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ミネルヴァ映画会 2月23日開催 解説①

開催日:2024年2月23日金曜日 20:00~21:30




▼▼▼オンライン寺子屋構想▼▼▼


さて。
ミネルヴァ映画会です。
「よにでし読書会/ミネルヴァ映画会/よにでしセミナーONLINE」
この3つを私は「オンライン寺子屋構想」と、
自分の中で呼んでおります。

敢えて大言壮語すると、
かつての松下村塾のような、
「学習する共同体」の創発を、
ずっと私は夢見ているのです。
その実践のひとつとして、
オンラインで形成される創発的な学びの地平を拓くため、
この構想をかたちにし始めました。

1月によにでし読書会の第一回をやってみて得た教訓がたくさんあるのですが、
それらも反映させながら、
毎月より良いものにしていければと思っております。

ところで、1月に得た教訓のひとつに、
やはりオンラインでは、
創発的な学びの共同体が響き合うのに、
最大人数は案外少ないな、ということ。

1月の参加者は4人だったのですが、
4人で最適、増えるとしてもあと1人だな、
ということでした。
参加者は私を含め3人~6人ぐらいが、
多分ちょうど良い。
特に、PCでなくてスマホやタブレット参加の方は、
ガジェット的にも7人を超えると、
他の方々が把握しにくいというのがあるので。
来るべきメタバース時代には、
状況が変わるかも知れませんが、
レギュレーションを少し変更し、
チケット最大販売枚数を5枚とさせていただきました。
値段は据え置きです。
参加を迷われている方は、
なくなる前に早めにご購入ください。

それでは映画解説していきます。
2か月分の観た映画を全部紹介していきますので、
参加される方はそのうち1本でも観てたら良いし、
観てなくてもとにかく映画を語りましょ!という感じ。
読書会とは少しおもむきが変わります。

だいたい月に5~10本観るので、
詳説しすぎないように、
久しぶりに「140文字ブリーフィング」やります。


▼▼▼ミネルヴァ映画会 2月23日開催 解説第1回▼▼▼



●リコリス・ピザ


鑑賞した日:2023年12月1日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:ポール・トーマス・アンダーソン
主演:アラナ・ハイム
公開年・国:2022年(アメリカ)
リンク:

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09PQGK9NQ/ref=atv_dp_share_cu_r


▼140文字ブリーフィング:

ライムスター宇多丸さんの評価が高かったので観ました。
70年代のアメリカの空気を真空パックして、
現代の技術でそれを再生した、
みたいな映画です。

当時のアメリカを知る人には「たまらない映画」なのではないでしょうか。
昔『バブルへGO』という映画がありましたし(未見)、
今やってる宮藤官九郎脚本のドラマ『不適切にもほどがある!』(未見)は、
それぞれバブル期や昭和期の日本の空気を切り取って、
平成や令和の時代に提示するという、
「なつかし映画・なつかしドラマ」なのですが、
『リコリス・ピザ』もまた、
アメリカでヒットしたのはそういう要素があったからでしょう。
「あぁ、この髪型流行ったなー!」とか、
「このズボンの形久しぶりに見たわー」とかで萌えるという。

……っていうか、例に挙げたやつを二つとも未見というね笑。

なので、物心ついてからアメリカに生活したことのない私は、
この映画を十全に味わえたかどうか自信がありません。

でも、「まだ何者でもない誰か」が、
何者かになろうとするビルドゥングスロマン作品としてよくできていて、
さらにはおそらく現代のフェミニズム的視点であったり、
主人公の女性がアメリカ社会のマイノリティである、
ユダヤ人だったりするのも、
本当は背景が理解できるともっと面白いんだろうな、と思いました。
あと、映像が綺麗です。
(548文字)


●Winny


鑑賞した日:2023年12月1日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(500円)

監督:松本優作
主演:東出昌大、吉岡秀隆
公開年・国:2023年(日本)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CHB1LV5V/ref=atv_dp_share_cu_r


▼140文字ブリーフィング:


この映画は、神保哲生さん主催の、
ビデオニュースの有料放送で知りました。
めっちゃくちゃ面白かったです。

かつて「Winny」という、
簡単にファイルを共有できる革新的なソフトがありました。
アメリカではNapsterというのがあった。
90年代後半から00年代初頭にPC使ってた人なら、
懐かしく思い出すのではないでしょうか。

私も大学の研究室の先輩に教えてもらって、
音楽をダウンロード(後に違法になる)したりしてました。
日本でもアメリカでも開発者は訴訟されますが、
実はその顛末はまったく違うのです。
ビデオニュースには、Winny開発者の金子さんを弁護した、
敏腕弁護士の壇俊光ご本人が出演していて、
日本でWinny裁判がたどった経緯こそ、
その後の日米のイノベーションの差を生んだ根底にある、
「考え方の差」だと語っていました。

東出昌大さん演ずるWinnyの開発者で天才エンジニア、
金子勇は2004年に逮捕されます。
この裁判の要諦は、
「ファイル共有ソフトにより著作権侵害が起きるとき、
 そのソフトを開発した人が罰せられるのか、
 それともアップロードした人が罰せられるのか」
という法理学的な問題です。

