ないが、
 個性的であることの難しさや、
 個性的でありながら、
 なおかつ他者とつながる願望のジレンマを経験している」
といった今の若者の姿が見えてくる。

また、お金を使わずにいかに楽しみ、
自分だけでなく他者ともその楽しみを共有するか、
みたいな発想が旺盛であることもわかる。
今の若者では複数アカウントを使い分けるのは常識で、
それが複数の文脈ごとに違う自分を使い分ける、
「キャラ化」にもつながっている、
などの分析がなされていきます。

私が最も「なるほど」と唸ったのはこれです。
それは「つくし世代」との命名からも分かるように、
今の若者はボランティアや社会貢献に敏感です。
その一方で統計は、
「若者の献血」の明らかな低下を示している。

そこから分かるのは、
今の若者は、
「ありがとう」と言ってもらえる体験に貪欲なだけで、
「公共性」みたいな視点はないということだと著者はいうのです。
つまり献血とか選挙とか政治的言挙とかって、
公益に資するのだけど、
そのレスポンスが直接見えにくい。
それは今の若者には「コスパが悪い」と映っている、
ということです。
つまり彼らは「ありがとう」と言われることが嬉しいのであり、
社会が実際に良くなるかどうかには、
そもそもあまり感心がない。
私はけっこうヤバイと思います。

その部分を引用しましょう。

→P121~122 
〈第10章「つくし世代」で改めて説明しますが、
今時の若者たちには、お金や将来のためより、
そういう「仲間との一体感」や
「感謝」の獲得を行動原理としている面があります。その彼らにとって大事になるのは、行動の結果が目に見える、
すぐに反応が返ってくるということです。
次ページのグラフを見て下さい。
献血者数の推移を表したものですが、
30代~60代までの献血者数が、この15年ほどの間で、
横ばいかやや上昇しているのに対して、
10代、20代の若者においては急激に低下しています。
1994年の時点では、20代の献血者数が、
すべての年代の中で圧倒的な1位だったのが、
2008年の時点では、人数にしてほぼ半分になり、
もともと少なかった50~60代の献血者数と並んでいる。
少子化で20代の若者の数自体が減っている、
ということだけでは説明できない、
尋常ではない「若者の献血離れ」です。
若者ボランティアがブームになる一方で、
献血離れがこれほど進むのはなぜでしょうか?
その違いは、
やはり「直接的なレスポンスの得やすさ」にあると思います。
献血というのは、自分の提供した血液が、
どこでどう役立っているのか分かりにくいものですよね。
今時の若者たちは、結果が見えにくいこと、
人からの感謝や笑顔といった
直接的なレスポンスが得にくいことには興味を持たないので、
あまり積極的になれない、ということではないかと思います。〉


、、、投票率が低いのも同じですよね。
投票って「誰トク」なの?
って話しになってしまう。
コスパ悪すぎるよね、
って話しになってしまう。

私は若者へのマーケターではないので、
究極的には「勝手にしろ」としか思いません。
自分の世代で手一杯です。
必死です。
若者のことを考える余裕などない。
彼らを手引きするなんて、
私には手に余る。
(本心では勝手にしろとは思ってないんだけど、
 余計なお世話になりたくないので、
 偽悪的に敢えてこう書きます。
 自分たちの世代=ロスジェネ・氷河期世代も、
 相当大変な世代ですので、
 ウソじゃないですし。
 いろいろ心配もしているし、
 若い世代のために、
 何かできることがあればしたいとも思う。
 でも、自分から積極的には行かない。
 行かない方が良いと直感的に思っている。
 私はそういうバランスです。
 鬱を患ってからは特に。
 「大切なことは向こうから来る」
 を大事にしています。
 助けが必要な人は、
 オンライン聞き屋、ご利用ください)

話がそれました。
公共性と「誰トク?」の話しね。

でもしかし。

これって、
けっこうヤバイなぁ、
とも思う。

なぜか。

「投票って誰トク?」
「献血って誰トク?」
という政治的・社会的シニシズムって、
結局は「政治家・為政者の得」になるからです。
これは構造的に必ずそうなっています。

つまり「誰トク?」と言い続けることにより、
自分を抑圧し搾取する為政者や権力者を利することになり、
最終的に一番損をするのは自分(たちの世代)になる。
そして当人はそれに気づいてさえいない、
というのが今の若者だとしたなら、
それは、けっこう頭が痛いことだと私は思うからです。
彼らからするとそれ自体、
「うっせぇわ!」ってことなのだろうけど笑。
(2,272文字)


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