「漫画村」では、
そのサイト管理者が実刑判決を受けました。
そりゃそうだろ、と思います。

それとWinnyやNapsterを混同している人が多いのですが、
実は漫画村とWinny/Napsterはまったく違います。
アメリカではNapster開発者は民事訴訟され廃業しますが、
刑事告訴はされていません。
Napster創業者は後にアイデアをIT起業に売り大金を儲け、
このアイデアが後にジョブズの目に留まりiTunesを生みます。

日本のWinnyは対照的に開発者の金子勇氏が逮捕起訴され、
地裁では有罪判決、高裁で無罪判決が出ますが、
検察側が上告し、最高裁でやっと無罪が確定したのが2011年のことです。
そのときには時既に遅く、
金子勇さんは最高裁の無罪判決から1年後に病死しました。
長引く裁判や世間からの非難の心労も祟ったのでしょう。

本作を見て驚くのが、
日本では裁判をする側(つまり国)が、
「インターネットとは何か」「ピア・トゥー・ピアとは何か」
といった基礎知識をまったく理解していななかったという事実です。
「いったい何が問題なのか」を理解していない原告による裁判なのです。
背景にインターネット時代の著作権やマネタイズの方法、
産業構造の地殻変動などの大局観や国家ビジョンは皆無で、
さしあたりの既得権を守ることと官僚制の自己防衛本能が、
「金子勇切り」に動いたことがよく分かる。

それの何が問題なのか、
と思われるでしょうか。

ところで、
YouTubeってファイル共有ソフトです。
原理的にはWinnyとYouTubeは同じソフトウェアなのです。
仮にYouTubeに私が『となりのトトロ』をまる1本アップロードした場合、
スタジオジブリは著作権を侵害されたことになります。
日本の司法が金子勇にしたことというのは、
このケースで言うと、
「YouTubeを開発したGoogleを罰しましょう」
という話なのです。

これは明らかにおかしい。
だから日本でも最高裁では覆りますが、
問題は、こういう環境で、
「便利なソフトウェアを開発しよう」というエンジニアが、
のびのびとソフト開発できるか、という問題です。
金子さんのような人が罰せられることで、
一罰百戒が生じる。

それによって日本のエンジニアは萎縮する。
本当に優秀な天才プログラマーは、
「日本では金子みたいなことになるから、
 アメリカで開発しよう」となる。
実際、優秀なプログラマーを、
アメリカのIT起業は法外な収入で雇いますから。
異能流出(ブレイン・ドレイン)が起きる。
これが日米のデジタル産業デバイドを生んだのだ、
というのがビデオニュースで話されていました。
Winny事件で日本のイノベーションはアメリカに10年遅れた、
と神保さんや壇弁護士は語っていました。
Winnyの時点では肩を並べていたが、
あの裁判によって遅れを取った結果、
ファイル共有ソフトのプラットフォームを、
全部アメリカに持って行かれる流れができた、と言います。

日本は「産業の活力」と「官僚制の安定」のジレンマで、
常に後者を優先させる悪い癖があります。
この映画のエンドロールで、
ご本人の映像が流れますが、
私はなぜだか涙が止まらなかった。
それが何の涙なのか自分でも分からないのだけど、
きっと「悔し涙」も含まれているのだろうと思います。
彼のような天才が英雄になるのか犯罪者として扱われるのか、
それを決めるのは「社会」なのです。
子どもが夢を持てるような社会を作りたいですね。
皆さん、選挙に行きましょう。
(1,609文字)


●聖なる犯罪者


鑑賞した日:2023年12月9日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(セール100円)

監督:ヤン・コマサ
主演:バルトシュ・ビィエレニア
公開年・国:ポーランド(2019)
リンク:

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B09754KW1Q/ref=atv_dp_share_cu_r


▼140文字ブリーフィング:

ポーランドの映画で、
こちらもビデオニュースで宮台さんが解説していて興味を持ちました。
少年院でキリスト教に出会った主人公のダニエルは、
仮釈放されて田舎の製材所に就職することになります。
その道中の村でたまたま教会を立ち寄ったとき、
教会にいた少女に「あなたが噂の新任の司祭ね」と勘違いされます。

ダニエルが司祭として振る舞うと、
村の他の人々もそれを信じます。
タトゥーとピアスの痩せぎすな青年ダニエルは、
「あなた、司祭っぽくない司祭ね」と言われながらも、
若者を中心に、むしろ親しみやすい司祭として信頼を勝ち得ていきます。
告解室でスマホを片手に、
「告解 やり方 司祭」みたいな検索ワードで調べながら、
手探りで司祭の仕事をこなしていくのです。
説教が最大の難関なのですが、
それも、彼が神について思うことを心から語った結果、
「型破りで、小難しくない説教」と解釈され、
むしろ宗教的にすごいカリスマなのだと勘違いされていく。

神学の古い命題に、
聖礼典が、聖職者の人格や属性によってその聖性を担保されるのか、
それとも儀式そのものに聖性があるので、
聖職者の人格は問題にされないのか、
という問題があります。

先週の日曜日に司祭が聖餐式を執り行った。
その牧師は長年、少年に性加害を加えていたことが、
月曜日に分かった。
司祭は教団から叙階を取り消され、逮捕された。

この場合、先週の日曜日に私が受けた「聖体拝受」は、
無効化されるのか否か、という問題です。
あらゆる神学的命題と同じで、
この問題も「決着を見る」ということはないだろうけど、
本作を観ることはそのことについて考えるきっかけになります。

あと、歴史学者の網野善彦が言ってるんだけど、
「聖」と「法外」というのが、
実は近いところにある、
というのもこの映画は教えてくれます。
法外の存在、つまり犯罪者的なるものこそ、
実は「聖職者的なるもの」と、
最も近いところにあるのではないか、
というのは民俗学的・文化人類学的なひとつの有力な仮説で、
ダニエルはそれを体現した存在と言えるかも知れません。
(839文字)


●激怒


鑑賞した日:2023年12月27日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(100円)

監督:高橋ヨシキ
主演:川瀬陽太, 小林竜樹, 奥野瑛太
公開年・国:2022年(日本)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8SBXF5B/ref=atv_dp_share_cu_r


▼140文字ブリーフィング:

映画ライターの高橋ヨシキさんのコラムや動画が好きです。
そのヨシキさんが映画を撮ってるらしい、
というのは2020年のダースレイダーさんの対談動画で知っていたのですが、
サブスクで観られるようになって、
しかもタイムセールで100円!ということで観ました。

ジャンルで言うとディストピアSFということになるのでしょうか。
近未来の日本のどこかの都市で、
主人公の深間は警察をしている。
その世界では警察以上に「自警団」が町を牛耳っている。
自警団はまさに「マスク警察」のように、
市民の小さな瑕疵も逃さず、
超法規的に町を「漂白」していく。
深間は昔ながらの警察でヤクザとも付き合いながら、
オールドスクールの治安維持を試みる。
組織としての警察は、
やがてパワーバランス的に、
自警団の下部組織みたいになっていく。

今の世相っぽいでしょ。

最後は自警団VS深間みたいになっていく。
筋書きを書いているだけで面白そうなのですが、
じっさいに映像を見ると、
ちょっと作りがチープすぎて私は入り込めなかった笑。
予算が圧倒的に少なかったからこうなるのかなぁ。
なんでだろうなぁ。
いろいろ考えていました。
北野武『首』のときも思ったのですが、
身体の一部が飛んで行くようなグロテスク描写に、
私は非常に厳しいです。
私自身が動物を解剖する現場で働いていたので、
「いや、血ってそういうふうに出ないよ」とか、
「人間の頭って、そんなに軽くないよ」とか思っちゃうからです。
映画監督はスプラッター映像を撮るとき、
是非、医者か獣医師を観修に入れてほしいです。
人間の腕とか頭って、
片手で投げられるようなもんじゃないんだって、絶対。

まぁ、私のような見方をする人は珍しいでしょうけど笑。
(704文字)


●スパイダーバース アクロスザスパイダーバース


鑑賞した日:2024年1月1日
鑑賞した方法:Amazonビデオでレンタル(100円)

監督: ホアキン・ドス・サントス、 ジャスティン・K・トンプソン、 ケンプ・パワーズ
主演:シャメイク・ムーア他
公開年・国:2023年(アメリカ)
リンク:
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0B8KLTFVQ/ref=atv_dp_share_cu_r


▼140文字ブリーフィング:

これはヤバかったですね。良い意味で。
私はスパイダーバース第1作は観ていて、
もう、アニメーションの技術がここまで来ていることに、
口をあんぐり開けていました。
オタキングの岡田斗司夫さんが、
スパイダーバースによって、
日本のアニメーションは米国に10年先を行かれた、
と語っていました。

私はアニメーション詳しくないですが、
方向性はちょっと違うけど、
『THE FIRST SLAM DUNK』で、
追いついたというか追い越したというか、
「日本ここにあり!」ってのを見せたと思ってる。
岡田斗司夫さんはどう思ってるんだろう。

話を戻します。
スパイダーバースって、
アニメーション的にちょっとあり得ないことをしてて、
セル画でもないしCGでもない、
その中間をやりながら、
しかもそのアニメーション技法を、
「マルチバース」とシンクロさせるということをしている。

『トイ・ストーリー』の世界に、
ドラえもんやのび太が現れたらどうなるか。
存在する宇宙が違うので、
映像としては非現実的なものになるはずでしょ。
それを見事に映像化したのがスパイダーバースです。

そして、その続編ですわ。

これが、映像表現がさらにとんでもないところまで行ってるだけでなく、
今度はストーリーがとてつもなく素晴らしいです。
こちらも神学論争で、
「予定説」と「自由意志」の戦いになってきます。
続編へ続く構成になっています。
次回作が今から楽しみです。
(584文字)


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